賃貸住宅で暮らす高齢者も少なくない(Luce / PIXTA)※写真はイメージ

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〈家を買う経済力が無いまま50過ぎて、この先も賃貸住まい。周りには「気楽だから~」と言ってきたが、引越しするにももう年齢が厳しくなってきた。仕事同様に住まいも年齢がネックに。賃貸は何歳まで住めるのだろう。帰れる田舎もないし〉

先月、Xに投稿された50代派遣社員のこのポストは、多くの人の関心を集めた。高齢化が進む日本社会において、住まいの確保は切実な問題だ。そうした社会的背景のもと、2025年10月1日には、高齢者などの入居を支える「改正住宅セーフティネット法」が施行された。

高齢者賃貸住宅を探すとき、何が壁になり、法律はどこまで守ってくれるのか--。専門家の見解とともに探る。

“100件お断り”のケースも

実際、高齢者賃貸住宅を探す際、その道のりは平坦ではない。高齢者専門の不動産会社「R65不動産」が2025年に実施した「高齢者の住宅難民問題に関する実態調査」によると、65歳を超えて賃貸住宅を探した人のうち、直近1年以内で「苦労した」と回答した割合は61.2%に上った。

さらに、年齢を理由に入居を断られた経験がある人は29.8%と、おおむね3人に1人に達している。この数字は2023年の調査(26.8%)から3.0ポイント増加しており、問題が依然として根深いことを示している。

R65不動産の代表・山本遼さんによると、入居審査が厳しくなる年齢に明確な基準はない。しかし、60代で断られて相談に来る人が多く、中には40代で年齢を理由に断られたケースもあるという。

大家側が高齢の入居者を敬遠する主な理由は、「孤独死」「認知症」「死後の残置物処理」への懸念だ。資産状況が十分であっても、これらのリスクから入居を断られることがある。

山本さんによれば、実際に、約1.6億円の資産を持つ70代の人が入居を断られた事例もあった。なぜ断られたかの明確な理由は開示されないことが多いが、不動産会社自身が高齢者を入居させた経験がなく、漠然とした不安から紹介に踏み切れないという背景もあるようだ。

また、賃貸住宅の老朽化による立ち退きを機に家探しを始めたものの、100件近く問い合わせても断られ続けた70代の年金生活者もいたという。専門家が仲介しても内見にすら至らないケースは珍しくない。

高齢者賃貸住宅探し、徐々に改善へ?

では、なぜ今、こうした問題が顕在化しているのか。総務省「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年時点で借家の約62%が2005年以前に建てられた物件(おおむね築20年以上)となっており、老朽化した賃貸住宅の建て替えが各地で進みやすい状況が生まれている。

山本さんも、建て替えによる引越しの多さに触れ、長年住み続けてきた物件を立ち退かざるを得ず、高齢になってから部屋探しを余儀なくされる人が増えていると指摘する。

一方で、高齢者の入居を取り巻く環境には変化の兆しもある。2025年10月施行の改正住宅セーフティネット法で創設された「居住サポート住宅」制度は、見守りや安否確認、福祉サービスへの接続を行う賃貸住宅を、市区町村長などが認定する仕組みだ。

ただ、認定物件の数は徐々に増えているものの、「政府の想定にはまだ及んでいないのではないか」と山本さんは見る。居住支援法人との連携のほか、場合によっては住宅の改修が必要になることもあるため、大家にとって導入のハードルは依然として高い。

こうした中、民間の見守りサービスなどを活用し、高齢者を受け入れる大家も少しずつ増えており、山本さんも物件の選択肢は広がっている実感があると話す。今後、官民双方の取り組みによって状況が改善していくことが期待される。

「年齢を理由に入居拒否」法的な問題は?

では、貸主が年齢を理由に入居を拒否することに、法的な問題はないのだろうか。不動産問題に詳しい荒川香遥弁護士(弁護士法人ダーウィン法律事務所代表)は、現在の法律には年齢を理由とする入居拒否そのものを禁じた規定はないと解説する。民法521条1項で契約の自由が認められており、原則として誰に貸すかは貸主が決められるからだ。

ただし、これが無制限に認められるわけではない。荒川弁護士は「断り方が著しく侮辱的であるなど、社会的に許容される限度を超えた場合は、民法709条の不法行為として損害賠償の対象となり得る」と指摘する。そのため、実務上は「入居審査で総合的に考慮した結果」として断ることが定型的となっている。

「更新拒絶」には正当事由が必要

一方、入居後の契約更新については、年齢だけを理由に拒絶することはできない。

借地借家法28条は、貸主からの更新拒絶には「正当事由」が必要と定めている。この正当事由は、貸主と借主双方の建物使用の必要性、これまでの経緯、建物の利用状況や現況、立退料の申し出などを総合的に考慮して判断される。

荒川弁護士によると、借主の年齢は考慮要素として挙げられておらず、むしろ高齢で転居先を見つけにくいという事情は、借主が住み続ける必要性を高める方向に働くという。

そして、実務の観点からも「高齢を理由に更新が断られるケースはあまり聞かれない」と述べる。正当事由が争点となるのは、老朽化したアパートの建て替えを望む大家と、退去したくない入居者との間の紛争が典型的だ。

家賃の滞納や近隣トラブルを理由とする場合もあるが、これは更新拒絶ではなく、信頼関係の破壊による契約解除の問題であり、法的な筋道が異なるとのことだ。

立ち退きを求められたときの対処法

もし更新拒絶や立ち退きを求められた場合、入居者側はどう対応すべきか。荒川弁護士は「もっとも重要なのは、その場で承諾しないことです」と指摘する。

第一に、退去に応じる返事をしないこと。口頭のやり取りでも合意と受け取られ、後の交渉で不利になる可能性がある。

第二に、賃貸借契約書や更新拒絶の通知書、貸主や管理会社とのやり取りを、日付がわかる形ですべて保存すること。電話での会話も、日時と内容をメモに残しておけば証拠となる。

相談先としては、費用面に不安があれば法テラス(日本司法支援センター)や各地の弁護士会、市区町村が実施する法律相談がある。住まい探しまで含めた支援が必要な場合は、住宅セーフティネット法に基づく居住支援法人や自治体の居住支援協議会、地域包括支援センターが窓口となる。

立ち退きを求められても、すぐに慌てて行動する必要はない。まずは契約書を持って専門家に相談することから始めるべきである。