ホワイトソックスの村上宗隆と(ニューヨーク・メッツの公式Instagramより)

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クローザー失格?

“クローザー”千賀滉大(33)が、現地時間8月23日のシカゴ・ホワイトソックス戦でサヨナラホームランを浴び、敗戦投手になった。

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 同点で迎えた9回裏、千賀の投じた96マイル(約154.5キロ)のフォーシームはセンターバックスクリーン脇のフェンス上部を跳ねて、そのままスタンドに消えた。千賀は呆然とした表情で打球の消えた方向を見つめていたが、MLB公式サイトのニュースは追い討ちを掛けるように、

「本日午後、メッツは千賀をテストした。クローザーとしてはよくあることだが、2日連続登板は彼の(メジャーリーグでの)キャリアでは初めてのこと。結果はサヨナラ本塁打だった」

ホワイトソックスの村上宗隆と(ニューヨーク・メッツの公式Instagramより)

 と、“クローザー失格”を告げていた。

「千賀はこれで9敗目。この時点でのトータル成績は0勝9敗、防御率は7.79です」(現地記者)

 苦しいシーズンになっていることは間違いない。しかし、前日の同カードで9回裏を零封したときは、米ニューヨークの野球メディア「Rising Apple」は「なぜ、もっと早く決断しなかったんだ?」と千賀を称賛していた。

 千賀は福岡ソフトバンクホークス時代にもリリーバーを経験している。1球の怖さも分かっているはずだ。気持ちを切り替えて次に臨むしか道はないが、リリーフへの配置換えには、彼の置かれた苦しい立場も窺えた。

「千賀にとってリリーフ転向は、決して本意ではなかったようです」(前出・同)

 リリーフ転向が決まったのは、8月に入ってから。当初は中継ぎで、8月10日のアトランタ・ブレーブス戦からクローザーを任された。ホワイトソックス戦で負けが付くまでのクローザー登板5試合の防御率は1.80だった。

「辛辣」で知られるニューヨークメディアも、千賀のクローザー適性を認めていたが、負け投手となった日の前日登板である22日の試合後、千賀は「自身のリリーフ登板」について、こう語っていた。

「それ(先発へのこだわり)がなくなってしまったら、もう戻れないというか、なかなか難しいものになってしまう。自分の灯を絶やさないようにしたいと思います」

あくまで先発復帰

 さらにレギュラーシーズンも残り約1カ月となり、今後の調整について聞かれると、

「いや、シーズンだけじゃなくて。やっぱり、今後の野球生活を見たときに自分がどれだけ高めていけるかというところを思いながら、日々過ごしているかなと思います。どうしたら自分がもう少し良くなって、この舞台で活躍していけるかを見て生活している。そんなに目先だけは追わない」

 クローザーとして今シーズンを乗り切るのではなく、先発登板もできるように調整していくという。自身がクローザーにまわらなければならないチーム事情も理解しているが、そこで見せたリリーフの適性を称賛する声について、千賀は喜んでいなかったのである。

 そんな千賀の胸中を裏付ける情報も聞かれた。

「メッツのクローザーは、新加入のデビン・ウィリアムズ(31)です。彼がここまで挙げた16セーブはナ・リーグの9位タイですが、防御率は4.66。WHIP(1イニングあたり何人の走者を出すか)も1.66とあまり良くない数値です。千賀が中継ぎからクローザーに配置換えされたのは、このウィリアムズが右肩痛で故障者リスト(IL)入りしたため。シーズン終了前に復帰してくるとの情報も聞かれました」(米国人ライター)

 千賀が現地メディアの囲み会見で先発復帰の意思を見せたのは、ウィリアムズのチーム再合流を知っていたからだろう。また、上述したメッツ専門メディアでもある「Rising Apple」が報じた「なぜ、もっと早く決断しなかったんだ?」との報道は、千賀個人への称賛ではなかったようだ。

「レギュラーシーズン前半、ショーン・マナイア(34)にクローザーを任せていました。マナイアとウィリアムズが、ゲーム展開によってセットアッパーとクローザーを分担しているような形でした。そのマナイアを先発に戻し、彼と入れ替わってリリーフに配置換えされたのが千賀です。ウィリアムズにしても、クローザーとしての復活を目指している途中であって、メッツは先発、救援ともに不安定でした。マナイアが先発で結果を出し、今季、勝ち星のない千賀もクローザーでようやくチームの勝利に貢献してくれるようになった、という意味です」(前出・同)

 また、「なぜ、もっと早く」の意味には6月26日に解任されたカルロス・メンドーサ前監督(46)のことも含まれていたという。

 今季のメッツは4月に12連敗を喫するなど最悪の状態で、今もナ・リーグ東地区の最下位に苦しんでいる。アンディ・グリーン監督代行(49)がチームを建て直すのに約1ヶ月を要し、今の形になった。球団が4月の時点で監督解任に踏み切っていれば、9月は“消化試合”にならなかった、と。球団の専門メディアがここまで皮肉ったのだから、今季はチーム状況が本当に酷かったのだろう。

「数年前、メッツは金満補強に走りました。しかし、勝利には直結せず、その当時に集められた有名選手の大半はチームを去っています。千賀は5年契約の4年目ですが、金満補強の時代に獲得した投手なので、ファンの風当たりも強いんです」(前出・同)

投球フォームが……

 リリーフへの配置換えにしてもすんなりと決まったものではなかったという。グリーン監督代行はマイナーでの再調整を勧めたが、千賀がそれに抵抗した。過去、故障などでマイナー登板したこともあったが、そこでよほどイヤな思いをしたらしく、いつ登板するか分からない試合中盤でのリリーフ役を受け入れた。「暫定」とはいえ、クローザーを任されるまでになったのだから、その努力を認める声も聞かれた。しかし、

「昨季後半、球速のダウンやフォークボールのキレの悪さを指摘されたこともありました。年齢的な衰えを指摘する声も当時はありましたが、今季はそうではありません。投球フォームのバランスが微妙に崩れているのではないかとの指摘も聞かれました」(前出・現地記者)

 昨年6月、千賀はハムストリングを痛めたが、1ヶ月で戻ってきた。しかし、好投を続けていた前半戦とはまるで別人で、四球を簡単に出して適時打を食らう失敗を繰り返していた。マイナー降格を食らい、そのままシーズンを終えてしまった。千賀の勝ち星はハムストリングを痛めた昨年6月12日まで遡る。

 メッツの本拠地「シティ・フィールド」では、クローザー・千賀が登場する際、マイケル・ジャクソンの「Beat It」を流していた。スタンドはノリノリだった。しかし、先発でやり直したい千賀にとって、観客の歓声や拍手は、他人事のように聞こえたのかもしれない。

デイリー新潮編集部