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18歳未満の少女にみだらな行為をした疑いで逮捕された男性が、検察に身柄を送られる際、留置場から出るのを拒否した──。

報道によると、逮捕されたのは、愛媛県職員の男性。

テレビ愛媛によると、今年6月、SNSで知り合った18歳未満の少女に淫らな行為をした疑いで8月25日に逮捕された。「相手は19歳と思っていた。性行為はしていない」などと否認しているという。

また同局によると、男性は8月26日に身柄を検察に送られる予定だったものの、留置場から出るのを拒否。警察は身柄の送致を断念して書類送検に切り替える対応をとったという。

一見すると異例とも思えるが、今年に入って別の事件でも同様のケースが報じられている。

そもそも被疑者は身柄の送致を拒むことができるのか。拒み続ければ、釈放されることはあるのか。そして、あえて拒否する狙いはどこにあるのか。

●道頓堀の死傷事件でも「留置場から出ない」

原則として、逮捕された被疑者について、警察は身体を拘束した時から48時間以内に、書類や証拠物とともに検察官に送致する手続きをとらなければならない(刑事訴訟法203条1項)。

この時間内に送致の手続きをしなければ、被疑者は直ちに釈放しなければならないとされている(同条5項)。

今回のような被疑者が留置場を出ることを拒んだケースは、今年に入ってほかにも報じられている。

読売新聞オンラインによると、大阪・道頓堀で17歳の少年3人が刃物で刺されて死傷した事件で、大阪府警は2月17日、殺人容疑で逮捕された男性を送検した。男性が留置場から出るのを拒んだため、関係書類のみを大阪地検に送ったという。

被疑者はなぜ、こうした行動をとるのか。東京地検で検事をつとめた経験があり、刑事事件に詳しい西山晴基弁護士に聞いた。

●「留置場から出ない」は可能なのか

──まず手続きについて教えてください。逮捕された被疑者が「留置場から出ない」と身柄の送致を拒むことは、法的に許されるのでしょうか。

事実上、被疑者が留置場から出ることを拒み、検察庁への同行を拒否することは可能です。

そもそも「送致」とは、警察が捜査した事件を検察官に引き継ぐ手続きです。逮捕されている被疑者は通常、事件記録とともに検察庁へ連れて行かれ、検察官から弁解を聞かれます。

ただし、被疑者には黙秘権があり、弁解することを強制されるわけではありません。そのため、留置場から出ること自体を拒んでいる被疑者を、実力を用いてまで検察庁へ連れて行く必要性は、必ずしも高くありません。

また、検察庁への同行を拒否したからといって、身体拘束が直ちに終了するわけではありません。検察官が制限時間内に勾留を請求し、裁判官が認めれば、身体拘束は続きます。

●警察が実力で連れ出すことは?

──警察が実力で連れ出すことはできないのでしょうか。

実力行使も無制限に許されるわけではありません。

身体をつかむなどの有形力の行使は、必要性や相当性を超えれば、違法な権利侵害と評価される可能性があります。

したがって、身柄を検察庁に連れて行かなくても手続きを進められるのであれば、警察としても無理に連れ出す必要性は乏しいといえます。

●なぜ拒む?「完全黙秘」の延長線か

──一番の疑問なのですが、あえて検察庁への同行を拒む狙いはどこにあるのでしょうか。西山弁護士がこの被疑者の弁護人であれば、こうした対応を勧めますか。

考えられる狙いの一つは、捜査機関に対して一切供述しない、いわゆる「完全黙秘」を徹底することです。

検察庁へ連れて行かれる目的の一つは、検察官による弁解録取ですが、これについても被疑者には黙秘権があります。

そのため、「弁護人と十分に相談するまでは何も話さない」「捜査段階では一切供述しない」という方針であれば、検察庁への同行自体を拒むことも、その延長線上にあると考えられます。

ただし、私が弁護人であれば、すべての事件でこの対応を勧めるわけではありません。

無罪を主張し、不用意な供述を避ける必要性が高い事件であれば、黙秘を徹底することには意味があります。

一方、事実関係を認め、反省を示して早期の身柄解放を目指す事件では、手続きに全面的に応じない態度が、逃亡や罪証隠滅のおそれといった身柄拘束の要件を判断する際に、不利な事情として受け止められる可能性もあります。

同行を拒むべきかどうかは、事件の内容や証拠関係、最終的な弁護方針によって判断することになります。

●元検事「留置場まで出向いたが、出てこなかった」

──西山弁護士が検察官だったころ、検察庁に来ることを拒んだ被疑者はいましたか。

私が検事をしていたときにも、留置場から出ることを拒んだ被疑者はいました。

その際は、私自身が被疑者の留置されている警察署まで出向きましたが、それでも本人は留置場から出てきませんでした。

このような場合、検察官としては被疑者本人の供述に頼ることができないため、物証などの客観的証拠や、被害者・目撃者など第三者の供述を積み重ね、被疑者の供述がなくても犯罪事実を立証できるよう証拠を固めていくことになります。

──量刑には影響しますか。

公判での量刑については、拒否したことだけで大きく刑が重くなるとはいえません。

事実を認めている事件では、反省の有無を判断する一つの事情となる可能性はありますが、黙秘権の行使そのものを不利益に扱うことには慎重であるべきです。

そのため、無罪を争う事件では、捜査段階から黙秘や取り調べ拒否を徹底するよう助言する刑事弁護人もいるわけです。

【取材協力弁護士】
西山 晴基(にしやま・はるき)弁護士
東京地検を退官後、レイ法律事務所に入所。検察官として、東京地検・さいたま地検・福岡地検といった大規模検察庁において、殺人・強盗致死・恐喝等の強行犯事件、強制性交等致死、強制わいせつ致傷、児童福祉法違反、公然わいせつ、盗撮、児童買春等の性犯罪事件、詐欺、業務上横領、特別背任等の経済犯罪事件、脱税事件等数多く経験し、捜査機関や刑事裁判官の考え方を熟知。シニアライフカウンセラーの資格も有する。現在は、弁護士として、刑事分野、芸能・エンターテインメント分野の案件を専門に数多くの事件を扱う。
事務所名:レイ法律事務所
事務所URL:https://rei-law.com/