“公立王国”愛知に異変… 私立高校の授業料が無償化、公立高校の欠員は過去最多に
公立高校の王国として知られる愛知に、異変が起きています。今年度から私立高校の授業料無償化がスタート。進路の幅が広がる一方で、公立高校の欠員が過去最多となっています。
私立高校のブースがずらり。
8月19日、バンテリンドームナゴヤで開かれていたのは「愛知の私立学校展」です。
各私立高校が、中学生や保護者らに自校の魅力をPRします。
中学生に、私立高校のイメージを聞いてみると――。
「とても施設がきれいで、先生のサポートがとても手厚く何かに特化している」(名古屋市 中学3年生)
「英語など海外のことを学びたいと思い、私立高校が気になった」(愛知・碧南市 中学3年生)
公立王国・愛知で私立学校展がにぎわうわけは――。
「私立高校の授業料無償化」です。
国は、今年度から私立高校の授業料について、所得制限なしで、年間最大45万7200円の支援を行っています。
「子どもたちにとって選べる高校が、私立高校の授業料無償化で選択肢が増えたことがいいと思う。昔は私立高校は公立の高校を落ちた子が行くイメージだったが、今は私立のレベルもすごく上がりイメージもいい」(保護者)
このイベントを開いた愛知県私学協会によりますと、愛知県内の私立高校には今年、合わせて2万1604人が入学し、去年より1209人増えたといいます。
「私学への志願度が非常に高まった。私学(協会)のいろんな立場になって、結構な年数になるが、劇的な変化だなと思っている」(愛知県私学協会 榊直樹 会長)
留学しても3年で卒業できるプログラム、魅力
特色ある学校を目指した私立高校にとって、授業料無償化は、追い風になっています。
愛知県稲沢市の愛知啓成高校。
甲子園への出場経験もある、高校野球の私立強豪校です。
一方、学業面でも特色が――。
放課後に英語の教師と話す、こちらの3年生は、1年生の秋から約1年間、カナダに留学しました。
留学の場合、一般的には高校卒業までに4年かかるケースが多いといいますが――。
「留学に行った1年間や半年が学校の単位になるので、単位を落とさずにそのまま3年間で卒業できる」(愛知啓成高校3年 北野杏さん)
愛知啓成高校では、海外の学校で取得した単位を学校の卒業単位と認める制度を設けています。
「3年間で卒業できるプログラムが強みだと思ったので、私立高校に入った」(北野さん)
授業料無償化で生徒側の負担減少に
別の教室では、高性能のコンピューターがずらりと並ぶほか、3Dプリンターなど珍しい設備も。
プログラミング学習にも、力を注いでいます。
「自分の家にパソコンがあるが、それよりもすぐ動く。とても使いやすい」(愛知啓成高校 2年生)
こちらの高校では、生徒側に対して、昨年度まで月額約5万2100円を徴収してきました。
内訳は、授業料の3万7100円と、施設の維持費などで約1万5千円です。
4月からは国が授業料を無償化したため、生徒側の負担は、施設の維持費など約1万5千円だけに。
これに加えて愛知県は独自に、私立高校の入学金についても、今年度に入学する生徒に対し、20万円を上限に支援しています。
所得制限はなく、生徒側にはこの高校の入学金の負担がなくなりました。
愛知啓成高校の今年度の入学者は、昨年度より12人多く、しかも7月の学校説明会も例年の3倍の中学生が訪れました。
「生徒にとっても(私立高校授業料)無償化で、自分の行きたい学校を選べる。そういった選択肢がさらに広がったのでは」(愛知啓成高校 足立三千夫 校長)
中学生の進路のニーズは多様化
私立高校の授業料無償化の影響は、公立高校にも及んでいるといいます。
愛知県教育委員会を取材すると――。
「(公立高校の)欠員が昨年は2300人ほどだったが、今年は3200人だった。公立を志願する生徒が減ったことは間違いないと思う」(愛知県教育委員会 小野智之さん)
今年度、公立高校への志願が減った理由について、こう分析します。
「ここ数年、通信制高校を希望する生徒が増えた。中学生の進路のニーズも多様化している。(私立高校の)授業料の無償化もあり、公立高校への進学者の割合も減少傾向にある」(小野さん)
公立高校の意義とは?
公立高校への“逆風”。
生徒側にとっては、私立への選択肢が広がるなどメリットの一方で、このまま公立高校の生徒が減り続けると、デメリットもあるといいます。
「生徒数が減っていくと、体育祭や学校行事、(選択)授業の展開などで、若干の制約が出てくることがあり得る」(小野さん)
中高一貫の公立学校を新設し、6年間での学びの場を提供するなど、改革を行ってきた愛知県。
公立高校の意義を、こう強調します。
「不登校を経験した方もいる、外国にルーツがある方もいる。(公立への)いろんなニーズがある。ひとりひとりのニーズに応えられる教育を展開していく視点を大事に、計画を今年度つくっていく」(小野さん)
