沖縄の「修学旅行生の平和学習」で“ヤラセ疑惑”! 「既に発掘された遺品を埋め直して、子どもたちに掘らせていた」証言も… 団体代表は「何が問題なのでしょう?」
【前後編の後編/前編からの続き】
正義は暴走するという……。死亡者が出た辺野古ボート事故によって、「平和学習」の美名の下で危険な“教育”が行われていたことが明るみに出たわけだが、問題は他にもあるようだ。平和学習と関わりがある人物に、“ヤラセ疑惑”がささやかれているというのだ。【窪田順生/ノンフィクション・ライター】
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【写真を見る】ヤラセ疑惑に「何が問題なんでしょうか?」 遺骨収集のカリスマ・具志堅氏
前編では、沖縄で行われている修学旅行生の平和学習が“過激化”しており、中には「生徒への犯罪教唆」のようなプログラムまで実施されているという実態について報じた。
8月6日、小倉暁氏という男性が亡くなった。享年86。航空自衛隊を退職後、遺骨収集や遺族への遺品返還を30年以上も続け、2009年ごろまでは遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」代表の具志堅隆松氏(72)具と活動を共にしていたことで知られる人物だ。そんな小倉氏の那覇市の自宅へ線香を上げに伺ってみると、彼の妻が興味深い話をしてくれた。

「主人が具志堅さんと活動をしなくなるちょっと前、『もう彼のやり方にはついていけないよ』『子どもたちにうそを真(まこと)だと信じ込ませていいのか』とひどく憤慨していたことがあったんです。あの人は家で誰かの悪口や愚痴を言うことがない人だったので、すごく覚えています」
では、小倉氏は具志堅氏のどんな「うそ」が許せなかったのか。小倉氏の友人が重い口を開く。
「小倉さんによれば、具志堅さんは子どもたちが遺骨収集体験に訪れる前、既に発掘された水筒や入れ歯などの遺品を埋め直して、それを子どもたちに掘らせていたそうです。ちょっと掘ったら何か出るので子どもたちは喜びますが、芋掘りじゃないんですよ」
そんな「ヤラセ」ともいうべき行為を小倉氏が目撃したとされる現場は沖縄の激戦地の一つ、那覇市真嘉比(まかび)地区。08年に都市開発計画が持ち上がった際、遺骨が多数眠っていると具志堅氏が訴えたことで計画が一時ストップ。その後、ホームレス支援団体が協力して遺骨収集を行って全国的に注目された。言うなれば、「遺骨収集のカリスマ」が誕生した地である。
「具志堅さんがマスコミに取り上げられてどんどん有名になっていく中で、“また似たようなことをやっているのではないか”と心配した小倉さんはネット番組に出演して告発しようとしたこともありました」(同)
しかし結局、告発はなされぬまま小倉氏は逝去してしまった。かつての同志への遠慮か、具志堅氏の知名度でボランティアや体験学習が増えた「遺骨収集」への悪影響を懸念したのか、今となっては分からない。
「もしそうだとしても、それの何が問題なんでしょうか?」
では、小倉氏の妻や友人が明かした「ヤラセ疑惑」について当の本人はどう思っているのか。
待ち合わせの店にやってきた具志堅氏に疑惑をぶつけると、眉間に皺を寄せて考え込み、絞り出すようにこう答えた。
「ちょっとこれははっきりしませんが……。私がそれをやったということはないですけど……。うちのメンバーはたくさんいるので、そういうふうに子どもたちに疑似体験をさせてあげたい人がいたのかな……」
自分自身はそのような行為をしたことがないし、記憶もないと否定した。ただ、それよりも筆者が注目したのは次の「持論」だった。
「いや……。もしそうだとしても、それの何が問題なんでしょうか?……果たしてそれに何かしら弊害があるのかと……」
具志堅氏の考えでは、それらの遺品はもともとそこから掘り出されたものなので、また埋めたところで「戦争で亡くなった人が眠っている」という事実自体は変わらない。平和学習に訪れる子どもたちをだましているわけでもないのだから、とがめられるような問題ではないというのだ。
澄んだ瞳でそう訴える具志堅氏は開き直っているようには見えない。心の底から悪い行為だと思っていないのだろう。
