元受刑者の更生支える『職親』 再犯防止へ広がる支援の輪【高知】
元受刑者が出所後に再び犯罪に手を染めないよう働く場所などを提供する取り組み=職親が高知県内で広がっています。「職親」を考える第2弾は、この取り組みがどれだけ更生につながっているかを取材しました。
高知市で一人暮らしをしている元受刑者の70代男性です。
20年以上前に殺人の罪を犯したこの男性は、懲役11年の判決を受け徳島刑務所で服役しました。
いまは元受刑者に働く場を提供している職親のもとで土木作業員として働いていて、月に1度は職親がこの社宅を訪問しています。
「現場暑いけど、ケガするようなことってない?」
■元受刑者の男性
「ない、熱中症だけ」
男性を雇用しているのは高知市にある楠瀬工業の楠瀬武司さんです。
■楠瀬さん
「見ての通り就労意欲もかなり高いので雇い入れた。心配な所はあったんですけど、とても熱くていい人です。16年、17年目ぐらいにはなると思う」
男性はこの間、一度も法律違反をせず、真面目に働いてきたといいます。
■男性
「もうやったき仕方ないき。それは今でも、こういうことはしたくないと後悔はしている。殺すつもりはなかったけど、やったことは仕方ない」
男性は当時雇ってくれていた社長を守るため罪を犯していました。
■男性
「社長が一緒に山田の交番所へ行って、『殺しました』と。べったり血がついちゅうき、僕は自首した」
■楠瀬さん
「彼の背景には家族がなかったり、身寄りがなかったり、そこでお世話になってたのがさっき名前が出ていた社長。その大切にしていた人が侮辱されるようなことをされた。それに一番腹が立って、という風なことだとは思ってます。ただやっていいことと悪いかどうかは分かってますよね」
■男性
「分かってます」
殺人は突発的な犯行で、男性はずっと後悔してきました。
■男性
「今はもうやった(殺した)それは悪う思ってます。反省してます。悪いことしたなと思うて」
「裁判官の女の裁判長やったけどね、『これからどうしますか』と言われたきね、『もう1からやり直すつもりで真面目に仕事したいです』いうて言いました」
職親はこうした罪を犯した人が再犯しないよう支えています。
■楠瀬さん
「特に職親の理念は就労、いい仲間づくり、住居、あとは教育。この4つという所が強くあるので、この中にはまるということについては、まさに家族同然。一生懸命教えますし、こちらが教わることもあるんですけど、そこを気にしています」
職親はこうした元受刑者に雇用の場を提供する取り組みです。
日本財団が一部の活動を援助しながら全国で広がりを見せていて、県内では2025年11月に支部が発足しました。
楠瀬さんは高知県の支部長として交流会を開くなど、県内の職親同士の連携を図ってきました。
この日、高知市で楠瀬さんなど高知県支部のメンバーが集まって、全国の支部長会の報告などが行われていました。
■楠瀬さん(職親プロジェクト四国・高知県支部 支部長)
「雇用しても雑に扱ったり、就労というよりも単純に安く使う労働力として、(職親プロジェクトに)入ってくるところについては基本的に排除しようと」
県支部の監事であり自身も職親をしている中川工業の中川文章さんです。
中川さんは2026年5月末、高知刑務所を仮出所した男性の職親となりました。
この男性は、長年覚せい剤の密売と使用を繰り返してトータル20年以上も刑務所に入っていて、6月の交流会では更生に向けた意欲を語りました。
■仮出所した男性
「どっかで変わらんことにはこの先、自分の人生は刑務所行ったり来たりやと思うんで。この先、一生懸命がんばっていこうかなと思っています」
この男性は、いまどうしているのか。
■職親・中川さん
「現場では一生懸命働いてくれるし、周りの人間も人間性がすごい良い人間なんで、和気あいあいとして声もかけてくれて。現場でほんとに楽しく、ムードメーカーじゃないですけど、がんばってやってくれている」
これまで働いたことがなかった男性ですが、土木作業員として頑張っているということで、中川さんは仕事を提供するだけでなく、男性と一緒に食事をするなど見守りを続けています。
しかし全ての元受刑者が順調に更生するとは限りません。
■中川さん
「結局僕の所にいる時は、ある程度ちょっと安定していたけれどもやっぱりやけになって辞めた先でまた再犯したり。覚せい剤ですね。寂しい思いをしゆうというか事件を起こした人間というのは、自分で(限界を)決めてしまって。いや、おれを認めてくれん。まだ3か月やぞって僕ら思うんですけど、それで結局またやってしまうから、またゼロですよね」
出所したばかりの時は更生に向けた強い思いを持っていますが、時間と共に悪い仲間との縁が戻ったり、はじめた仕事がうまくいかず、再び薬物などに手を出してしまう人も多いといいます。
■職親プロジェクト四国・高知県支部 西田副支部長
「やっぱり昔の仲間とつるんだらまずアウトですね」
■中川さん
「がんじがらめにしてそこを切り離すということもできんではないけど。ある程度本人の気持ちを尊重してやって、自立さしたいなと思うんですけど」
2人に1人は再犯するといわれるほど難しい更生。
県支部長の楠瀬さんは、1人でも多くの元受刑者を救うために県内で支援の輪を広げています。
■楠瀬さん
「高知は高知のモデルを目指しているんですけど。行政にもお願いをしたりとか、最後は社協さんとか地域定着支援センターみたいなところとも連携をとりながら、医療・福祉までつなげていく。そういうことをしないと、なかなか。仕事を与えて、仕事にならないからさようなら、ってやってしまうとその人の人生がめちゃめちゃになっちゃうんで。そこは責任を持って覚悟のある人たちにお願いをしながら包摂的にみれるように、常に意識しています」
県内に職親の支部ができてからもうすぐ1年。2年目に向けて楠瀬さんは。
■楠瀬さん
「今まではいろんな企業さんを増やそうというようなことで、どんどん増やしてきたわけなんですけど。そうするとどうしても対象者に対しての扱いが雑になるので、高知は数の勝負から抜け出して質の向上ということで各企業にも資質を問われるような状態をしっかりつくってやりたいと思っています」
高知県内ではこうした熱い思いを持った、「職親」たちが元受刑者たちの更生を一歩一歩、進めています。

