三井住友vs三菱UFJ! 最大20%還元の「ポイ活」覇権争いで賢く得する“2枚持ち”の極意

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〈サービス改悪が続くクレジットカード、ポイント還元率の縮小傾向が止まらないスマホ決済……。沈滞ムードが覆う「ポイ活」界隈だが、激しい局地戦が繰り広げられている領域がある。メガバンクのリテール(個人向け)分野だ。

経済圏の覇権争いにいち早く参入した三井住友銀行と、それに追随する形でリテール戦略を再構築中の三菱UFJ銀行が、コンビニやスーパー、飲食店などを巡って、20%という今では破格の還元率で顧客の囲い込みを図っているのだ。

この局地戦、今後の経済圏競争に影響を与えることは必至だが、静観しているだけではもったいない。メガバンクの戦略とともに、この戦いに乗じて“お得”になるコツを専門家に聞いた〉

始まりは三井住友カードの「大リニューアル」

これまでの経緯を簡単に振り返っておこう。

発端は’20年2月、三井住友カードの30年ぶりの大リニューアルだった。券面などのデザインを一新、キャンペーンとして、対象のコンビニとマクドナルドで最大5%還元を実施した。対象店舗は限られていたが、還元率5%は当時猛威を振るっていたスマホのコード決済(=いわゆる「〇〇ペイ」)と比べても抜きん出ていた。

’23年3月からは『Vポイントアッププログラム』がスタート。一定の条件をクリアすると還元率は最大18%になる。さらに、同年7月、対象店舗での利用で5%が7%に引き上げられ、Vポイントアッププログラムとの合わせ技で最大20%還元が実現。

’24年4月に『Tポイント』を統合し、Ⅴポイントの認知度は一気にアップした。その後、7%還元される対象店舗はコンビニやファーストフード、ファミレス、カフェチェーンに広がり、利便性は大きく向上している。

突如「ヤル気」を出した三菱UFJカード

一方、三菱UFJカードは’21年7月にMUFGカードからの名称変更を伴うリニューアルをした。当初は入会キャンペーンなどでヤル気を見せてはいたものの、大した目玉もなくパッとしない状態が続いたが、’22年7月に対象コンビニでの利用で最大5.5%還元というサービスを開始した。

もちろん、当時の三井住友カードの5%還元を意識したもので、0.5%上乗せして優位をアピールした格好だ。しかし、この施策はほとんど注目されなかった。対象がコンビニ2社に限られていたことに加え、この施策を受け、前述したように、三井住友カードはVポイントアッププログラムや、5.5%を超える7%還元を実施したからだ。

以降、三菱UFJカードは、対象店舗を拡大していったものの、なかなか話題に上ることはなかった。

だが、’25年6月、一気に巻き返しに出る。対象店舗での通常利用時の還元率5.5%を7%に引き上げるとともに、ポイントアッププログラムを更新して最大還元率を20%としたのだ。この時点で外見上、三井住友カードとほぼ肩を並べることになった。

ここで話は終わらない。三井住友カードは、’26年2月、ポイントサービスを改定し、『Olive(オリーブ)フレキシブルペイ』でのタッチ決済で8%還元、特にセブン-イレブンでは11%還元とした。この措置によって、三菱UFJカードへの優位を取り戻した格好だ。この一連の応酬、今後も続く可能性は高い。

飲食の三井住友とスーパーのUFJ

参考までに、それぞれのカード陣営の対象店舗を挙げておこう。重複しているのはセブン-イレブンとローソンのみ。三井住友カードはファスト・フードや飲食店、三菱UFJカードはスーパーに強みがあるのが特徴だ。ただ、三井住友カードのほうが全国区のチェーンが多いので、使い勝手の面では分があるといえよう。

最大20%還元に「必要な条件」

三井住友カードの最大還元率は20%だが、20%還元が受けられるのは『Oliveフレキシブルペイ』で決済をしたときのみ。Oliveフレキシブルペイというのは、『Oliveアカウント』を登録すると発行されるカードで、キャッシュカードにクレカやデビットカードなどの機能を持たせたものだ。

このカードを三井住友銀行のアプリで「クレジットモード」に設定、スマホのアップルペイかグーグルペイに登録し、対象店舗でスマホのタッチ決済をすると8%還元される、という仕組みだ。

三井住友カード(NL)で、同じように決済しても7%しか還元されず、Vポイントアッププログラムの条件をクリアしても最大還元率は18.5%止まりだ。なお、いずれのカードでも、スマホを使わず、現物のクレカでタッチ決済した場合は0.5%しか還元されない。

つまり、三井住友カードの中でOliveフレキシブルペイが優遇されているのだ。このあたりの情報について、アップデートされていない解説動画やサイトがかなり残っているので、くれぐれも注意してほしい。

