【Mr.tsubaking】「なぜ、こんな場所に?」ポツンと1軒だけで営業するラーメン屋台の40年超の歴史

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屋台文化が色濃く残る街、福岡。屋台がズラリと並ぶ様子は、同地を象徴する景色のひとつだ。

現在、福岡市の屋台は100軒以上あり、その約95%は天神・中洲・長浜のエリアに集中している。残る屋台も博多駅前など、比較的人通りの多い場所での営業だ。

そんな中、天神や博多駅からも徒歩25分以上離れ、駅前でもない場所にポツンと1軒だけで営業する屋台がある。

なぜ、こんなところで営業しているのか。どんな客層がくるのか。店主を取材した。

「なぜこんな場所で?」博多駅から2km、ポツンと1軒だけの屋台

博多駅から、海へ向かって大博通りを2km以上進んだ先に、ポツンと1軒だけで営業する屋台「純ちゃん」がある。

周辺は大きなホールや国際展示場がある埋立地で、コンサートなどの公演がない夜は人通りもまばら。そうなると浮かんでくる、「なぜこんな場所で?」という疑問を、店主の小嶋純二氏(69歳)にぶつけると、「金がなかっただけたい!」と笑いながら答える。

中洲の屋台で数年働いて、独立しようとした40年以上前は、天神やら都心で屋台をやろうとしたら権利で800万円とか1000万円を取られた。だから、金のかからんここにしたとよ」(店主・小嶋純二氏、以下同じ)

屋台の営業には、道路使用許可を含むいくつかの権利をクリアする必要があるが、かつてはこの営業権の高額取引が問題視されていた。

つまり「純ちゃん」がこの場所にあるのは、店主があえて人の少ない場所を選んだからではない。40年以上前、都心で屋台を始めるために必要だった高額な費用を払えなかったことが、その始まりだった。

客に包丁を投げられた…40年以上続く屋台「純ちゃん」の歴史

そうして小嶋氏が屋台「純ちゃん」をスタートさせたのが1982年。

現在は、コンサートホールや大型展示場などが立ち並び、ベイエリアらしい街並みだが、開業当時の様子はかなり違っていた。

昔、この辺は海の男(漁師など)ばっかりで荒くれ者が多かった。怒ったお客に、包丁を投げつけられたことも1回じゃないしね。前掛けを外されて首を絞められたとこもあったね

屋台は、戦後の闇市にルーツを持つが、当時はまだそんな匂いが色濃く残っていたようだ。

今、裏はオフィスのビルになっとるけど、昔は平屋の住宅でね。仕込みをしよったら、泥棒が入っていくのが見えて、引っ張り出したこともあるよ(笑)

筆者が訪れた日は、店主が言うかつての荒れた雰囲気は皆無で、常連だという裏のビルに入る会社に勤める男性が、部下を連れて楽しそうに飲んでいた。

昭和から平成、そして令和に至るまで、街とともに歩み続けてきたのが「純ちゃん」なのだ。

福岡へ旅行する際、屋台を観光のひとつとして選ぶ人も多いだろう。しかし、検索してヒットするのは天神・中洲・長浜のメインエリアの屋台ばかり。

一方で、福岡市民の中には「屋台は観光客が行く場所」というイメージを持つ人もいる。それは、観光化された屋台は値段が高く行列にもなるためだ。

そうなると、この場所で営業をしていて売上がきちんとあがるのかが気になるが。

やっぱり、地元の人やら近所で働いている人に支えられとるよね。ただ、近くでイベントがある時はどうやって見つけてきたのか、インバウンドや観光のお客さんも来て、半々くらいになるかな

「来年で閉める」年間55万円の負担、40年以上続いた屋台の灯が消える

2013年、福岡市は「福岡のにぎわいや人々の交流の場を創出すること」などを目的とした、福岡市屋台基本条例を制定・施行。それまで以上に、県外や国外から多くの人が訪れるようになり、観光資源としては成長しているといえるだろう。そんな中「純ちゃん」は、観光化の外にありながら地元の人々に支えられながら営業を続けているのだ。

「純ちゃん」のメニュー表には、ラーメン850円・アルコール類が380円~・焼鳥170円~と、常連として通う層にもありがたい価格が並んでいるのも、地域密着屋台であることがうかがえる点である。

来年、開業45周年を迎える「純ちゃん」。めでたい年になりますねと言うと、意外な答えが返ってきた。

来年で閉めようと思っとるんよ。今年でいうと、うちは福岡市に年間約55万円払っとるんだけど、これが毎年7万円くらい値上がりしていくんよ。これだと、もう利益をあげるのもなかなか難しい。息子もおるけど、どんどん大変になるから継がせないことにした

福岡市は屋台を観光資源として積極的にPRし、衛生的な運営のために上下水道の整備なども進めてきた。一方で、屋台を続ける側には、こうした負担も重くのしかかっているのだ。

40年以上にわたって街の片隅で営業を続けてきた屋台が、いま閉店を決めた。観光資源として注目を集める福岡の屋台の陰で、こうした「昔ながらの屋台」が生き残ることの難しさも浮かび上がっている。

後編記事『「来年に閉店予定」…40年以上営業を続けてきた「ポツンと1軒の屋台」の実力』では、地元客に長年愛されてきたラーメンを実食し、人気の秘密を探る。

【つづきを読む】「来年に閉店予定」…40年以上営業を続けてきた「ポツンと1軒の屋台」の実力