《埼玉踏切・殺人未遂》「あおり運転は本当にあったのか?」防犯カメラに残された“車間距離”と逮捕されたJAF職員の評判「実家の母の面倒をみて、近所の雪かきもしてくれる」
後続車を踏切内から出られない状態にして列車と衝突させ、運転手の男性を殺害しようとした――。埼玉県警岩槻署は19日、殺人未遂容疑で団体職員の加藤研一容疑者(52)=同県蓮田市馬込=を逮捕した。捜査関係者によると、加藤容疑者はロードサービスなどを手がける「日本自動車連盟(JAF)」の職員だという。加藤容疑者は「殺すつもりはなかった」と殺意を否認し、「あおり運転された」と主張している。一方、親戚は「何があったのか、私の方が知りたいくらいです」と肩を落とす。
《画像あり》事故直後、心配そうに電話をしていた被害者と思われる男性の画像、「約8秒後に被害者の車が通過」現場付近の防犯カメラの画像
母親に対し「あおり運転されたから車から出た」と説明
事件は18日午後5時25分ごろに発生した。埼玉県警の発表によると、現場は東武野田線(七里―岩槻駅間)にある踏切だ。
捜査関係者によると加藤容疑者は踏切を渡った直後に自車を停車させ、後続の被害男性(56)が運転する車を踏切道内から出られない状態にした。直後に加藤容疑者は降車して被害車両に歩み寄り、「車間距離が近い」などと注意。踏切の警報機が鳴り始めると、自車へ戻ったという。
「午後5時26分ごろ、踏切内に残された被害車両に春日部発大宮行きの普通列車が衝突しました。男性は衝突の直前に車外へ脱出して無事であり、列車の乗客・乗員にもけがはありませんでした。この事故の影響で東武野田線は上下線計20本が運休し、約1万4000人の足に影響が出ています。
逮捕後の取り調べに対し、加藤容疑者は『殺そうとは思っていない』と殺意を否認し、『相手の車が1キロほど車間距離が近く、注意するために停めた』と供述。事件直後に実家へ立ち寄った際にも、母親に対し『あおり運転されたから車から出た』と説明していたようです」(社会部記者)
しかし、被害車両のドライブレコーダーには、遮断機が下りきるのを確認してから加藤容疑者が自車を発進させる様子が記録されていた。
県警はこうした行為から加藤容疑者に殺意があったと判断。加藤容疑者が主張する「あおり運転」の事実についても現時点では確認できておらず、列車往来危険容疑も視野に入れて捜査を進めている。
「電車の警笛がかなり長い間鳴っていた」
大惨事となりかねなかった事故直後の様子について、近隣の男性住民はこう振り返る。
「家にいて最初に異変に気づいたのは電車の警笛でした。連続してかなり長い間鳴らしていて、それで普段とは違うなって思ったんです。普段鳴らす事はあってもあんなに長く鳴らさないですから」
その直後、激しい衝突音が周囲に響いたという。
「ドーンッという音がして、すぐに電車と何かがぶつかった音だって思いました。それで踏切を見に行くと電車が停まっていて、線路際にリアガラスが割れて、左側のテールランプが破損している車がありました。ああ、この車とぶつかったんだなって……」
現場は騒然となり、間もなく緊急車両が集まってきた。
「そうこうしているうちにすぐにパトカーが来て、消防車も来ました。いや、本当びっくりしましたよ…」
現場近くで被害男性と遭遇した別の住民は、当時の様子をこう証言する。
「話し方自体はパニックになっているという感じではないのですが、私に『どうしたらいいですかね?』って尋ねてきました。それでどうしたらって110番した方がいいでしょって伝えたのですが、本人はパニックだったのかもしれません。
被害者の方自身はパッと見、ケガをしていたりとかそういったことはなかったですね。あとから踏切に閉じ込めて殺そうとしたって報道を見て(加藤容疑者は)とんでもないことするなって思いました…」
あおり運転はあったのか? 防犯カメラの映像では…
一方、加藤容疑者が主張する「あおり運転」は実際にあったのか。