謎多き『Olive』の正体

’23年3月、Vポイントアッププログラムと同時にスタートした『Olive』。三井住友銀行は“個人向け総合金融サービス”と称している。具体的には、同行のアプリの中にミニアプリとして埋め込まれており、そこからSBI証券の口座開設が申し込めたり、マネーフォワードMEの資産管理機能が使えたりと、たしかに機能性に優れる。だが、正直なところ、一般ユーザーは全体像がつかみにくい。

Oliveアカウントも、結局は通帳が発行されないオンライン銀行口座のことだ。Oliveアカウント=多機能なオンライン口座、Oliveアカウントを開設すると発行されるキャッシュカードがOliveフレキシブルペイ、という基本線を押さえておきたい。

なお、三菱UFJ銀行はクレカの還元率を7%に引き上げた’25年6月、Oliveと同じような機能・サービスを提供するミニアプリ『エムット』をリリースしている。Oliveのように別アカウントを作らなくても、すでに口座を保有している既存ユーザーがすぐに使えるので、こちらは分かりやすい設計になっている。

Vポイントに巨大流通が合流

メガバンクのクレカ同士のつばぜり合い、それぞれの陣営の戦略と今後を展望してみたい。

まず、三井住友は“Vポイント経済圏”で本気で覇権を握ろうとしている。’26年6月、PayPayポイントとVポイントの相互交換がスタートした。スマホのコード決済で圧倒的なシェアを持ち、ネット・ショッピングでも使いやすいPayPayポイントとの提携はVポイントの利便性に大きく貢献する。

しかも、翌7月末には、セブン&アイHDとセブン-イレブン・ジャパンがソフトバンク、PayPay、LINEヤフーというソフトバンク・グループに加えて、三井住友カードとの間で資本業務提携を結ぶと発表。

セブン&アイHDの共通会員基盤である『7iD』を『PayPay ID』に統合するという本格的なものだ。7iDには、イトーヨーカドーの顧客も含まれることから、Vポイントの会員への波及効果も大きいだろう。弱点だった流通分野に大きなピースが加わるからだ。

乗車で8%還元! 「交通系」も狙う

また、三井住友陣営には強力な“武器”がある。『stera(ステラ)』だ。steraは三井住友カードがビザ・ワールドワイド・ジャパンなどと協働して構築した次世代決済プラットフォームで、事業者向けにさまざまなサービスを展開する。

その中のひとつ『stera transit(ステラ トランジット)』は、鉄道の駅の改札やバスの乗車口で、クレカのタッチ決済で乗車できる公共交通乗車システムだ。すでに首都圏の私鉄でも普及しており、利用している人も少なくないはず。

交通系のポイントといえば『Suica』の独壇場だったが、その牙城を切り崩す存在はシステムの維持費や更新費のコスパがSuicaよりも高いstera transit以外には考えにくい。交通系の個人データの集積によって、新たなマーケティングやサービスにつなげることもできるので、他陣営にはない大きな強みとなる。

’26年4月から対象事業者の鉄道・バスにスマホのタッチ決済で乗車すると、最大8%還元されるというキャンペーンを展開中で、関東では大手私鉄各社、東京メトロや都営地下鉄が対象となっている。8%にするには、やはりOliveフレキシブルペイを収納したスマホでのタッチ決済が条件だ。

stera transitには定期券に相当するサービスがなく、それが弱点と指摘されていたが、’27年中には定期券に近いものがローンチされる予定で、普及に弾みがつくことになるだろう。

三菱UFJの最大の弱点とは?

一方の三菱UFJ陣営は本腰が入っていない印象がある。経済圏の基盤となるポイントがわかりにくいからだ。三菱UFJカードで還元される『グローバルポイント』はサイトを経由して他のポイントと交換できるが、相互利用できるポイントはない。

例えば「楽天経済圏」や「ドコモ経済圏」では、そこに帰属するポイントがその経済圏の“マネー”として流通する。その流通量が大きくなるほど経済圏の規模も大きくなるといえる。

だからこそ、ポイントの知名度や利便性は重要で、異なるポイント同士の相互利用などが行われている。貯まりやすく、利便性が高ければ、ユーザーにはポイントを積極的に貯めようという意識が働く。

グローバルポイントはリニューアル前の『MUFGカード』から三菱UFJカードにそのまま引き継がれた。かなり長期にわたってユーザーに還元されてきたものの、一向に知名度は上がらず、普及させようとした形跡も見られない。

なぜ『Ponta』を外したのか

『Ponta(ポンタ)ポイント』を還元するという選択もあったはずだ。Ponta事業を運営しているのは、’08年8月に三菱商事が設立したロイヤリティ マーケティング。現在も筆頭株主は三菱商事であり、三菱UFJ銀行も比率は低いながら大株主として名を連ねる。

