〈民泊もう限界〉「対処できない」ゴミ、騒音…民泊数最多の新宿区が規制強化へ…新規制が始まる豊島区でも「むしろ増えている」と住民困惑
2018年の住宅宿泊事業法(⺠泊新法)施行で全国に広がった民泊について、対応を求める声に押されるように国が拡大策を転換し規制強化を認めた。これに合わせ民泊数が最多の東京都新宿区が住宅地での営業を原則禁止する方針を表明。多くの自治体で規制強化の動きが出ているが、民泊利用者のマナーの悪さに苦しんできた近隣住民にとって、光明となるだろうか。
〈画像〉「外国語で注意書きをしても改善されない」豊島区民泊施設付近に捨てられたゴミ、タバコの写真
「生ゴミを袋に入れずにゴミ収集ボックスの中に入れることも」
新宿区の吉住健一区長は8日、住居系用途地域で民泊の新設を原則禁止し、既存施設についても条例施行から2年間の経過措置後に規制対象とする方針を表明した。家主がいても春・夏・冬休み期間中の年120日に営業可能日数を限定。また、商業地域も現行180日の営業上限日数を同様に120日に減らすという。
さらに宿泊客の到着時には「対面でのチェックイン」を義務づける。民泊は常駐の管理人を置かずに客を宿泊させることができたことが大きな特徴のひとつだったが、そのため宿泊客の問題行動を制止する者がおらず、近隣住民が迷惑を被ってきた。
対面チェックインを義務化することで、この“無人宿泊所”ともいえる状態を生まれにくくする狙いがありそうだ。
区は条例を改正し2027年6月の施行を目指すという。目を引くのは、すでに営業している施設にも2年の猶予後の2029年6月からこの措置を適用することだ。
観光庁によれば今年7月15日の時点で住宅宿泊事業法(⺠泊新法)に基づき営業可能な届出住宅数は全国で4万2070件。うち新宿区はこの約9.0%にあたる3775件の届け出があり、市区町村別で最も多い。8月末の新宿区の集計ではさらに増えて3928件あり、うち約2100件が今回営業を禁止されるエリア内にある。
こうした民泊が住宅街にできると何が起きるか。そばに住む新宿区民が証言した。
「朝方はよくゴミが散らかっていますよ。カラスとかが荒らしているんだと思いますが、捨てる人がゴミ袋をちゃんと結んでいなかったり、生ゴミを袋に入れずにゴミ収集ボックスの中に入れることも珍しくありません」(80代女性)
「夜になると家の中にいても聞こえるほど大きな外国人の声がします。最近は騒ぐと通報されると思っているのか、静かな人もいますけど」(70代女性)
「家の隣に民泊ができた3年前くらいは中国人がすごく多く、怒鳴り声があったり夜も寝られないぐらい騒がしいこともありました。昨年秋くらいから利用する人の層が変わったのか落ち着いてきて、今は『賑やかだな』ぐらいの印象です」(30代男性)
トラブルの規模は「区役所、保健所の人員で対処できる数字ではない」
新宿区には昨年度、「ごみ集積所に宿泊者が勝手にごみを捨てている」「夜中に宿泊者が騒いでいて迷惑だ」「平日の営業が禁止されているはずなのに曜日に関係なく宿泊者が出入りしている」といった苦情や相談が前年度より542件多い1334件も寄せられた。
吉住区長は会見で「(民泊経営者が)自ら所有することもなく現地滞在することもなく、ただ利益のためそうしたことが散見されるということで、業界が招いた事態だ」と業界を厳しく批判。違法営業の調査やトラブルの規模は「区役所、保健所の人員で対処できる数字ではない」と窮状を強調した。
実は、新宿区がこの方針を決める前の7月15日、2018年6月施行の⺠泊新法による民泊拡大策を続けてきた政府が方針を大きく変える通達を全国の自治体に出していた。そこでは、住民の居住環境が著しく損なわれている場合には既存の民泊についても、
〈一定の猶予期間を設けた上で、住宅宿泊事業の実施を禁止したり営業可能日を土日祝前日等に限定したりするなどの制限を設けることも考えられる。〉
と明言。営業を禁止してもよいとし、従来の見解を事実上転換した。
新宿区衛生課の担当者は、この通達が今回の方針を決める後押しになったと指摘しながら、通達自体が自治体側からの求めで実現したものだと話す。
「民泊に関しては、東京23の特別区の区長のうち有志の21区長が5月末から6月にかけて、観光庁や国土交通省、厚生労働省、自民党本部に法改正を要望しています。地域の実情に合わせた柔軟な規制を地元自治体ができるような法体系に改めてほしいということが一番ですね。今回、そこまでいかなくても(通達の形で)方針が示されたので(新宿区の今回の方針の)根拠になりました」(担当者)
区長らは他に、届け出で営業できる民泊を許可制にすることや、施設の管理業務の再委託の禁止、悪質な事業者の排除の徹底などを求めている。
豊島区…規制強化を言うわりには民泊は減らず「むしろ増えています」
一方、豊島区は政府通達に先立ち昨年12月に条例を改正。住宅地や学校周辺などでは今年12月16日から新規の営業を禁止する。既存施設も含め営業可能期間を現行の180日から春・夏・冬休みの計120日に制限する。
他にも一部メディアによれば、墨田区や渋谷区、大田区は民泊が営業できる日の規制を今年から強化し、台東区と中野区でも来年から強化する方針を打ち出している。ただ、逆に世田谷区は現在最大で年間120日までとしている営業の日数を条件付きで180日まで増やす規制緩和を検討している。
規制強化を約3か月後に控えた豊島区の住民は効果に懐疑的だ。池袋の住宅街に住む40代女性は「民泊利用の外国人は全然減ってないです。キャリーケースを引く『ゴロゴロゴロゴロ』っていう音が今もうるさくて、家の中にいても全然聞こえます。夜中の1時とかでもです。飲んでいるのかテンションが上がって団体で奇声をあげている人たちもいますね。タバコの吸い殻とかもすごいです。規制強化を言うわりには民泊は減らず、むしろ増えています」と困り顔だ。
50代の男性は「ごみの捨て方は、いろんな言語で注意書きをしても改善しないです。曜日に関係なく粗大ゴミを含めてボンボン出していったりしています。以前、家の前に干し椎茸が詰まったスーツケースが捨てられていました。『何が起こってんの?』って感じです。すごい臭いでしたよ。規制が発表されてからも影響は特段感じないです。施行されていないし、実際に変わるまでには時間がかかると思います」と話した。
ようやく“営業禁止”の大ナタが振るわれる気配が見えてきても、すでに住宅街に多く入り込んでいる民泊。住民との軋轢の解消にはまだまだ時間がかかりそうだ。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
