近年、全国でクマ被害が増加しており、被害を軽減しようと新たな対策グッズが続々と登場している。そんな中、開発に5年をかけた「執念の発明」があった。

【映像】クマ撃退用ランチャー、社長自ら実験台に(動画あり)

 愛媛県今治市で防犯グッズなどを製造・販売する、創業48年の会社「スナミヤ」の砂見明社長は「商品化できないと、諦めかけていた」と語る。

 スナミヤは防犯用のカラーボールを飛ばす「一発チェッカー」という装置を手掛けてきた。一発チェッカーはガス圧とバネの力で発射するため、手で投げるよりも命中精度が高くなるが、社長はこれをクマ用に応用できないものかと考えていた。

 きっかけは5年前、ある相談からだった。「5年前に害獣忌避剤を販売する会社から。その方もクマよけスプレーを販売していて、スプレーの場合は風の向きによっては使えない。『一発チェッカー』は風に影響されないということで『(クマ用を)開発できないか』と言ってきた」(砂見社長、以下同)

 ボールの中にクマが嫌がる成分を入れて、一発ランチャーで放ち撃退。これなら風向きや距離の問題も解消できる。アイデアはよかったが、開発は命がけだった。

 まず取り掛かったのはボールの中身の調合だ。クマが嫌がる発酵させたヒトデエキスに加え、トウガラシ由来のカプサイシンを配合した。

「カプサイシンも濃度による。いろいろ研究したら濃度2パーセントあれば大丈夫と。2.6パーセントの濃度のカプサイシンを使っている。ふたを開けるだけでくしゃみと涙が出る。ボールに薬液を詰めるのが命がけ」

 問題はこのボールの強度だった。遠くのクマに当てるためには、発射時の衝撃に耐える必要がある。ランチャーを放った瞬間に割れたら大惨事だが、当たった瞬間に割れなければ意味がない。

 それらを解消するボールの硬さは、どれが正解なのか。砂見社長は驚きの行動に出た。自分に向け発射し、体で受け止める。納得できるまで1年半をかけて実験を繰り返した。70歳を超える体はあざだらけとなった。

 それだけではない。真夏の車内に置いてもボールは割れないのかと実際に1年間、車内や空き地に置いて確かめた。

 開発から3年が経った。発射時の初速は時速80キロから100キロで、風の影響も少なく、射程距離は約15メートル。そして命中すればボールは割れると、十分な性能だったが、砂見社長はまだ売り出さなかった。

 砂見社長は「人命がかかわること。『効果なかった』ではすまない、製造者として。実際に実験するクマがいなかった」と語る。本物のクマで試さなければ世には出せないと、牧場や動物園に協力を依頼するも「クマへの虐待になるので」と断られ続けてしまう。

 そんな中、北海道で配達員がクマに襲われるニュースが入った。ニュースを観た息子に「親父、もう1回商品化を目指して頑張らな、いかんのやないんか」と言葉をかけられると、砂見社長の職人魂に火がともった。

 実験ができるクマを探し続けた結果、ようやく協力してくれる施設と出会い、今年2月に実験を実施。匂いを嗅いだクマは檻の中で激しく暴れた。クマの飼育員も初めて見る姿だったという。

 こうして今年の5月、ついに販売にこぎつけた。商品名は「クマ撃退用ランチャー 金太郎」で、クマを投げ飛ばす童話の金太郎から命名した。値段は27,500円(税込)だ。

 砂見社長は「見た目がおもちゃみたいなので『大丈夫か』という先入観がある。実際に撃ったら素晴らしい発射機だから納得してくれる。自衛隊も興味を持っているようだ。来週、試験的に使ってもらう」と語った。

(『ABEMA的ニュースショー』より)