高市政権で初の死刑執行 58歳死刑囚が17年前に起こした「大阪パチンコ店放火」の阿鼻叫喚「髪が縮れ皮膚がただれた女性客が“痛い痛い”と言いながら飛び出してきた」
法務省は8月21日、2009年、大阪市で営業中のパチンコ店を放火し、5人を死亡させるなどした罪で死刑が確定していた高見素直死刑囚(58)の死刑を執行した。死刑が執行されたのは2025年6月、座間9人殺害事件の白石隆浩元死刑囚以来で、高市早苗政権では初めて。高見死刑囚が起こした「阿鼻叫喚の現場」を振り返る。被害に遭ったのはパチンコを愛好する老齢の女性たちだったーー。
(「週刊新潮」2009年7月16日号に掲載された記事を再構成しました)
【写真】若い頃は端正な顔立ちでモテたと言われていた高見素直・死刑囚
誰でもいいから人を殺したいと思い、人が大勢いるところに火をつけた
その日、玉が出ずに別のパチンコ店に梯子した近所の花屋の店長は、30分ほどして周囲の騒々しさに外に出て、地獄絵を目の当たりにしたという。7月5日午後4時10分ごろのことだ。

「さっきまで話をしていた常連客の女性が、下半身を火に包まれながら店から飛び出て、“男が入ってきてバケツに入った液体をかけられたら、自分に火がついた。何が何だかわからない”と言うんです。その間にも服が燃えている人が次々と飛び出してきて、燃えながら路上にのたうちまわっている人もいました」
逃げ出した人は髪が焼けて縮れ、皮膚はただれ、方々から「痛い、痛いっ」と声がし、店内からは全身真っ黒の人が運び出された。大阪市此花区の阪神電鉄駅前にあるパチンコ店Cに、液体すなわちガソリンを撒いて火をつけたのは、高見素直という41歳の男だった。
列車で西方に逃走し、父親が住む広島を通過して山口県の岩国署に出頭し、
「仕事も金もなく、人生に嫌気がさした。通り魔みたいに誰でもいいから人を殺したいと思い、人が大勢いるところに火をつけた」
と供述した高見は現場から400メートルほど離れた家賃5万円のワンルームマンションに住んでいた。
『ベルサイユのばら』『冬のソナタ』といった女性向けの台が集められた店
「このマンションは元看護師寮で、地元の不動産屋も仲介を断ったシロモノです。大家はある企業に36室を一括で委託し、その企業は敷金礼金どころか保証人さえなしで貸している。が、家賃未払いの人が多く、入居者は頻繁に入れ替える」(かつて仲介した不動産業者)
端正な顔だちで若い頃はモテたらしい高見。家賃こそ払っていたが、失業して消費者金融から借金を重ね、最近ではただ影が薄いだけの男だった。
外から眺めていた屋台ラーメン屋の店主が、「中から黒い煙がもくもくと上がって、パチンコの台はドロドロに溶けとった」と話す火災の現場は、大阪市消防局によれば、
「ガソリンが撒かれた南東出口の火の勢いは強く、視界がほぼゼロ。800〜1000度の超高温だったと思われ、熱気が強くて中に踏み込めない状態でした」
命を落とした4人のうち派遣従業員のAさん(20)を除く3人は60歳以上、そのうち2人が女性だが、
「あの店は1玉2円とか割安で、『ベルサイユのばら』『海物語』『冬のソナタ』といった女性向けの台が集められ買い物ついでに寄る高齢者や主婦が多かった。とくに5日の日曜日は、女性オーナーが奈良の天川村から汲んできた湧き水と玉を交換できる主婦向けのイベントをやっていて、昼過ぎまでは満員でした」(常連客)
「冬ソナ」を打つのが好きだった被害女性
4時をすぎても7割の台が塞がり、しかも「冬ソナ」のような人気台近くにあったので、ガソリンをもろにかぶった女性が燃えるながら飛び出すことに。
「全身火に包まれた人が苦しんでいましたが、たぶん女性でしょう」(通行人)
性別がわからなくなるほどの火傷を負っても、自力で脱出した人は助かり、亡くなった4人はいずれも消防隊に運び出された。
「ご主人が亡くなって建設会社の会長職を継いだのですが、ストレスが溜まる仕事のようでね。“発散のためにパチンコに行くのよ”と言っていました」
と近所の人が話すBさん(72)の、お気にりの台は入り口近くの「冬ソナ」だったが、視界もままならず、奥に進んだようだ。
被害はビル上層にも及び、
「昭和30年代に家を買った人が多いこの辺りは、今はお年寄りだらけで、2年前に開業した2階の整形外科も平日は待合室が老人で溢れていた。平日だったらどれほど被害が膨らんだか」
と近所の商店主は言うが、物損は免れず、
「整形外科の医療機器はみな溶けてダメになったそうです。4階の歯医者も、機器はみな煙でやられてしまったとか」(別の商店主)
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「今回は改正再審法成立後の初執行という意味でも注目を集めました。高見死刑囚が再審請求をしていたかどうかは不明ですが、高見死刑囚は刑事責任能力については争ったものの、自首しており、犯人の当事者性には争いがない。批判が起きにくい“無難な死刑囚”として選ばれたのではないか」(司法記者)
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デイリー新潮編集部
