【歳川 隆雄】米公共放送が独自映像を入手…ベネズエラ攻撃を成功させたルビオ国務長官がトランプ大統領の後継者となる可能性
9月1日と2日にNHK BSが「世界のドキュメンタリー」で放送した「戦時のホワイトハウスートランプ政権中枢の内幕」は、秀逸なドキュメンタリーだ。ピート・ヘグセス米国防長官が軍幹部の前で行った訓示を撮影し、米軍の現状を伝えるものだった。
前編記事『【NHK BSが放送】「太った将軍は認めない」「軍に多様性は要らない」…米公共放送が捉えた米国防トップの「暴言」』より続く。
ホワイトハウスの地下で……
もう一つ極めつきの映像があった。トランプ政権が1月3日未明に南米ベネズエラの首都カラカス及び近郊の軍事施設・空港を奇襲空爆し、大規模な軍事作戦を展開してニコラス・マドゥロ大統領を拘束・米国移送したベネズエラ攻撃に関するものだ。
筆者が驚いたのは、軍事作戦にまつわるシーンが米陸軍特殊部隊デルタフォースによる電光石火の大統領誘拐でもなく、米空軍のB-2ステルス爆撃機によるロシア製防空システム突破などの圧倒的な電子戦争でもなかったことだ。
それは、にわかに信じ難いシーンなのだ。
ベネズエラ攻撃に至るまでにホワイトハウス(WH)の大統領執務室、地下のシチュエーションルーム、そしてフロリダ州パームビーチの私邸「マーラ・ラゴ」など各所で、そして同じ部屋にトランプ氏がいる・いないに限らず、マルコ・ルビオ国務長官兼大統領補佐官(国家安全保障担当)代行とスティーブン・ミラー大統領次席補佐官(政策担当)の2人が人目を憚りながらもヒソヒソ話を繰り返す姿をアップで撮っている(もちろん至近距離からではない)。
なぜ、信じ難いのか。当然、理由がある。ルビオ氏は次期大統領に最も近いとされるJ・D・バンス副大統領の唯一無二のライバル。そしてミラー氏は、トランプ政権内のバンス支持勢力の中核メンバーに数えられている。
前号コラムで言及した著名実業家ピーター・ティール氏(米ペイパルやパランティア・テクノロジーズの共同創業者で、シリコンバレー発のリバタリアン=自由至上主義者の始祖)は、バンス氏をトランプ後継に強く推している。
ミラー氏がルビオ氏に近づいた理由
ところが、トランプ氏の「アメリカ・ファースト」を強く支持し、その政策を自ら体現することに傾注するバンス氏は、イラク戦争での従軍経験もあり、巨額な戦費を投じ、かつ従軍兵士を危険に晒す「戦争絶対反対」論者である。政権内で終始、ベネズエラ軍事攻撃など「とんでもない!」と唱えていた。
一方、社会主義国キューバから移民した両親を持つルビオ氏は、反キューバ政府のスタンスが堅固だ。共和党のフロリダ州議会議員、同州選出上院議員時代から内政では自由貿易・グローバル資本主義、小さな政府と新自由主義、不法移民の合法化、銃規制に反対の立場で、外交では反キューバ・対中国の最強硬派である。また、カトリック教徒でもある。
だが、第2次トランプ政権誕生以降、将来の野心を視野に置くも、表面上はリアリストに徹する。そうしたルビオ氏に接近したのが、ミラー氏である。
大統領が拘泥する多数の不法移民の強制退去を国内外の反対論を押し切って実現するため、ルビオ氏に社会主義政権の打倒にはキューバの命運を握るベネズエラ産石油の遮断が常套作戦だと持ちかけた。
高市・トランプ対談の現実味
と同時に、ベネズエラが米国向け麻薬(フェンタニルを含む)の中継地であるとトランプ氏に説明すれば、ベネズエラ攻撃のゴーサインも得られると考えた。そして両氏の共闘が成った。
ベネズエラ攻撃計画がルビオ・ミラー連合の合作であるとの証しとして、周辺に気配りしながら密議を重ねる2人を撮った映像を入手したGBHのカーク・チームは称賛に値する。
そこで問題は、11月3日の米中間選挙を控えた最新のWH内のパワーバランスの現状である。「暗黒啓蒙」の思想家カーティス・ヤーヴィン氏の言葉を借りれば、トランプ流の「ジャクソニアン」が引き続きWHで大きな影響力を維持するならば、果たして賽の目はバンス氏でなくルビオ氏に向けて出るのか。まだ分からない。
高市早苗首相は来週19日、ニューヨークに向けて発つ。22日夕(現地時間)、国連総会で演説する。同日までにトランプ大統領との面談を希望するが、それは今のところ、叶いそうにない。
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