猫が水をよく飲むのは病気のサイン?腎臓病・糖尿病・甲状腺機能亢進症…猫の病気の基礎知識

写真拡大

著者の峯田淳さんが10年寄り添った愛猫・ジュテ。ガンと判明し、無我夢中で過ごした47日間の闘病の日々をつづった『猫のいる人生』(新潮新書)から一部抜粋・再編集してお届けする。

「最近よく水を飲む」「食べるのに痩せる」「物にぶつかるようになった」そんな変化は病気のサインかもしれない。ジュテとの闘病を経験した著者が、猫に多い病気の症状や治療法、早期発見のポイントについて獣医師に取材した内容を紹介する。

ジュテを襲ったのはガンだったが、猫に多い病気といわれるのが腎臓病、糖尿病、甲状腺機能亢進症。基礎知識をかかりつけの獣医師に聞いてみた(2026年2月)。 

【腎臓病】 

腎臓は血液を濾過して体に不要な老廃物や水分を尿として排出し、体液のバランスを調整している。機能が低下してくると多飲多尿、食欲低下、嘔吐、脱水、便秘、体重減少、貧血など、様々な症状を引き起こす。

末期になると尿毒症になり、消化器障害、けいれんなどの神経症状を伴う。慢性と急性があり、慢性は数カ月から数年かけて悪くなっていくが、急性は短ければ数時間、数日の間に機能が一気に低下する場合もある。 

「腎臓は通常、左右に1個ずつありますが、ダメになるとダメになった部分は再生しない臓器です。残っている部分で全部をカバーしないといけないので、悪くならないように、進ませないことが大切。腎臓病と診断された場合、食事療法や薬などで進行を遅らすようにします。 

自宅でもわかる腎臓病のサインとしては、やたらとお水を飲むことと尿の異常です。明らかに飲み水の減り方が速いとか、水を飲んでいるのをよく見かけるとか、日頃から気をつけて見ていると気づくと思います。 

オシッコは量や回数が多くなります。固まる砂を使っている場合は塊が大きな球になったということがよくあります。心配だという方にはオシッコを採ってきてくださるようにお願いします。

オシッコはどうやって採ればいいのかというと、砂を使っている場合は砂の上に濾紙のような採尿シートを細かく切って敷き、オシッコが浸み込んだものを持ってきてもらい、絞って調べます。砂に浸み込んだ塊を持っていらっしゃる方もいますが、液体状態でないと検査はできません。

また、ウロ・キャッチャーというスポンジがついた棒もあり、それで直接、採尿する方法もあります。専用のオタマやサランラップを敷いて採ってくる方もいらっしゃいます。 

今はシステムトイレを使っている飼い主が多いので、その場合は下をきれいにして何もない状態にし、溜まった尿をスポイトや注射器で吸い取ってもらうか、採尿シートを敷いて、それごと持ってきてもらいます。 

見るのはオシッコの比重やタンパク質など。オシッコの色が黄色ではなく、薄く、透明な水っぽい状態の時は大抵、比重が低いので、腎臓病が疑われます。 

猫の状態も大切です。

脱水症状を起こしていないかどうか。人間と同じように猫の体も6、7割は水分でできている。脱水すると油が切れた機械のような状態になって動きにくくなり、寝てばっかりやジッとしていることが多くなります。自宅で脱水していないかどうかを確かめる時は皮膚をつまんで持ち上げてみてください。普通に潤っている時はすぐ元に戻りますが、脱水症状だとジワジワと戻るか、だらんとして戻らないこともあります。

ツルゴール反応、テントテストといわれるもので、動きが鈍くなったと思ったらやってみてください。 

飲水量やオシッコのことが気になったら、猫を病院に連れて行きましょう。病院では血液検査を行い、おもにBUNやクレアチニン、SDMAという数値を見ます。これらの数値で進行の度合いがステージ1からステージ4のどの段階なのかを診断します。

それから血液中の電解質やリンなどの数値、貧血の有無なども調べます。できれば、エコー検査もしたいですね。 

腎臓病とわかったら食事療法、投薬、点滴などをやることになります。 

食事療法では、まだ初期の段階で脱水もひどくなく、食欲もあるような場合は、タンパク質を制限した療養食をお勧めします。今は以前に比べていろいろなメーカーがタンパク質を調整した腎臓病のための療養食を出しています。何種類かありますから、その中で食べられるものを食べてもらうようにします。

水も制限せずに飲めるよう、置き場所や水の器の数を工夫してもらいます。 

進行してくると、食事療法とともに投薬も必要です。腎臓に直接働きかけて、血流や血圧、タンパク尿の改善を図るもの、尿毒症の原因物質を減らすものなどを組み合わせて治療します。この頃になると、皮下補液も必要になってきます。 