「戦争の犠牲者を遺族の元へ返すっていうのが目的なんですよ。そして大事なのは、戦争になるのをどうやって避けていくのか考えることです。でも、政府は反対のことをしているじゃないですか」(同)
辺野古新基地の埋め立て用の土砂には多くの遺骨が眠る県の南部地域のものも含まれる。具志堅氏らが遺骨収集をしていた場所も規制線が張られ、採石業者が入っていたという。
「米軍によって亡くなった人の遺骨や、血を吸い込んだ石灰岩を今度は米軍基地のために使うというのは、戦没者への冒涜以外の何物でもない。日本の恥ですよ」(同)
「基地や自衛隊に使うお金があるなら、遺骨収集や平和教育に注ぎ込むべき」
そして、戦没者に対して日本人ができるのは二度と戦争を繰り返さないことだとして、中国との緊張関係を高めている自衛隊は沖縄から撤退すべきだという持論も展開した。
「あなたは基地反対派ですかとよく質問されるんですが、私は戦争につながる全てのものに反対をしています。基地や自衛隊に使うお金があるなら、遺骨収集や平和教育に注ぎ込むべき。それが戦争を避ける唯一の方法ですよ」(具志堅氏)
政治信条はさておき、人間としての純粋さや信念の強さは伝わってくる。もし自分が多感な十代の若者で、こんなにも熱い「魂の授業」を受けたら、あっという間にファンになってしまうだろう。
沖縄で25年以上も遺骨収集に携わり、具志堅氏と親交もあるカメラマンの浜田哲二氏に筆者の所感を伝えると、こんな答えが返ってきた。
「具志堅さんらしいですね。あの人は戦争というものを純粋に憎んでいます。昔は遺骨収集をやりたいとやってくる人に対して『あなたは天皇についてどう思う?』と思想について質問をしていたこともあります。ある時、私も質問されて“友だちでもやるんだ”と驚きました」
「たった今発見されたような“演出“をする人がいるといううわさを聞いた」
とはいえ、腑に落ちないのは遺骨収集体験における「ヤラセ疑惑」だ。具志堅氏の言うように、これはささいな問題なのか。
浜田氏は「私が主導する現場ではあり得ません」と断りつつも、そのような「うわさ」はかねてより存在しているということを明かした。
「遺骨収集というのは出る時は出ますが、何週間もなにも出ないことも珍しくありません。ですから、メディアに取り上げてもらうことも、修学旅行のツアーにするのも簡単ではない。そこで既に見つかっていた骨や遺留品を用いて、たった今発見されたような“演出”をする人もいる、といううわさを報道関係者などから聞いたことがあります」
しかし、そのような問題のある遺骨収集体験ばかりではないことは分かってほしいと浜田氏は訴える。
「私たちがやっているボランティアでは、子どもたちに上からあれこれ教えるということはしません。掘り起こした遺骨や遺留品について、自分たちで考えてもらう。今、那覇市周辺の高校生たちと一緒に発掘された遺留品の持ち主を探してご遺族に送り届けるという取り組みを続けていますが、生徒たちが自主的にいろいろと調べてくれて、逆にこちらが驚くような発見もあります」
ある時、9月6日に『辺野古沖 抗議船転覆事故と沖縄「平和運動」の闇』(扶桑社)を上梓した地元のラジオパーソナリティー・手登根(てどこん)安則氏(63)が、県内の進学校に通う高校生をラジオ収録に呼んで、学校でどんなことを習っているのかと尋ねたところ、真剣な表情でこんな言葉を返してきたという。
「日の丸の白は骨、赤は血、君が代は天皇の名の下に僕らを戦争に送り込んで罪のない人を虐殺する歌だ」
戦争の悲惨さを教えるためとはいえ、「やり過ぎ」の感は否めない。「平和学習」が抱える問題はわれわれが思っている以上に深刻なのではないだろうか。
前編では、沖縄で行われている修学旅行生の平和学習が“過激化”しており、中には「生徒への犯罪教唆」のようなプログラムまで実施されているという実態について報じている。
窪田順生(くぼたまさき)
1974年生まれ。雑誌や新聞の記者を経てフリーランスのノンフィクション・ライターに。事件や世相などを幅広く取材。近著に旧統一教会内部を取材した『潜入 旧統一教会 「解散命令請求」取材NG最深部の全貌』(徳間書店)がある。その他、著者多数。
「週刊新潮」2026年9月17日号 掲載
