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同じ名字の人限定の婚活パーティーが話題になっています。時事通信(9月2日)の報道によれば、「改姓を理由に結婚をためらう人を、少しでも減らしたい」という主催者の思いから始まった企画だそうです。

では実際に、同じ名字同士のカップルが結婚し、その後離婚した場合、名字や戸籍はどのような扱いになるのでしょうか。「もともと同じ名字なのだから、結婚離婚も何も変わらない」と思われがちですが、法律上はそう単純ではありません。

「佐藤さん」同士のケースを例に、結婚離婚の陰で戸籍がどう動いているのかを追ってみます。

戸籍は「どちらかの氏」に統一されている

佐藤さん同士なら、結婚しても離婚しても見た目には何も変化がないため、当事者本人も周囲もあまり意識する場面はないでしょう。しかし、戸籍上ではそのあいだにも手続きが動いています。

日本の民法は、結婚に際して夫婦は「夫又は妻の氏」のどちらか一方を選び、名乗ると定めています(民法750条)。「氏」とは名字のことですが、法律用語にならい、この記事では「氏」と表記します。

夫婦双方が結婚前から同じ「佐藤」という氏であっても、この規定は変わりません。婚姻届には「夫婦が称する氏」として、夫の氏か妻の氏かを選んで記載する必要があります(戸籍法74条1号)。届出があると、原則として夫婦について新しい戸籍がつくられます(戸籍法16条1項)。

戸籍の実務では、同じ「佐藤」であっても、夫の氏と妻の氏は、たまたま文字と読みが同じだけの別々の氏として扱われます。表記や呼び方こそ結婚の前後で変わらないものの、選ばれなかった側は「婚姻によって氏を改めた者」として位置づけられます。

離婚後、氏はどうなる?

では離婚したら、氏はどうなるのでしょうか。

民法は、結婚によって氏を改めた夫または妻は、協議離婚によって「婚姻前の氏に復する」と定めています(民法767条1項)。

裁判所の手続きによる離婚でも同じです(民法771条)。これは同姓同士の結婚でも変わりません。

協議離婚なら、離婚届を提出するだけで、それ以外に特別な申請は必要ありません。

氏を改めた側は、離婚届の受理と同時に、法律上当然に婚姻前の氏へ戻ります。

今回の例では、婚姻前の氏がもともと「佐藤」であるため、離婚後も名乗る名字は変わらず「佐藤」のままとなります。

●同姓婚のメリット?「婚氏続称届」が不要に

なお、離婚後も結婚中に名乗っていた氏をそのまま使い続けたい場合はどうすればいいのでしょうか。

その場合は、いわゆる「婚氏続称届」を出せば、婚姻中の氏を名乗り続けることができます(民法767条2項、戸籍法77条の2)。届出の期限は離婚の日から3カ月です。

ただ、同じ氏同士の離婚では、この届出は「不要」というより、出しても受け付けてもらえません。

婚姻前の氏に戻っても呼び方は「佐藤」のままである以上、呼称を変える届出をする必要も実益もないからです。

戸籍実務では、離婚の際に称していた氏と婚姻前の氏の呼称が同じ場合は、届出を受理しない扱いとされています。

名字が異なる夫婦の離婚に比べれば、踏むべき手続きが一つ少ないことは確かです。

戸籍はどうなる? 2つの選択肢

氏の呼び方は変わらなくても、戸籍そのものの扱いには選択の余地があります。離婚に伴い、氏を改めた側には次の2つの道が用意されています(戸籍法19条1項)。

・婚姻前の戸籍に戻る(復籍)
実家の戸籍などがまだ存続していれば、その戸籍に戻ることができます。

・自分を筆頭者とする新しい戸籍をつくる(新戸籍編製)
離婚後に子どもを自分の戸籍に入れたいと考えている場合などは、新たに自分を筆頭者とする戸籍を編製します。婚姻前の戸籍がすでに除かれている場合は、選ぶ余地はなく、この形になります。

いったん新戸籍の編製を申し出ると、あとから婚姻前の戸籍に戻ることはできません。逆に、復籍したあとで新戸籍をつくることはできます。

その後の戸籍関係の手続きにも関わるため、離婚届の提出時にあらかじめ検討しておく必要があります。

●子どもがいる場合は要注意

見落とされがちなのが、子どもの戸籍の扱いです。夫婦が離婚しても、未成年の子どもの戸籍や氏は自動的には変わらず、婚姻中の戸籍にそのまま残ります。

手続きが必要になるのは、離婚戸籍を出る側、つまり氏を改めた側が子どもを引き取るケースです。親権者になったからといって、子どもの戸籍が自動的に移るわけではありません。具体的には、

(1)まず自分を筆頭者とする新戸籍を編製し、
(2)家庭裁判所に「子の氏の変更許可」を申し立てて許可を得たうえで、
(3)市区町村役場に入籍届を提出する

という3段階を踏む必要があります(民法791条1項、戸籍法98条1項)。子どもが15歳未満のときは、親(法定代理人)が代わって申し立てます。父母の双方が親権者となっている場合は、共同で申し立てることになります。

一方、氏を改めなかった側、つまり戸籍の筆頭者が子どもを引き取る場合は、子どもはもとの戸籍に残ったままです。この場合、これらの手続きは必要ありません。

●まとめ

同姓同士の結婚離婚は、名字の「見た目」が変わらないぶん、当事者にとって法的な変化を意識しにくいものです。しかし実際には、普通の結婚と同様に、次のような制度が背後で動いています。

結婚時にどちらかの氏に統一され、夫婦の新しい戸籍がつくられる
離婚時は氏を改めた側が当然に婚姻前の氏に復する(届出は離婚届のみで足りる)
・婚氏続称届は出しても受理されない
戸籍は「復籍」か「新戸籍編製」かを選ぶ(選べない場合もあり、新戸籍を選ぶと後戻りできない)
・未成年の子どもの戸籍と氏は自動では変わらない

離婚を検討する際は、名字が変わらないケースであっても、戸籍の手続きについては事前に市区町村窓口や専門家に確認しておくことが望ましいでしょう。