KDDIは三菱商事に次ぐ大株主であり、Pontaポイントを共通ポイントにして、au(KDDI)と連合して覇権を目指す、というシナリオで、三菱UFJ銀行のサービスの特典としてPontaポイントが付与されている。

なぜ、このシナリオは実現しなかったのか? 三菱UFJのリテール戦略に軌道修正があった、と推測される。’24年11月、auと共同出資して運営していた当時のauカブコム証券のau側の株式をすべて買い取り、三菱UFJ銀行の完全子会社にすると発表した。買収完了後に、社名を三菱UFJ eスマート証券と変えている。

同時に、auじぶん銀行の株式持ち分をすべてKDDIに譲渡するとした。’08年の旧「じぶん銀行」以来のKDDIとの協業関係を、いったん解消した形になる。おそらくKDDIは協業を継続したかったのだろうが、この決定がなされる過程で、三菱UFJはリテール戦略を見直し、独自路線を進むという選択をしたのではないか。

決済覇権を狙う三菱UFJの戦略

三菱UFJの戦略は従来型の経済圏構築を目指すのではなく、リテール分野での金融・決済事業に特化してその覇権を握る、というものだろう。いくつかの手がかりを頼りに考察をしていきたい。

前述した、三菱UFJ銀行のネットバンキングのアプリに埋め込まれているミニアプリ『エムット』は、グループ各社の“入口”となっている。ここから、三菱UFJカードや三菱UFJ eスマート証券、コード決済サービスの『COIN+(コインプラス)』などへの導線が引かれ、カード発行や口座開設の申込み手続き、利用状況などの確認ができる仕組みだ。

その中で注目したいのがCOIN+だ。三菱UFJ銀行とリクルートが共同出資して設立したリクルートMUFGビジネスが運営する決済ブランドで、弱点となっているポイントサービスの巻き返しの軸になるとみられる。

実は’26年度中(’27年3月まで)に、『エムットポイント』というポイントプログラムをローンチする計画がある。エムットポイントは、三菱UFJグループの共通ポイントとなり、現在のグローバルポイントが移行する見通しとなっているが、詳細は未定だ。

重要なのは、エムットポイントはCOIN+にチャージできるようにするとアナウンスされていることだ。これが実現すれば、ポイントを現金にして出金できるし、送金や振込にも使えるようになる。COIN+は、ほぼ現金として扱われるからだ。クレカでエムットポイントが貯まるようになれば、使い途に困ることはないだろう。

他でも、各種ポイントを現金化する方法はあるが、日数がかかるし、何より手続きが複雑で面倒くさい。COIN+は、三菱UFJ銀行が手がけてきたデジタル通貨の事業を移管するために設立した、という経緯があり、COIN+を給与として支払う「デジタル給与」にも対応している。

法律的なクリアが必要な部分もあるだろうが、それほどハードルは高くないのではないか。

ステーブルコイン連携の未来

「ステーブルコイン」との連携も考えられる。日本円や米ドルなどの法定通貨と価値が連動するように設計された暗号資産の一種で、国内でも、’25年10月に初の日本円連動型ステーブルコイン『JPYC』が発行されている。メガバンクでステーブルコインに最も積極的なのが三菱UFJ銀行である。

近年、三菱UFJ銀行は、海外の大手金融機関とデジタルマネーの協業を推進しており、先日も、大手金融機関21社と共同で、ステーブルコインの発行を支援する新会社の設立を発表したばかり(邦銀は三菱UFJのみ)。

現在、’26年度中に円ステーブルコインの共同発行を目指して、国内3メガバンクの協議会が設置されているが、三菱UFJ銀行が出し抜いて先行する可能性もあると睨んでいる。

三菱UFJフィナンシャル・グループでは、’26年度中に新たにデジタルバンクを開業する計画もあり、こちらも詳細は不明だが、このデジタルバンクでステーブルコインを取り扱うことも考えられる。エムットポイントとステーブルコインとの交換が実現すれば、決済領域で存在感を発揮できるだろう。

長々と述べてきたが、我々エンドユーザーはこのメガバンク同士の競争の恩恵を受けることを考えたい。両行ともおいそれとは引けず、長期戦になると想定される。

Oliveフレキシブルペイと三菱UFJカードは、一般カードならいずれも年会費無料。最大還元率20%のうち、10%程度までのポイントの上乗せはそれぞれ、アプリへのログインやクレカの設定などで比較的簡単にクリアできる。

是非、“2枚持ち”して使いこなしてほしい。

取材・文:松岡賢治

マネーライター、ファイナンシャルプランナー。証券会社のマーケットアナリストを経て、1996年に独立。ビジネス誌や経済誌を中心に金融、資産運用の記事を執筆。著書に『ロボアドバイザー投資1年目の教科書』『豊富な図解でよくわかる! キャッシュレス決済で絶対得する本 』。■X(旧Twitter)→@1847mattsuu