来年秋の「4期目」続投はあるのか(EPA=時事)

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 2012年以来続く中国の習近平体制。2027年秋の中国共産党大会で続投が決まれば、4期目に突入することになる。国際政治学者の舛添要一氏は、中国国内だけでなく国外まで厳しく言論統制をしようとする習近平政権の動きから、4期目実現の「公算は大きい」と指摘する。中国経済の現状とともに、舛添氏が解説・分析する。

【写真】中国の高度成長の立役者となった故・朱鎔基首相と故・江沢民国家主席ほか

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 中国では、習近平政権が政府批判を封じ込めるなど、厳しい統制を敷いている。言論の自由などの基本的人権は擁護されず、政権に批判的な言動は取り締まられ、逮捕者が出ている。香港でも、かつてのような自由は無くなっている。

 経済についてはAI、ロボットなどの先端産業への投資には力を注いでいるが、不動産不況の影響は大きく、経済成長も鈍化している。国民は節約志向となり、政府が期待する内需の拡大は容易ではない。

 習近平は2012年の党総書記就任以来、汚職との闘いを続けており、側近であっても容赦なく処分している。来年には3期目の任期が切れるが4期目も続投する姿勢を見せている。後継者も決めていない。中国はどこへ向かうのか。

高度成長を実現した元首相・朱鎔基の死

 8月12日、朱鎔基元首相(1928~2026)が死去した。97歳であった。江沢民政権下の1998~2003年に首相(国務院総理)を務め、国有企業改革、金融改革、行政改革に辣腕を振るった。

 首相に就任した1998年3月は、アジア金融危機で中国経済も困難な状態に陥っていた。そこで、国有企業の従業員を大幅に削減し、銀行の不良債権を処理し、中央省庁の統廃合を行った。そのため失業者も増えた。

 既得権益にメスを入れ、宴会も禁止したため、反発も大きかった。また、税制改革によって地方政府の財源を中央政府に移した。財源不足に陥った地方政府は土地(使用権利)の売却を進めたため、乱開発、不動産価格の高騰を招いたと批判された。また、朱鎔基が進めた中央集権化は、今の習近平政権のような強大な中央権力を生むことにつながった。

 朱鎔基はトウ小平が始めた改革開放路線を推進し、中国経済の近代化、高度成長を実現させ、2001年に中国はWTO(世界貿易機関)に加盟する。外国との競争に晒されるという不安を招いたものの、結果的には、輸出拡大によって中国経済が飛躍することに繋がった。

 朱鎔基の改革によって中国経済は強化され、今日のGDP世界第二位の姿があると言ってよい。

「江沢民生誕100周年記念大会」で習近平が語ったこと

 8月17日、中国共産党は江沢民元総書記(1926~2022)の生誕100周年記念大会を北京の人民大会堂で開催した。党の中央委員会政治局常務委員7名全員が出席し、江沢民の業績を称えた。

 このような記念大会が開かれたのは、毛沢東、周恩来、劉少奇、朱徳、トウ小平、陳雲の「6人の開国元老(開国六元老)」以外で初めてである。習近平は「我が国の改革開放と社会主義現代化建設の新たな局面を切り開いた」と、その業績を高く評価した。

 1989年6月の天安門事件に際して江沢民は、上海市のトップ(党委員会書記)として、学生や市民の民主化要求を抑え込んだ。また、改革派の地元紙『世界経済導報』を停刊処分にした。この対応がトウ小平に評価され、失脚した趙紫陽の後任として党総書記に抜擢された。

 生誕100周年記念大会では、このときの対応が改めて高く評価された。習近平は「党中央の方針を断固守り、国家の安定を守った」と称賛し、「江沢民は、国内の重大な政治風波(騒動)に直面する中、国家の独立や尊厳、安定を維持した」と述べている。習近平は、江沢民の政治理念を学ぶ必要があるとし、「国家主権と発展の利益を守らなければならない」と強調した。

 今でも、習近平政権は天安門事件について厳しい報道管制を敷いている。8月21日には、毎年天安門事件を追悼する集会を開催していた活動家2人に、香港の裁判所が香港国家安全維持法(国安法)の国家政権転覆煽動罪で有罪判決を出した。量刑は後日言い渡されるが、最高10年の拘禁刑に処される可能性がある。

 私は2019年に招かれて上海交通大学で授業をしたが、当時の上海はまだ江沢民派のほうが習近平派よりも強く、習近平派に招請された私に冷淡な態度をとる教授も多かった。今では、習近平派の梃子入れが効いているようだ。

