「無政府資本主義者」ピーター・ティールがアルゼンチンを「国家規模の実証実験場」にして企んでいること
前編記事『「暗黒啓蒙の思想家」カーティス・ヤーヴィンを財政支援したピーター・ティールに心酔するトランプ政権幹部の面々』に続いて、暗黒啓蒙の思想家、カーティス・ヤーヴィン氏と関係が深いピーター・ティール氏の最新の試みを紹介する。
トランプは王様のような君主になりたい
続いて、ヤーヴィン氏の近著『ネオ君主論-民主主義の敗北とテック右派の時代』(PHP研究所・定価2090円)から興味深い記述をピックアップしたい。
《トランプは行政官ではないし、彼は物事を把握するのが得意ではない。彼はあらゆることをやっているが、優秀な参謀を雇っている。彼は、FDR(フランクリン・ルーズベルト)がそうだったように、王様のような君主になりたいと思っている。FDRはエリート層に支えられていたが、トランプは、他国から侵略してきた「蛮族の王様」のように見なされている》
《かつて(PayPal創業者の)ピーター・ティールから投資を受けていたのは事実だ。あえてピーターについて言うなら、彼はナード(nerd=極度に知的で、細部や理論に異常にこだわり、実務や人情より整合性・原理を重視する。冷たい・非情に見えることもある)だ。ナードという性質は欠点にならず、むしろ理想的に機能している稀有なタイプの知性だ》
そう、筆者はティール氏の最近の行動に強い関心を抱いている。それは、南米アルゼンチンとの関係である。
20億円の邸宅を購入
今年の4月23日、首都ブエノスアイレスでハビエル・ミレイ大統領と大統領府で約1時間会談した。ミレイ氏は会談後、「ティール氏はアナルコ・キャピタリスト(無政府資本主義者)だ。アナルコ・キャピタリストが大統領をやるとどういう事になるのか非常に関心を持っている」と述べた。
そしてティール氏は1200万ドル(約20億円)で市郊外に超高級邸宅を購入し、家族を伴って一時的に生活拠点を移した。
それだけではない。8月には同国のシェール開発有力企業の株式約1%を約7600万ドルで取得している。同国はエネルギー・鉱物資源、土地、水、データセンター、AIインフラという21世紀の戦略資産が大量に存在する。
しかもミレイ政権は、規制撤廃、外資誘致、税制優遇を猛烈なスピードで進めている。チリとの国境で進む銅山開発だけでも200億ドル(約3.2兆円)超の投資余地があるとされる。
ティール氏にとって理想的なのは成熟した先進国ではなく、巨大な実物資産を持っているのに、制度が再設計途上にあることだ。要は、ミレイ政権が「国家規模の実証実験場」に映るのだろう。トランプ後を見据えた「プランB」作戦に踏み切るのではないか。
【はじめから読む】「暗黒啓蒙の思想家」カーティス・ヤーヴィンを財政支援したピーター・ティールに心酔するトランプ政権幹部の面々
