「他人には理解してもらえません。でも、幸せです」…資産約2,000万円でFIREした43歳男性、家賃2万8,000円の“超節約生活”で手に入れた「穏やかな時間」
働き方や生き方が多様化する今、「収入は最小限でいい。お金を使わず、穏やかに暮らしたい」--そんな選択をする人もいます。会社員生活を40歳で終え、「超節約FIRE生活」を始めた男性が手に入れた穏やかな時間。「周囲には理解されないけれど、幸せ」と笑顔で話す、その生活とは?
2,000万円で「FIRE決断」の裏側
地方在住の中野さん(43歳・仮名)は40歳のとき、17年間勤めた会社を退職。新卒以来、同じ会社で働き続け、年収は600万円台前半。退職時の金融資産は約2,000万円でした。
「会社を辞めたい。でも、普通は2,000万円じゃリタイアなんて考えられません。それで選んだのが『超節約生活』でした。人より使わなければ、やっていけるんじゃないかと」
実際、中野さんは家賃の安い地域に引っ越しをして、現在も家賃2万8,000円の築古アパートで暮らしています。生活費は月8万~9万円ほど。食費は2万円~2万5,000円程度で、スーパーでは値引き品を中心に購入。外食はほとんどせず、移動には自転車を使っています。
もちろん月8万~9万円が支出のすべてではありません。当然ながら、国民年金や国民健康保険料なども払わなければなりません。特に負担が大きかったのが退職後の1年目でした。会社員時代の所得をもとに計算される住民税や国民健康保険料が、無収入になったあとも重くのしかかったのです。
「仕事を辞めれば、すぐにお金がかからなくなると思っていたんです。でも、最初の1年は違いました。健康保険料や住民税は『こんなに払うのか』って驚きました。でも、その翌年からはぐっと安くなりました」
普段は図書館で本を借り、近所を散歩し、料理をする。お金のかからないことをして、自宅で過ごす時間が大半です。
「こんな生活をして何が楽しいんだと思われるかもしれません。でも、僕にとっては、これが求めていた幸せでした」
「これをあと20年続けるのか」…40歳で会社を辞めたワケ
中野さんが会社を辞めたきっかけは、年齢とともに仕事の責任が増え、仕事以外の時間まで会社に縛られているように感じるようになったことでした。
満員電車に乗り、上司や部下の顔色をうかがう。帰宅後もメールを確認し、休日には翌週の仕事を考える日々。
「『これをあと20年続けるのか』って、どんどん苦しくなりました」
もともと浪費をしない性格で、40歳時点で2,000万円の金融資産を築いていたこともあり、「生活そのものを小さくして、いったんやめてみよう」という決断をしたのです。
退職後は、生活費や税金、社会保険料の支払いのため、少しずつ金融資産を取り崩してきました。退職時に持っていた2,000万円のうち約1,800万円は、インデックスファンドを中心に運用。支出を補うため、時々単発バイトも入れていたといいます。
しかし、株式市場の好調もあり、退職から3年が経った頃、金融資産は約3,200万円まで増えていたといいます。
「生活費を使ってきたのに、結果的には増えていたんですよ。ラッキーですよね。でも、たまたま相場がよかっただけだと思っています。これから同じように増えるとは考えていません」
たくさん貯めるだけがFIREへの道ではない
早期リタイアを希望する人は、若い世代を中心に増えています。
パーソル総合研究所の「働く10,000人の就業・成長定点調査(2024年)」では、20代男性の29.1%が「50歳以下」をリタイア希望年齢として回答。2017年の13.7%から2倍以上に増えています。30代男性でも「55歳以下」と答えた人は28.1%にのぼりました。
中野さんのように、生活費を抑えながら資産運用を続け、必要に応じて少額の労働収入を得るスタイルは、いわゆる「サイドFIRE」に近い考え方です。ただし、2,000万円程度の資産で40歳から完全に仕事を辞め、その後の生活をすべて資産だけで賄うのは、決して簡単ではありません。
生活費に加え、国民年金や国民健康保険料、住民税などの負担があります。また、40代から会社員として働かなくなれば、厚生年金の加入期間が短くなり、将来受け取る公的年金にも影響します。
病気やケガ、家電の買い替え、引っ越し、介護など、まとまった支出が必要になる可能性もあります。
何より注意したいのが、運用環境です。
中野さんの資産が増えた背景には、ここ数年の株式市場の好調さがあります。相場が下落する局面では、資産を取り崩しながら生活するFIREは大きな影響を受けます。
とはいえ、「FIREをするなら1億円貯めなければ」と高額な目標を立てがちななかで、「極端な節約」という選択をしたことで、中野さんは必要な生活費そのものを大きく抑えることができました。
誰にでも同じ方法が当てはまるわけではありませんが、たくさん稼いで、たくさん貯めるだけがFIREへの道ではなく、少ないお金で暮らせる生活をつくるという考え方もあるわけです。
辞めてからの生活を「幸せだ」と語る中野さんですが、3年ほど経った頃から少し気持ちに変化が生まれたといいます。
「最近、またどこかで働こうかなと思うようになったんです。前よりも年収は低くていいから、プレッシャーの少ない場所で。二度と働かなくてもいいと思っていたのに、自分でも意外ですが……ちゃんと休んで、回復してきたのかもしれません」
中野さんが手に入れたのは、会社員に戻らなくてもいいという安心だけではありません。「どれだけ働くか」「どれだけお金を使うか」を、自分で決められる自由でした。
出典:株式会社 パーソル総合研究所「働く10,000人の就業・成長定点調査」
