【塩地 優】即完売だったチケットが、いまや余裕で予約可能に…開業から3年、としまえん跡地の「ハリー・ポッター施設」で何が起きているのか

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としまえん跡地のハリー・ポッター聖地はいま

「ワーナー ブラザーズ スタジオツアー東京 - メイキング・オブ・ハリー・ポッター」は、2023年、としまえんの跡地に作られた展示施設だ。

ハリー・ポッターの聖地ロンドンに次ぐ2施設目で、映画のセットさながらのリアルな造形や、実際に映画で使われた物品、特殊効果や音響の種明かしなどを見ることができる。

体験型施設も充実していて、劇中に登場するスポーツ「クィディッチ」の観戦シーン撮影体験や、「闇の魔術に対する防衛術」の講義を受けて習った魔法で、敵キャラクターである死喰い人を倒す体験などができる。いずれも優れたクオリティで満足度は高い。

しかしながら、そのクオリティの高さが、必ずしも集客には結びついていないようだ。

筆者も定点観測を行っているが、2025年7月に訪れた際は、時間帯予約制チケットの土曜・最も早い時間枠は3週間ほど前に確保する必要があった。それが2026年7月には、1週間前でも余裕がある状況になっている。お盆のような繁忙期でも、1週間先であれば最も早い枠を押さえられるのだ。

入場者数は非公開のため正確には分からないが、開業当初はチケットが発売から間もなく売り切れていたことを思えば、売れ行きはかなり落ち着いてきているようだ。開業から14年が経つロンドンのスタジオツアーでは、いまも週末午前のチケットが数ヵ月先まで埋まっているというから、その対照ぶりは際立つ。

また、2026年7月に訪れた際、箒に乗って動画を撮るコーナーは、最も混雑しやすい12時前後の時間帯でも、14ブースのうち5つしか稼働していなかった。当初は年間200万人以上、場合によってはロンドン並の300万人以上を目指していたことからすれば、やや物足りない状況に思える。

「USJで十分」なのか

このように集客力に陰りが見えていることには、いくつかの理由がある。

まず挙げられるのは、「スタジオツアー」という立ち位置の曖昧さだ。多くの人がハリー・ポッターの施設に求めているのは、映画の世界に入り込めるような体験だろう。しかしながらそうした体験はユニバーサル・スタジオの領分である。

スタジオツアー東京にも、先述の死喰い人との対決のように、やや没入型の体験はある。だが、メインとなるのは、いかに映画を作ったのかという「種明かし」であって、むしろ積極的に“現実”を見せる博物館型の施設だ。

たとえば、映画セットの内面だけでなく外側の骨組みが見えるように設置されていたり、あるいは「このシーンはこうやって撮影したんですよ」という解説があったり、といった具合だ。テーマパークらしい没入型の体験を求める人とは相性の悪い施設である。

しかも日本には、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)がある。ホグズミード村やホグワーツ城がリアルに再現され、楽しいアトラクションも揃っているから、テーマパークらしい体験を求めるファンはUSJに流れてしまう。その上、USJとスタジオツアー東京は場所が大きく離れているため、両方を巡る周遊も期待しにくい。

スタジオツアー東京のような博物館型の施設を求めるのは、聖地巡礼に訪れるような、作品のコアなファンだ。映画で観たあのシーンの場所を自らの目で見たい--そう思うような人たちである。さらに、展示が中心の施設でありながら大人1人6600円〜という価格設定も、コアなファン以外にとっての敷居を高くしている。

もちろん、ハリー・ポッターは膨大な数のファンを抱えている。ファン層は今も拡大を続けてはいるが、それでも、興行収入が最も低かった映画『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』を劇場で観た人は、550万人程度に留まると思われる。そのうち、聖地巡礼をしたいと思うようなコアなファンとなると、多く見積もっても数百万人程度といったところだろう。

彼らが友人や家族を連れて訪れることもあるだろうし、コアなファン以外が施設に興味を持つことも十分に考えられる。とはいえ、スタジオツアー東京を訪れる客は、数年でひと回りしてしまうと思われる。

リピーターの確保に課題

映画のセットを再現した博物館型の施設は、リピーターの確保にも課題を抱える。通常の博物館や美術館であれば、展示作品を入れ替えることでリピーターを呼び込めるが、スタジオツアー東京の場合はそれが難しい。

禁じられた森の広大なセットや、実物大スケールのホグワーツ特急とキングス・クロス駅、さらにはイギリス魔法省、ダイアゴン横丁、ダーズリー家など、巨大な展示が多数ある。これほどの規模となると、展示変更は容易ではない。

リピーターにとって6600円〜という価格が再訪のネックになっている可能性があるが、これもまた、コストのかかった巨大な展示ゆえに引き下げが難しいのだろう。

現状、リピーター施策はイベントに頼っている状況にある。2026年8月に開催中の「ホグワーツからの招待状」では、モノが飛ぶシーンをどのように撮影したのか、作中の道具である透明マントはどのように撮影されたのか、といった種明かしが行われている。面白いが、リピーター獲得策としては弱い。

東京はハリポタの聖地ではない

インバウンド客の獲得にも課題がある。ハリー・ポッターの聖地であるロンドンにスタジオツアーがある以上、東京のターゲットは欧米ではなく、アジア圏とされていた。

しかし、そのアジア圏内だけでも、ユニバーサル・スタジオのハリー・ポッターエリアが大阪と北京の2か所にある。やはりライトなファンからすれば、このいずれかで十分だと感じられるだろう。しかも、スタジオツアー東京はこれらのパークのついでに立ち寄れる距離にはなく、その点も集客を難しくしている。

何より、東京はハリー・ポッターの聖地ではない。作品を目当てに海外旅行へ出かけるファンであれば、向かう先はイギリスであることが多いだろう。ハリー・ポッター目当ての旅行者が数多く訪れるロンドンと、そうではない東京とでは、そもそものベースとなるターゲット客数が大きく異なる。東京観光に来た旅行客に含まれる、コアなファンの"ついで需要"を狙うとなれば、その対象はあまりにも狭い。

一方、アメリカ・フロリダ州にあるユニバーサル・スタジオ系列のパークは、ハリー・ポッターの聖地ではないにもかかわらず、多くのファンを惹きつけている。

ここにはホグズミード村とホグワーツ城だけでなく、ダイアゴン横丁とグリンゴッツ魔法銀行、ロンドンの街並み、さらにはそれらを結んで実際に走るホグワーツ特急、そして魔法省まで揃う。大型屋内アトラクションが3つ、ローラーコースターが2つなど、体験の種類も豊富だ。

これに比べれば、スタジオツアー東京の規模は小さい。ファンが旅行の目的地に選ぶには、この施設単独では物足りないように思われる。

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