脳科学者の茂木健一郎氏が自身のYouTubeチャンネルで「言葉を積み重ねることで、心の旅が生まれる」と題した動画を公開した。動画では、AI(人工知能)が急速に発達する現代において、人間が長い文章を読み書きすることで得られる「心の旅」の重要性について、自身の見解を語っている。

冒頭、人間は普段無意識でぼーっとしている時間が長いと語る茂木氏。しかし、例えば10万字ほどの本を読んだり、論文や著書を執筆したりするように、「言葉を積み重ねることによって精神運動が起こり、旅ができる」と説明した。物理的に世界を移動することだけが旅ではなく、文字を連ね、言葉を繋いでいくことによって初めて到達できる精神的な空間があると主張している。

具体例として、松尾芭蕉の『おくのほそ道』に言及し、「物理的な旅をしただけでなく、言葉を連ねていくことによって『おくのほそ道』という心の旅をした」と独自の解釈を提示。文字の羅列がなければ、芭蕉の心の旅も生まれなかったのではないかと推察した。さらに話題は昨今の人工知能技術へと展開。膨大なデータを処理するAIは、人間よりはるかに高速で広大なスケールの「言葉の旅」をしていると指摘する。しかし同時に「人工知能には生きた経験がない」と述べ、言葉以前の生の経験を持ち、それを基に言葉を紡ぐことこそが人間にしかできない旅であると強調した。

動画の終盤で茂木氏は、自身の最近のポリシーとして「なるべく長い文章を読み、長い文章を書く」ことを実践していると明言。これからの教育現場に向けても「もっと文章を書くようになれば、心の旅がさらに充実してくるのではないか」と提言し、言葉を通じた精神的成長の重要性を訴えかけて動画を締めくくった。

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