東武4人死亡事故、見張り員が作業員退避完了の旗合図…「中継見張員」と連携取れていなかった可能性
20日午前10時45分頃、栃木県鹿沼市鳥居跡町の東武日光線新鹿沼駅の構内で、東武日光発浅草行きの特急「スペーシアX2号」が線路上で除草作業をしていた男性作業員4人に接触した。
4人は搬送先の病院で死亡が確認された。県警鹿沼署が詳しい状況を調べている。
発表によると、死亡したのは、いずれも宇都宮市上大曽町の石川一芳さん(67)と渡辺利彦さん(65)、栃木県日光市手岡、大毛茂信さん(53)、日光市木和田島、佐藤和也さん(54)。鹿沼署員が現場に駆けつけた際、石川さんはホーム上に、残りの3人は列車の下にいたという。乗客約50人と乗員にけがはなかった。
東武鉄道によると、当時は7人で除草作業をしていた。通常、線路上で除草などの作業を行う場合、作業員のほかに見張り要員を配置し、列車の接近を目視で確認すると笛などで作業員に知らせて退避させる。その後、旗で列車の運転士に安全を知らせ、列車は警笛を鳴らしてから進行する運用になっているという。
同社の説明によると、この日は周辺に列車の接近を知らせる3人の見張り要員が配置されることになっていた。うち1人が現場から80メートルほど手前にいたが、列車の運転士によると、この見張り員は作業員らの退避が完了したことを示す合図を旗で送っていたという。
さらに手前の315メートル地点には、見張り員に列車の接近を知らせる「中継見張員」を置くことになっていたが、何らかの理由で両者の連携が取れていなかったとみられるという。
同日夜に国土交通省で記者会見した東武鉄道の鈴木孝郎・鉄道事業本部長は「重大な事故を発生させたことを真摯(しんし)に受け止め、原因を究明して再発防止策を徹底する。深くおわびする」と謝罪。原因を特定できていないことを明らかにした。事故の詳しい原因については「調査中で、わかっている情報が少ない」などと繰り返した。
国の運輸安全委員会は同日、鉄道事故調査官を現地に派遣。現場入りした横飛雅俊調査官は、今後、事故前後の状況や安全管理体制の確認を行うとした。
線路上の作業員と接触事故相次ぐ
線路上の作業員らが列車と接触して死傷する事故はこれまでも相次いでおり、運輸安全委員会は警鐘を鳴らしてきた。
東京都品川区のJR貨物線では1999年、信号ケーブルの交換中だった作業員5人が臨時の回送列車にはねられて死亡する重大事故が起きた。現場の責任者が列車は来ないと勘違いしたことなどが原因だった。国土交通省は事故後、鉄道事業者に対し、線路での作業時には列車の接近を確実に把握するよう通達した。
だが、その後も同様の事故は根絶できていない。2006年には鳥取県のJR伯備線で保線区員5人が死傷した。今年3月には香川県のJR讃岐府中駅近くの線路上で、保線工事に従事していた作業員が快速電車にはねられ死亡した。運輸安全委などによると、09年以降、少なくとも10件の死亡事故が起きている。
これらの事故を調査した運輸安全委は、担当者の思い込みのほか、安全確認や情報共有が不十分だったことが原因だったと繰り返し指摘。作業員と見張り役の連絡手段の確保といった基本的な安全対策の徹底を求めてきた。
日本大の綱島均・特任教授(鉄道工学)は「今回の事故も適切な作業手順を取っていれば防げた可能性がある」とした上で、事故調査は列車の接近を知らせる手段や作業員の退避手順の確認が中心になるという見方を示している。
