台北市で自らの出自を語る劉俊良さん。ルーツを周囲に明かせるようになってから、母親との関係は少し改善したという(7月22日)

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 台湾で、台湾人に嫁いだ中国人妻やその子女ら「新移民」と呼ばれる人々に一部でいわれのない批判が向けられている。

 中国が武力による威嚇など統一攻勢を強める中、その支持者とみなされやすい彼ら個人が感じる疎外感は、多様性社会をモットーとする与党・民進党政権に対する厳しい問いかけとなる。(台北 園田将嗣、写真も)

 中国重慶市出身の母親を持つ劉俊良さん(27)は、大学卒業まで出自を極力隠してきた。小学生の頃から、同級生から母親に好奇の目を向けられた。いとこは中国で暮らした経験があったため、一緒に通った台湾の小・中学校で「村八分」の扱いを受けた。いとこと仲良くすれば「同じ扱いを受ける」と恐れ、疎遠になった。

 母親と出自を巡り言い争いになって自宅から遠方の大学に進み、社会学を専攻して台湾の人口約2300万人の2・7%(約62万人)を占める新移民について学んだ。中国や東南アジア出身の新移民の子女との交流で「自分への嫌悪感」が薄れ、子女でつくる新移民の団体の一員になった。

 頼清徳(ライチンドォー)政権は昨年4月、一部の中国人妻らと子女に対し、中国戸籍の抹消を示す証明書を提出するよう求めた。当時、中国人妻ら数人がSNSへの投稿で中国による武力統一を支持したことが波紋を呼び、統一工作との見方が強まっていた。習近平(シージンピン)政権が台湾社会への浸透工作を強める中、戸籍抹消の要求は「安全保障上の考慮」(頼総統)による対抗措置の一環だった。

 劉さんらが記者会見で、中国人妻や子女の境遇を訴えると、SNSには「中国移民2世を狩れ」と過激な言葉が並んだ。劉さんは「中国にルーツがある人を疑って忠誠を求め、身分を明かすことを迫る風潮がある。私は喜んで(台湾で)兵役に就く。脅威ではない」とため息をつく。

 中国海南省出身の母を持つ女性(25)は、出自を隠さずにきた。昨年、SNSで、中国にルーツを持つ人びとの台湾での立場について議論を呼びかけると、「中国人妻らは台湾をいじめてきた敵国の出身。信じられるか」と非難を浴び、生まれ育った台湾社会への信頼は覆された。「社会は私たちを敵とみなし、排除したいのか」と、生きづらさを感じるようになった。

 民進党は党綱領で、先住民や新移民も含めた各族群の共生を掲げる。しかし、現在の台湾社会は、日常的にさらされる中国からの統一圧力の影響で、中国人妻らの排除を強める傾向が指摘される。

 中国四川省出身のトウ万華さん(50)は約3年半前、台湾東部・花蓮の村長に当選した。約30年前に出会った台湾人ビジネスマンの夫(65)の故郷で、地域のために働くことは「私にぴったりの仕事だった」。

 トウさんは公職者として、頼政権から中国の国籍抹消を求められ、村長を解任された。トウさんが中国に問い合わせても、「台湾の独立を認めることになる」と拒否されたという。

 「敵意のらせんが起きている」。民進党創設メンバーの洪奇昌氏はこう言って、分断、対立、衝突が深まる台湾社会の現状を案じた。「台湾の主体を作り上げるのは排他主義ではない」と、相互理解を呼びかける。

 頼政権当局者は「中国の社会への浸透は、表面上からはうかがい知れない深刻さがある」と指摘し、厳しい対策の必要性を訴える。だが、頼政権が中国への対抗策を強めれば強めるほど、民進党の理念から遠ざかるというジレンマがあるのも事実だ。

 ◆族群=言語歴史的背景などが異なる人々のコミュニティーを指す。台湾社会は時代ごとに外部からの移民を受け入れ、異なる族群で構成されている。