もっと悪くなると、食事もできず、皮下補液では間に合わず、器械を使って点滴をすることになり、入院が必要になります。 

とにかく早期発見が大切です。

猫の体に変化が出てくるのは7、8歳頃から。10歳くらいになると心配になるという人も多いです。まだ体重も減っていないし、ステージが早い段階ならまず食事を切り替えてみる。最近の猫は長生きですが、長生きしている猫は腎臓の状態がいいなと感じています。

定期的に血液検査などをやって、できるだけ早く見つけ、悪かったら対処することをお勧めします。ワクチンを打ちに行く際に、一緒に検査して数値を確認するのがいいかもしれません。 

私が今、世話している猫は22歳になりますが、15歳くらいから腎臓の数値が変わらない。もちろん、食事にも注意していますが、ストレスフリーなのもいいのかもしれません。逆に大病したり、違う病気で薬を飲んでいたりすると、腎臓に負担もかかるので、悪くなるのも早いですね。 

薬代は決して安くはないです。不安な時は先に病院で訊いてみてはどうでしょうか。ただ、折角いい薬があっても、飼い主が毎日、飲ませることができるかもネックです。投薬って意外と難しい。食欲がないのですから、食事に混ぜてとはいかない。食欲を促す薬というのもありますが、これも投薬なので同じです」 

【糖尿病】 

血液中に含まれるブドウ糖の数値、いわゆる血糖値の猫の参考基準範囲は下限値71~上限値148。この数値が上がらないように血糖値を降下させる作用があるのが、膵臓から分泌されるホルモンのインスリン。糖尿病は血糖値を安定させるためのインスリンの量の低下、もしくは働きが悪くなるのが原因。 

その原因として多いのは高脂肪、高カロリーな食事の食べ過ぎやストレス、運動不足といわれている。インスリンが不足して細胞が糖を取り込めなくなると多食になるが、いくら食べても体重は減少してくる。さらにエネルギーが不足して元気がなくなり、毛艶も悪くなる。

末期になると、腎機能障害、白内障、肝疾患などの合併症も引き起こす。ケトアシドーシスといわれる状態になると、意識障害・昏睡、呼吸困難に陥り、生命の危機も──。 

「糖尿病は腎臓病と比べると発症は少ないですが、症状の入口はどちらも同じで、多尿多飲傾向になります。『最近、水をよく飲む』という飼い主さんからは同時に、よく食べるという話も聞きますし、糖尿病はとくに太っている猫に多いですね。 

ただし、腎臓病と糖尿病では食事療法に関しては異なります。腎臓病はタンパク質を制限しますが、糖尿病は炭水化物を控え、タンパク質高めの食事に切り替えます。もっとも、食べたらそれをエネルギーに変えて使えばいいのですが、動かずにダラダラとしたりすると体に溜め込んでいくことになります。

しかも、しょっちゅう食べてばかりいると、インスリンが足りなくなり、血液中のブドウ糖を利用できなくなります。 

そのために必要になるのがインスリン注射です。インスリンを打つと、血液の中の糖を細胞内に取り込んで血糖値を下げることができます。インスリン注射は皮下注射です。やりやすいところならどこでもいいのですが、やはり猫は首の後ろが緩いので、そこが多いですね。インスリン注射は自宅で打つことができるように練習してもらいます。

それを12時間おきなどで専用の細かい目盛りがついたシリンジで打ちます。どれくらいの量を打つと血糖値がどれくらいの速度で下がるのか、適量が決まるまで何度も血液検査が必要です。最近は体に貼り付けたセンサーで血糖値を測れるものもあります。 

ただ、インスリン注射が始まると、飼い主はお出かけが難しくなります。猫も大変だけど、人間の生活も制約されるので大変です。最近になって1日1回飲ませる薬もできました。当院ではまだ使っている猫はいませんが、注射ではないので、飼い主にとってはハードルは低いですね。

でも、自宅でオシッコの検査をマメにしてもらわなければいけませんし、安定するまではやはり大変です。 

それから気をつけなければいけないのはもちろん食事です。血糖値を急速に上げない食べ物にします。高タンパク質、低炭水化物、そして繊維質多めのものを与えて、血糖値がすぐには上がらないようにすることが大切です。 

今は各社から療養食が出ているので、利用してもらうことが多いです。糖尿病を発症する猫の多くは太っていて、食べる量も多いのですが、与えるのは人間です。内容とともに食事量を制限してあげることが大切です」 

【甲状腺機能亢進症】 

甲状腺は喉の下にある小さな器官で、サイロキシンとトリヨードサイロニンというホルモンを出している。腎臓の上にある副腎に反応したり、他のホルモンと反応することで、エネルギーの生産促進、体温の調節、新陳代謝のコントロールなど、トータルで体をうまくコントロールしてくれる。亢進症はそれらの代謝が異常に活発になる。 

