『糖尿病』で”血管”や”神経”が傷つくとEDに? 3大合併症とあわせて医師が解説
「糖尿病になるとEDになりやすいって本当?」「血糖値が高い状態が続くと、体にはどのような影響があるの?」など、糖尿病とED(勃起障害)の関係について気になっている人もいるのではないでしょうか。糖尿病は、血糖値が高い状態が続くことで、全身の血管や神経などに影響を及ぼし、さまざまな合併症につながることがあります。今回は、糖尿病の基本的な仕組みや症状、代表的な合併症、EDとの関係、治療について、小内医院院長の小内先生に聞きました。
※2026年8月取材。
監修医師:
小内 裕(小内医院)
2006年埼玉医科大学医学部卒業。その後、埼玉医科大学病院、藤田医科大学ばんたね病院での研修を経て、中部ろうさい病院糖尿病・内分泌内科医長、織本病院(現・きよせ旭が丘記念病院)メディカルセンター長などを歴任。2017年に小内医院副院長、2018年に院長就任。一般社団法人日本内科学会認定医・総合内科専門医、一般社団法人日本糖尿病学会専門医、一般社団法人日本肥満学会肥満症専門医、一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会プライマリ・ケア認定医・指導医、一般社団法人日本地域医療学会地域総合診療専門医・指導医。
糖尿病とは? 仕組みや症状を医師が解説
編集部
糖尿病について教えてください。
小内先生
糖尿病は、血液中のブドウ糖を細胞に取り込むために必要な「インスリン」というホルモンの働きが不足し、血糖値が高い状態が続く病気です。インスリンの分泌が不足したり、十分に作用しなくなったりすることで、血液中にブドウ糖が増えてしまいます。こうした状態が長く続くと、全身の血管や神経などに少しずつ負担がかかっていきます。
編集部
なぜ、インスリンが十分に働かなくなってしまうのでしょうか?
小内先生
糖尿病にはいくつかのタイプがあります。日本人に多い2型糖尿病では、遺伝的な要因に加えて、食生活や運動不足、肥満などさまざまな要因が重なり、インスリンが分泌されにくくなったり、効きにくくなったりします。一方、1型糖尿病のように、インスリンを作る細胞が壊されることで発症するタイプもあり、原因や治療法はそれぞれ異なります。
編集部
糖尿病になると、どのような症状が表れますか?
小内先生
初期の糖尿病では、自覚症状がほとんどないことも少なくありません。血糖値が高くなると、のどが渇く、水分を多く取る、尿の量や回数が増える、疲れやすい、体重が減るといった症状が表れることがあります。ただ、自覚症状がないまま進行することもあるため、健康診断などで血糖値の異常を指摘された場合には、そのままにしないことが大切です。
編集部
自覚症状がないまま放置すると、どうなるのでしょうか?
小内先生
血糖値が高い状態が長期間続くと、全身の血管や神経が傷つき、さまざまな合併症につながる可能性があります。糖尿病は「症状がないから大丈夫」という病気ではありません。合併症が進んでから初めて異変に気付くこともあるため、早い段階から適切に血糖値を管理することが重要です。
糖尿病で注意したい3大合併症とは?
編集部
糖尿病には、どのような合併症がありますか?
小内先生
代表的なものとして、糖尿病性神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病性腎症があります。これらは糖尿病の「3大合併症」と呼ばれています。また、糖尿病では動脈硬化も進みやすくなるため、心筋梗塞や脳梗塞などにも注意が必要です。合併症は一度進行すると元の状態に戻すことが難しいものもあるため、予防と早期発見が大切です。
編集部
糖尿病性神経障害では、どのような症状が表れるのでしょうか?
小内先生
高血糖によって神経が障害され、足先や手先のしびれ、痛み、感覚の鈍さなどが表れることがあります。また、自律神経に影響すると、立ちくらみや胃腸の不調、発汗の異常など、さまざまな症状につながることもあります。特に、足の感覚が鈍くなると、傷ややけどに気付きにくくなるため注意が必要です。
編集部
糖尿病網膜症についても教えてください。
小内先生
糖尿病網膜症は、目の奥にある網膜の細い血管が高血糖によって傷つくことで起こる合併症です。初期には自覚症状がほとんどないこともありますが、進行すると視力低下などにつながる可能性があります。自覚症状だけで判断せず、糖尿病と診断されたら定期的に眼科で検査を受けることが大切です。
編集部
糖尿病性腎症では、どのような問題が起こるのでしょうか?
小内先生
腎臓には、血液から老廃物などをろ過して尿として排出する働きがあります。高血糖が続くと腎臓の細い血管が傷つき、少しずつ腎機能が低下していくことがあります。初期にはほとんど症状がありませんが、進行するとむくみなどが表れ、重症化すると透析治療が必要になる場合もあります。そのため、定期的な尿検査や血液検査による確認が重要です。
糖尿病がEDにつながることも? 治療と予防のポイントは?
編集部
ほかに、気を付けるべき症状はありますか?
小内先生
男性では、不妊の原因の一つでもあるEDが糖尿病に伴って表れることがあります。性機能には血流や神経の働きが深く関わっています。高血糖の状態が続いて血管や神経に障害が生じると、その働きにも影響することがあります。ただし、EDには加齢やストレス、生活習慣、ほかの病気などさまざまな原因がありますので、気になる場合は糖尿病を含めて原因を確認することが大切です。
編集部
こうした合併症を防ぐためには、どのような治療が必要なのでしょうか?
小内先生
糖尿病の治療では、食事療法と運動療法が基本になります。それだけで十分な血糖管理が難しい場合には、内服薬や注射薬などによる薬物療法を行います。軽度の段階で早く対応することで良好な状態を保てるケースもありますが、基本的には継続して管理していくことが必要な病気です。
編集部
治療を続ける上で、特に大切なことを教えてください。
小内先生
一時的に血糖値を下げるのではなく、適切な血糖管理を長く続けることが大切です。食事や運動、薬による治療をその人の状態に合わせて継続しながら、定期的に検査を受け、合併症が起きていないかも確認します。血糖値だけでなく、血圧や脂質、体重なども含めて管理することが、将来的な合併症の予防につながります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
小内先生
EDを「恥ずかしいこと」「年齢のせい」と考え、一人で悩んでしまう患者さんは少なくありません。しかし、糖尿病によるEDは治療の選択肢がある病態であり、ときには心血管疾患のサインでもあります。恥ずかしさや偏見(スティグマ)が受診を遅らせてしまうことが問題です。医療者は患者さんが安心して相談できる環境を作り、社会全体も正しい理解を深めることが大切です。
編集部まとめ
糖尿病は、自覚症状が乏しいまま進行し、神経や目、腎臓など全身にさまざまな合併症を引き起こす可能性があります。EDもその一つとして表れることがありますが、大切なのはEDだけに目を向けるのではなく、糖尿病そのものを適切に管理することです。健康診断で血糖値の異常を指摘された人や、気になる症状がある人は、早めに医療機関へ相談しましょう。
参考文献
日本糖尿病学会・JADEC(日本糖尿病協会)合同アドボカシー活動
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