現場周辺には、事件前の2台を捉えた防犯カメラの映像が残されていた。現場の踏切までは制限速度40キロの片側1車線の道路だ。
事故現場から少し離れた場所に住む住民は、「ウチの防犯カメラの前を通過する際は、被害者が煽っているようには見えなかった」と証言する。
「加藤容疑者の車が通過してから約8秒後に被害者の車が通過しているが、どちらも法定速度程度の安全運転に見えた。ただ、加藤容疑者より被害者の方がわずかに速度が速い。報道に出ている踏切直前の映像ではかなり加藤容疑者の車に被害者の車が迫っていたため、そこに至るまでに被害者が急激に速度を上げたか、加藤容疑者が故意に速度を下げたかしないと、あそこまで近づかないのではないか」
社会部記者がこの状況について解説する。
「加藤容疑者と被害者の車間距離が詰まっている状態で走る映像の位置から踏切まで、車で1分程度の距離です。加藤容疑者の実家は現場の踏切よりもっと手前に位置しており、実家に寄ろうとして減速した際に、被害者の車と距離が詰まったのかもしれません。仮にあおり運転があったとしてもほんの短い距離、車間が詰まっていたという状況だったと思われます」
「雪かきもしてくれるような人だった」
捜査関係者によると、加藤容疑者はロードサービスを提供するJAFの職員だという。加藤容疑者は事故現場から北に4キロほど離れた集合住宅に住んでいたが、現場からほど近い実家にはたびたび顔を出していた。
実家付近の住民は、加藤容疑者の家族についてこう明かす。
「加藤さんのお宅はもともと母親と父親、息子さん、弟さん、お姉さんで住んでいたと思います。ただ、お子さんはみんな家を出ていますし、父親も10年近く前に亡くなってしまったので、今住んでいるのは母親だけだと思います。それでだと思いますが、息子さんが月に2、3回母親の様子を見に帰ってきていました」
実家へ定期的に顔を出していた加藤容疑者は、周囲への気配りも欠かさなかったという。
「息子さんの見た目は普通の方で、すごく温厚な腰の低い人です。私のうちにも『たくさん採れたんで』『たくさんいただいたんで』と野菜とかブドウを持ってきてくれたこともありました。本人から直接聞いたわけではないのですが、車関係の仕事というのはなんとなく知っていました。よく実家の駐車場に車を停めてタイヤなどをいじっているのも見ましたしね」
車への関心は強かったようで、昔は外車に乗っていた時期もあったという。
さらに、「実家の庭の手入れをしたり、雪が積もった時などは周囲の近所の人のところまで雪かきをしてくれるような人です」と近所での評判はよかった。
「あんなことをするような人にはまったく感じられなかったんですけどね……。最後に見かけたのは、1ヶ月前くらいでしたね。『母親のために実家の屋根を新しくやり直してるんです』と業者を手配したといった話をしていました」
その際、雨どいについては自身で直すと話していたという。
「その時に雨どいは自分で直すというので、材料を探して買ってきたそうです。自分でやるのか尋ねると『そうなんですよ。(材料が)どこにも売ってなくて大変でした』なんて話もしていました。本当に感じのいい普通の方だったので、事件を知って驚きました」
加藤容疑者の親族を直撃すると…
事件後、記者がこの実家を訪ねた際のことだ。
親族とみられるハットとマスク姿の女性2人が実家から出てきたところで記者が声をかけたが、2人はうつむいたまま足早にタクシーに乗り込んだ。
別の親戚も困惑を隠せない。
「私からするととても温厚で優しい方という印象しかありません。事件のことについては知っていますが、なんであんなことをしたのか、何があったのか、私の方が知りたいくらいです」
日頃は車のトラブルから人々を救う側にいた加藤容疑者が、なぜ踏切内で後続車を停める行為に及んだのか。県警は事件に至った詳しい経緯を調べている。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