「人間でいうバセドー病と同じ状態です。バセドー病の場合、動悸やイライラ、落ち着きがないといった症状が現れますが、猫もそうで、症状としてはワオワオと活発に吠えるように鳴く、やたらと興奮したり動き回ったり、高齢猫なのに活動的になるといった状態が目立つようになる。

しかも、非常によく食べるのも特長です。食べるけど痩せる。心臓をバクバクさせるから、血圧が上がって、血管に負担がかかります。当然、心臓にも負担になります。 

高血圧が影響して目が見えなくなることもあります。最近よく物にぶつかっているという場合、高血圧で網膜剥離になっているかもしれません。 

ですから、この病気の場合は抗甲状腺薬とともに、血圧を下げる薬を飲んでもらうこともあります。うまくいくと目が見えるようになる可能性もあります。血圧の目安は上は150くらい。160、170くらいなら、そのままでも、という気もしますが、200近いとか、200を超えたらコントロールしてあげるようにします」※猫の血圧の測り方は人間と同じ。前足に小さなカフを巻き付けて測る。 

【猫の高血圧と網膜剥離】 

網膜剥離は眼の奥の網膜に穴や裂け目ができて、最悪の場合は失明する病気。原因は高血圧、眼の炎症、白内障など。腎不全や糖尿病などいろいろな病気が引き金になり、とくに高齢の猫に多い。 

症状として、目が見えないので物にぶつかりやすくなったりする。診断では眼底検査、超音波検査、レントゲン検査などを行う。治療法は高血圧なら降圧剤を投与するなどの方法がある。早めに治療するのが最善だが、やはり高齢になったら、血圧を測ってもらうことから始めるのがベストだ。 

我が家の猫をお世話してくれたMさんの例。Mさんは自身でも2匹飼っている。伊豆高原に住んでいた時に保護した推定21歳の元野良猫のサビと、15歳になる元保護猫のシロ。悩みはどちらも高齢で目が見えないことだという。 

「サビは以前から目が見えなかったけど、シロも見えなくなってしまって。最近しょっちゅう物にぶつかるから変だなと思って、病院につれて行ったら、目の専門医を紹介され、診断は網膜剥離。血圧が高いのが原因で人間と同じ網膜剥離になったと言われた。猫が網膜剥離? 言われてビックリ。高血圧の薬もあるけど、治るかどうかは……」 

おそらく「猫が網膜剥離」と言われても、ピンとくる人は少ないかもしれない。その前に血圧が高いというところからよくわからない。そこで、Mさんに「そもそも病院で猫の血圧を測ってくれるの?」と訊いたら……。 

「そう、測ってくれるのよ」 
「でも、病院で血液検査をしてもらっても、血圧を測ってもらったことはないけど」 
「今度、病院に連れて行った時に、測ってもらった方がいいわよ」 

ガトーは最高体重が10.54キロだった。半年に一度、血液検査をやっているが、中性脂肪が標準値よりも高かっただけで、他は異常がなかった。他の猫に比べて体重が倍くらいあるので、糖尿病とか腎臓病などにならないか、いつも心配しているが、血圧について気にしたことはなかった。猫が血圧を測ってもらえるとも思っていなかったから。 

「目が見えないから歩くと物にぶつかるだけでなく、ご飯もにおいで感じるしかない。見ていてかわいそうよ」 とMさん。

そういえばと、ガトーが心配になる。大好きなCIAOちゅ~るを目の前で見せてあげることがあるのだが、反応しない時がある。もしかして見えていない? におっていない? と思うことがある。 

猫はかわいいけど、言葉を話さないから、何を考えているかわからない。しかも、痛い時でも表情に表さない動物でもある。過保護といわれようが、お金はかかるかもしれないが、定期的に検査してもらうに越したことはなさそうだ。 

そこで動物病院に9歳のガトーを爪切りに連れて行った際、「猫の血圧って測れるんですか」と聞いてみた。すると先生は「測れますよ」と即答だった。「今日でも大丈夫ですか」と言うと、「やります?」とあっさり言われ、その場でやってもらった。 

爪切りが終わったガトーをキャリーバッグに入れて隣りの部屋に連れて行き、それから部屋の隅にあった医療用の大きな血圧計を引き寄せた。ガトーはキョロキョロし、「何、これ?」と好奇心の塊になっている。 

病院で血圧を測ると、高く出ることは誰もが経験しているはずだ。それは猫も同じ。先生は「爪を切ったばかりで血圧が上がってるから」と首の後ろをさすって落ち着かせ、何度か計測してくれた。 

血圧計は人間がやるのと同じ、カフを巻いて圧をかけて測るものだった。ガトーは先生がカフを巻き付けるのをおとなしく受け入れ、その姿がなんとなく可愛らしい。 

何回測ってもガトーの血圧は高い。その中から一つチョイスしたのが、上が182、下が126という血圧のデータ。「ちょっと高いかな」と先生。ガトーは人間で言えば、50歳を超えている。この数値では生活習慣病になってもおかしくないかもしれない。 

