NASA(アメリカ航空宇宙局)は2026年8月25日付で、天文衛星「Pandora(パンドラ)」が本格的な観測を開始したと発表しました。


パンドラは低コスト・短期開発を掲げるNASAの「天体物理学パイオニア(Astrophysics Pioneers)プログラム」のもとで開発された最初の衛星で、2026年1月に打ち上げられました。太陽系外惑星の大気組成を調べるために、1年間の主要ミッション期間中に少なくとも20個の太陽系外惑星とその主星を集中的に観測する予定です。


【▲ NASAの天文衛星「Pandora(パンドラ)」のイメージ図(Credit: NASA's Goddard Space Flight Center)】

主星の光は惑星の大気を調べる助けと妨げになる?

太陽系外惑星を観測する手法のひとつに「トランジット法」というものがあります。観測者から見て惑星が主星の手前を横切る現象「トランジット」が起こると、主星の光は惑星に隠されたぶんだけわずかに減光します。この様子を繰り返し観測することで、惑星の公転周期やサイズを知ることができます。


また、惑星に大気が存在する場合と存在しない場合とでは主星の光度曲線(時間の経過にあわせて変化する天体の光度を示した曲線)が異なることを利用して、惑星の大気の有無を知ることができます。


さらに、スペクトル(電磁波の波長ごとの強さの分布)を得る分光観測を行い、惑星の大気に含まれる物質が吸収した光の波長を特定することで、大気の組成を調べることもできます。今の技術では直接観測できない太陽系外惑星の大気に含まれる物質を、地球やその周辺から調べることができるのです。


ただ、この手法には主星である恒星そのものの性質に起因する問題がつきまといます。恒星の表面は一様ではなく、周囲よりも低温で暗い黒点や、逆に高温で明るい白斑と呼ばれる領域が存在しており、その位置や大きさは時間とともに変化します。これらの模様が生み出す明るさの変化が、惑星の大気に由来する変化と混ざり合ってしまうのです。


パンドラはウェッブ宇宙望遠鏡の“小さな助手”

そこでパンドラのミッションでは、少なくとも20個の太陽系外惑星とその主星を1回あたり24時間、合計10回ずつ観測します。得られた観測データをジェームズ・ウェッブ(James Webb)宇宙望遠鏡の観測データと組み合わせることで、恒星の性質を明らかにしつつ、恒星と惑星のそれぞれに由来する変化を分離することが目的です。


ウェッブ宇宙望遠鏡は数多くの研究のために様々な天体を観測しているので、特定の太陽系外惑星だけを長時間観測することは難しいのが実情です。言ってみれば、パンドラがウェッブ宇宙望遠鏡の“助手”となり、長時間の観測という役割を担うことで、科学的に高い成果を得ようというわけです。


その鍵となるのが、パンドラに搭載された口径約45cmの望遠鏡です。ウェッブ宇宙望遠鏡に搭載された近赤外線検出器の予備が転用されていて、可視光線と近赤外線で長時間の集中観測を行い、観測データを取得します。


パンドラのミッションで特に期待されているのが、水素や水を主成分とする大気の発見です。重量325kgという小型衛星ながらも、パンドラのミッションを通じて得られた成果はウェッブ宇宙望遠鏡の観測データをより正確に読み解く手助けになるだけでなく、生命が存在し得る環境を持つ惑星に対する将来の観測計画にも役立てられるということです。


【▲ 打ち上げ前の2025年5月に撮影されたNASAの天文衛星「Pandora(パンドラ)」(Credit: NASA/BCT)】

 


文/ソラノサキ 編集/sorae編集部


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