【甲子園】智弁和歌山がPL学園に並ぶ歴代5位の夏4度目優勝「俺がお前たちの親だったら、うれしそうにプレーしたらそれで幸せだぞ」97年夏に選手でVの中谷仁監督は指揮官としても2度目の栄冠
◆第108回全国高校野球選手権大会最終日 ▽決勝 智弁和歌山4―3健大高崎(22日・甲子園)
智弁和歌山が逆転で健大高崎(群馬)を下し2021年以来、5年ぶり4度目の優勝を飾った。夏4度目VはPL学園に並び歴代5位タイとなった。春夏5度の優勝は箕島を抜き和歌山県勢単独トップに。阪神、楽天、巨人でプレーした中谷仁監督(47)は同校の選手で優勝した97年夏に加え、監督として2度目の全国制覇を成し遂げた。健大高崎は初優勝に一歩届かなかった。
最後の打者を空振り三振に仕留め、智弁和歌山の捕手・山田凜虎が両手を突き上げた。マウンドの久葉亮太を中心に歓喜の輪が広がる。「感無量です」。ナインが無邪気に喜ぶ姿を中谷監督は感慨深げに見つめた。
タクトがさえた。逆転2ランを浴びた直後の8回無死一、二塁。代打の松本虎太郎主将が犠打で1死二、三塁とし、次打者・川原一将のスクイズで追いついた。山下晃平は空振り三振も、暴投となり三塁走者が生還。しぶとく再逆転に成功した。
「(松本は)本当に魂のこもったバント。あれで逆転まで見えた」と指揮官。川原のスクイズには「2球目を見て(相手ベンチがスクイズを)マークしていない気がしたので、勝負をかけました」。準決勝で横浜の157キロ右腕・織田翔希投手(3年)を3回途中4失点KOに追い込むなど、強打で勝ち進んできたが、相手ベンチと捕手のかすかなしぐさを見逃さず、勝負手を打った。
中谷監督は智弁和歌山3年時の97年夏に正捕手として優勝。前年のセンバツ準優勝も同夏は初戦敗退、3年のセンバツ出場も逃した悔しさをバネに初の全国制覇につなげた。今年の3年生も同じルートをたどる。2年センバツで準Vも、昨秋は県大会初戦(準々決勝)で近大新宮に4―9で敗戦。センバツ出場を逃した。
指揮官は昨夏、新チームになり、捕手の山田に対しベンチから時折出していた配球のサインをやめた。「お前の成長のために、センバツがなくなっても、楽をさせないぞ」と厳しく接し、大敗した。獅子が子を谷底に落とすように成長を促した。
山田は「日本一になって監督を胴上げする」と目標を掲げ、必死に食らいついた。中谷監督は「ツーランクレベルが上がった。手助けしてセンバツに出ていたら、今回の結果はなかったかも」と笑みを浮かべた。
甲子園出場が決まり、緊張で動きの鈍いナインに語りかけた。「お前らがどうしても行きたかった場所は、そんなに窮屈にしなきゃいけない場所じゃないよ。俺がお前たちの親だったら、うれしそうにプレーしたらそれで幸せだぞ」。自らの経験を踏まえ、巧みな言葉で選手を元気づけた。
監督として5年ぶり2度目の優勝。選手で優勝し、監督で2度優勝は、沖縄尚学の比嘉公也監督ら3人目。元プロ野球選手の監督で2度は池田・蔦文也監督の3度に次ぐ成績だ。「蔦さん? 雲の上です。恐れ多いですよ」と苦笑い。「最高の恩返しができました」と語る山田を優しくハグすると、愛する選手たちの手に巨体をゆだね、3度宙に舞った。(高柳 義人)
◆中谷 仁(なかたに・じん)1979年5月5日、和歌山市生まれ。47歳。智弁和歌山の捕手として3度、甲子園に出場。2年春準優勝、3年夏優勝。97年ドラフト1位で阪神入団。楽天と巨人でもプレーし、12年限りで現役引退。巨人のブルペン捕手などを経て、17年から母校のコーチ、18年8月に監督に就任。21年夏にプロ出身で史上3人目の選手&監督での甲子園制覇。プロでは実働7年間で出場111試合、28安打、4本塁打、17打点。右投右打。
〇…智弁和歌山が得意の継投で頂点に立った。先発の長井心海が「ここ一番を任せてもらえて自信に」と5回1失点。6回から甲子園大会3勝の背番号1・和気匠太が初めてリリーフで登板し「自分を信じて」とつないだ。再逆転した9回は、8回途中から救援した久葉亮太が、1点差を守って勝利投手。「野手と、つないでくれた投手に感謝して」と同大会2勝目を挙げた。和歌山大会から全10試合で完投なし。夏の甲子園で全試合継投での優勝は史上7度目となった。同校は97年に続き、唯一の2度記録。6投手の起用も優勝校の史上最多となった。
《記録メモ》
◆歴代7位タイの春夏通算5度目V 智弁和歌山は、夏の甲子園、5年ぶり4度目の優勝。春夏通算では5度目で、歴代7位タイ。5度以上は9校目。箕島の4度を抜き、和歌山県勢単独トップになった。夏4度はPL学園に並び、歴代5位タイ(4度以上は6校目)。また、夏は48勝目でPL学園に並び、歴代6位タイ。初優勝の97年は決勝で1点差、00年は2点差、そして今年も1点差逆転勝利(21年は先行逃げ切り)。4度の優勝のうち、3度を逆転で決めるなど、決勝で抜群の粘り強さを発揮している。
◆県勢別では歴代単独2位の夏9度目V 和歌山県勢の夏の優勝は9度目。8度で並んでいた神奈川、愛知を抜き、最多14度の大阪に次ぐ歴代単独2位。
◆チーム2度目の全試合継投V 4試合に登板し3勝、チーム最多21回2/3を投げ、優勝投手に輝いた和気匠太を始め、5試合すべて継投、6投手を起用して優勝。夏の甲子園で完投投手なし、全試合継投での優勝は、1925年高松商、97年智弁和歌山、04年駒大苫小牧、07年佐賀北、17年花咲徳栄、22年仙台育英に次ぎ、7度目。2度記録したのは智弁和歌山が初めて。また6投手起用は、優勝チームとしては97、21年智弁和歌山、22年仙台育英の5投手を抜く、最多投手起用人数。
◆プロ野球出身監督2度目の優勝 中谷監督はプロ野球出身の監督で2度目の優勝。プロ野球を経験した監督で、甲子園2度以上の優勝は、蔦文也(池田)3度、小嶋仁八郎(津久見)2度に次ぎ、3人目。97年夏には選手で優勝。選手&監督の両方で優勝の監督で、2度目の監督優勝は、杉浦藤文(中京商・中京)、比嘉公也(沖縄尚学)監督と3人目。
