「社長に脅され…」住民を立ち退かせるため放火を指示した男 裁判で話した自身に不利となる″事実″

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「(社長から)物件を燃やせと言われている」

再開発エリアの住民を立ち退かせるために、民家の一部を燃やしたり、放火を指示したとして、非現住建造物等放火の罪などに問われている内藤寛己被告(31)の公判が9月2日、東京地裁で開かれた。

内藤被告は起訴内容を認める一方で、勤務していた不動産会社の社長の指示であったと驚きの証言を繰り返した。

「事件は昨年の10月から11月にかけて起きました。捜査関係者によると、民家や隣接するアパートに放火したとして、今年2月、現住建造物等放火未遂容疑などでアパート管理会社(港区)の社員、内藤被告ら6人が逮捕されました。6人は知人で内藤被告が放火を指示。5人が道具の準備や現場までの運転、放火の実行などを分担していたとみられています。その後の捜査で、実行役とみられる2人が100万円の報酬を受け取ったことがわかっています」(全国紙社会部記者)

起訴状などによると内藤被告は不動産会社の社員として勤務し、買い取り交渉を担当。昨年10月31日に、再開発エリアで立ち退きに応じない周辺住民の自宅外壁に火を付け、郵便ポストを損壊した。

また、昨年11月18日には、隣接するアパートの部屋にガソリンを撒き、火をつけるよう男らに指示。取り調べ中には、コカインの使用も供述し、麻薬及び向精神薬取締法違反の罪にも問われている。

紺色のスーツを着用し黒のマスク姿で顔半分を覆っていた内藤被告は、起訴内容について「(間違い)ないです」とはっきりと答えた。

被告人質問の前に行われた証人尋問では内縁の妻Aさんが証言台に立ち、内藤被告が社長に脅されていたと証言。Aさんによると社長から電話がかかってくると内藤被告は席を外し、隠れて電話に出るようになった。様子がおかしいと思い聞き耳を立てると、電話口から「早く燃やせ!」「火をつけろ!」といった怒鳴り声が聞こえたという。

内藤被告は不眠となり、睡眠薬を服用するようになった。その結果、嘔吐を繰り返すなど体調を崩し、入院。内藤被告から「(社長から)物件を燃やせと言われている」と打ち明けられた。Aさんは、「バカじゃないの? そんな会社さっさと辞めて」と退職するよう求めたが、数日後、弁護士から内藤被告の逮捕を知らされることになる。Aさんは、

「裏切られたと思いました。悲しい気持ちになって怒りが収まりませんでした」

と言葉に怒りを滲ませた。今後については、

「監督をしていかないといけないと。(内藤被告には)家族がいないので私が立ち直らせるしかないと思っています」

とサポートしていくと語っている。

次に被告人質問が行われたが、内藤被告は、Aさんの存在が今回の犯行の引き金となる“脅しの標的”にされていたと主張したのだった。

「燃やしたりねぇな」

内藤被告は再開発エリアの立ち退き交渉を行っていたが、数人の住人との交渉が難航。そのうちの1人は10回以上訪問するも面会すらかなわなかった。社長室に呼ばれ「ちょっと脅せば出ていくだろ? お前燃やしてこい」と指示を受けた。当初は拒否していたが、

「(社長から)内縁の妻に対する言及がありました。(内縁の妻が)会社をやっている具体的な地名を出され『お前、分かってるな』と言われ、やるしかないなと思いました」

と犯行を決意する。つまり、内縁の妻が“脅しの標的”にされたと思い、犯行に及ぶしかないと考えるようになったという。

「(会社に)暴力団と称する人が出入りしており、(社長は)そういう人との付き合いがあると思いました」

とも証言。そして、事件は起きた。

昨年10月31日の午前5時ごろに住人の家に向かい、内藤被告はライターオイルを撒き郵便ポストに火を付けた。その理由は、ポストの表面が黒く焦げる程度で、被害が最小で済むと想定していたからで、予想どおりすぐに鎮火。燃え広がらないことを確認してからその場を立ち去った。

数時間後、内藤被告は車で社長と現場を訪れている。郵便ポストを見た社長は、「燃やしたりねぇな」と不満そうに話したという。

昨年11月に再び社長室に呼ばれ「どうなってんだ。小山の物件はまだか」と詰められた。内藤被告は「これ以上はできません」と断ると社長は「誰か探してこい。被害届は出させないようにしてやる」と持ち掛けた。

内藤被告は1人につき報酬100万円で知人のBに依頼し、BがCを誘い、昨年11月18日にアパートの空室の一室に火をつけた。

その後、会社の地下駐車場で紙袋に入った現金500万円を受け取った。事前に内藤被告が立て替えていた200万円を差し引き、300万円は「自分で使用した」という。

その後の社長とのやり取りで内藤被告はストレスを抱え込んでいく。社長は「バレても絶対に俺の名前を出すな」と自己保身に徹した。内藤被告が「(被害住民が)被害届を出さないようにしてくれたんですか?」と尋ねても、答えることはなかった。「絶望しました」とストレスから精神的に不安定になり、コカインに手を出したという。なぜ事実をしゃべろうと思ったのか問われると、

「責任逃れではないが実際はこうだったということを話したかった」

と語った。検察は「果たした役割は重要」と断罪し、拘禁刑5年6ヵ月を求刑。会社は内藤被告を懲戒解雇処分とし、

〈弊社として当該元従業員に対して本件に関して指示・命令等を行った事実は現時点までに一切確認できていません〉

と声明を発表している。真っ向から対立する両者の主張。事件は、内藤被告の単独犯行だったのだろうか……。判決は9月29日に下される。