その日、爪を切った時に診察台で計った体重は10.08キロ。ガトーは少しずつ食べる量を減らすようにし、3カ月ちょっとで500グラム近くダイエットしているのだが。 

高血圧は腎臓病を含め多くの病気に影響する。猫の時間は人間の3分の1といわれる。人間の1年なら猫の3年、半年は1年半、3カ月は9カ月。そう考えると3カ月に1回くらいは血圧を測った方がいいかもしれない。 

費用はやはりマチマチだが、再診料などがなければ1回で1000円程度のようだ。 

【聞きなれないFIP(猫伝染性腹膜炎)】 

ある日、Mさんから急に電話がかかってきた。 

「大変」 
「どうしたんですか」 
「姪っ子が飼っている猫がFIPっていう病気になっちゃって」 

いきなりFIPと言われてもチンプンカンプン。人間社会ではちょっと前までは新型コロナが流行し、最近は百日咳だ、マダニ感染症が増えたと日々、新たな疾病の流行が伝えられる。猫の世界でも新型の病気が流行り出したのか。そんな風に思いながら、Mさんの話を聞いてみると……。 

FIPとは猫伝染性腹膜炎のこと。Mさんに「ChatGPTで調べたらすぐわかるわよ」などといわれ、いろいろ調べてみた。そんな中で動物再生医療センター病院が出している情報によれば、こんな病気だ。 

FIPはとくに子猫がかかる重い病気らしい。「多くは1歳未満の子猫で発症し、食欲不振、活動性の低下、発熱、体重減少などの症状が起こり、発症から数日~1カ月以内に亡くなることも多い非常に致死性の高い疾患」とある。 

しかし、その次に「これまで長い間、猫伝染性腹膜炎(FIP)は『不治の病』『致死率99・9%』とされておりましたが、近年有効な治療薬が発見され、治療することのできる病気となっています」と説明している。 

それでも致死率99.9%と言われたら、さすがに驚く。効く薬が開発され、救われるケースが増えているとはいえ……。 

FIPになったのはMさんが飼っている猫ではなく、姪御さんが飼っている猫。その猫は保護猫を預かっている人経由で譲渡された。 

譲渡された時はとても元気な様子だったという。気になったのはお腹がポッコリしていること。実はこのポッコリお腹がFIPの典型的な症状らしい。 

FIPは「猫伝染性腹膜炎ウイルス」によって引き起こされる「ウイルス性感染症」。猫には猫腸コロナウイルスというのもあって、これが突然変異を起こして病原性の高い猫伝染性腹膜炎ウイルスになり、これに猫の体の免疫がうまく反応できないと発症するという。 

猫腸コロナウイルスは唾液、便などから鼻や口に入って伝染することがあるが、猫伝染性腹膜炎ウイルスは便に排出されることがなく、猫から猫にうつる可能性はないか、低いらしい。 

症状は食欲がない、元気がない、体重が減る、下痢や嘔吐があるというものだが、これでFIPと診断するのは飼い主はもちろん獣医師でも難しい。だが、そんな中で典型的なのがポッコリお腹。「腹膜炎」というくらいだから、お腹に水がたまるのだ。

もっとも、FIPにはお腹に水がたまったり、それによって呼吸困難、食欲の低下などの症状が現れるウエットタイプと、臓器に小さなシコリが発生、「肉芽腫性炎」を起こすドライタイプがある。姪御さんの猫は前者のウエットタイプということになる。 

「今は薬が効くから助かるみたいだけど、薬代がものすごく高額。2カ月間継続的に治療をやると、30万円以上かかる。保険は効かないから、まるまる持ち出しよ。でも、助けてあげるしかないから、お金はかかっても仕方がないけど」 

先の病院の情報によれば、レムデシビルとかモルヌピラビルといった薬などがあり、モルヌピラビルの場合は1症例あたり10~15万円ほど。保険適用が可能な場合もあるそうだ。 

Mさんによれば、ずっと前からFIPのことは知っていて、20年以上前にはうつるという理由で、「うちにつれてこないで」と病院に断られたとか。それに比べれば、猫の医学は長足の進歩を遂げている。 

治療中の姪御さんの猫はその後、元気に飛び回るようになったという。 

峯田淳
1959(昭和34)年山形県生まれ。コラムニスト。
埼玉大学卒業。フリーランスを経て日刊現代入社、芸能文化編集部長を経て編集委員。
退社後も「日刊ゲンダイ」の編集を含め執筆活動。編著に『おふくろメシ 80のごはんの物語』、著書に『旅打ちグルメ放浪記』など。