今後の政治日程と4期目を狙う習近平

(憲法改正により国家主席の任期制限を撤廃した)習近平は現在3期目であるが、来年秋の党大会で4期目に入るのであろうか。健康状態に異変でも生じないかぎり、そうなる公算が大きそうである。

 今後の政治日程を見ると、9月23日には訪米し、24日にトランプと首脳会談を行い、25日に米国を出国する予定である。

 10月には5中全会(第20期中央委員会第5回全体会議)が開かれる。2027年秋の党大会を控えて、政治局の活動報告や厳格な党内統治の持続的推進に関する重大問題等を中心に議論する。

 その準備として、7月30日、習近平主宰の党中央政治局会議を開催したが、その中で、今後の経済運営については「穏中求進(安定の中で進歩を求める)」という方針を維持することにした。とくに、内需拡大の必要性を強調した。先端技術開発では、AIなどの分野の推進を主張した。対外経済では、サービス貿易の推進、外資の積極的な誘致・活用などを指摘した。さらには、不動産市場の安定にも言及した。

 2027年3月には、日本の国会に当たる全人代が開かれる。同8月には人民解放軍創立100年を迎え、そして、秋の党大会で次期指導部が決まる。

「民族団結法」施行で国外の言論まで締め付けを強化

 7月1日、中国は「民族団結進歩促進法」を施行した。法案は3月に北京で開かれた全人代で可決されたが、中華民族の団結を乱す言動に対して、刑事罰を科す法律である。中国国内のみならず、国外の組織や個人にも法的責任を追及できる規定になっている。

 同法63条には、「国外の組織や個人が、中国に対し、民族の団結と進歩を破壊し分裂を招く行為をした場合、法に基づき法的責任を追及する」とある。この規定は極めて曖昧で、たとえば、習近平政権の政策を批判するだけでも犯罪行為とみなされてしまう可能性がある。これでは、基本的人権である表現の自由は守れない。

 欧州議会など先進民主主義国の諸機関は、この法律の撤回を求めている。習近平政権による言論への締め付けが強化されているのである。

 習近平政権に関する分析は日本や欧米で数多く出版され、習近平の功罪について説明されている。そのような言論活動に対しても、中国当局の厳しい目が注がれることになる。

 さらに、この法律には、新疆ウイグル自治区、チベット自治区、内モンゴル自治区などでの中国化を進める意図もある。また、台湾統一を促進する狙いもあり、規制の強化が懸念される。

 同じような規定は2020年に施行された香港国家安全維持法(国安法)にもあり、香港の本土化への道を加速化させている。香港では、選挙の立候補者は「愛国者」でなければならないとされている。先述したように、習近平政権の方針に反する言動をする者は逮捕されている。因みに、香港は1997年7月1日にイギリスから中国に返還されたが、そのときの「50年間、一国二制度を維持する」という約束は、習近平政権によって反古にされている。

高市首相発言で冷え込んだ日中関係の行方は

 11月には、深センでAPEC首脳会議が行われる。この席で、高市首相は習近平にどう対峙するのであろうか。昨年11月の台湾有事発言以来、日中関係は冷え切ったままである。習近平のほうからは、関係改善を呼びかけるインセンティブはない。彼が待っているのは、高市政権の崩壊である。

 悪化した日中関係は、経済のみならず、民間交流などにも影響を与えている。しかし、高市は日中関係には関心を失っており、自ら積極的に動く気はないように見える。

 我々日本人の日常生活には、中国製品が溢れている。家電製品、衣料品など枚挙に暇が無い。安価であるだけでなく、性能や品質も向上している。「安かろう悪かろう」は過去の話である。

 日本に対する抗議行動をするときに、中国は日本製品のボイコットを呼びかけ、日本製品を投げ捨てるパフォーマンスを展開してきた。今日そのような姿を見ないのは、当局による秩序管理が徹底されていることに加え、彼らがかつてほど日本製品を重視していないからではないか。隔世の感がする。

【プロフィール】
舛添要一(ますぞえ・よういち)/1948年、福岡県北九州市生まれ。1971年、東京大学法学部政治学科卒業。パリ(フランス)、ジュネーブ(スイス)、ミュンヘン(ドイツ)でヨーロッパ外交史を研究。東京大学教養学部政治学助教授などを経て、政界へ。2001年に参議院議員(自民党)に初当選後、厚生労働大臣(安倍内閣、福田内閣、麻生内閣)、東京都知事を歴任。『都知事失格』、『ヒトラーの正体』、『ムッソリーニの正体』、『スターリンの正体』(いずれも小学館刊)など著書多数。