どこへ行ってもチャイニーズを食う…世界21ヵ国『麻婆豆腐』を求め歩いた男の「最高の一品」とは

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世界中どこへ行っても麻婆豆腐を食べる男

「海外ではどこに行っても、結局、チャイニーズ……麻婆豆腐を探してしまうんです」

と、アツく麻婆豆腐愛を語るのは、嵐よういち氏(56)だ。

世界を見てみようと一眼レフを手にバックパッカーのように世界各国を訪れ始めて早35年。ヨーロッパ、アジア、アフリカ、中南米と、これまでに嵐氏が訪れた国は94ヵ国にのぼる。現在は、旅行作家として活躍中だ。

そんな嵐氏が先ごろ上梓したのが、『麻雀放浪記』……ではなく『麻婆放浪記』(産業編集センター)。行く先々でチャイニーズの店を探しては胃袋を満たし21ヵ国・25ヵ所での経験をまとめたものだ。

「いつか本にしたいと考えていましたが、なかなか企画が通らなくて(笑)。それがようやく叶ったんです」(嵐さん。以下同)

中国やアジアでならともかく、なぜ、ヨーロッパやアフリカや中南米の国々で麻婆豆腐なのだろう。旅行作家という職業は、訪れた国の、その土地ならではの食べ物を食べ、読者に紹介するのも仕事なのではないだろうか。若干“掟破り”のような気もするのだが……。

「もちろん、その土地の食べ物も食べるのですが、口に合わなかったり、私の胃には重かったりして、そればかりだとキツイ。そんなときに、日本食の店は少ないし、高いだけで日本人の口に合わないことが多いんです。だから、安くて手軽なチャイニーズの店をついつい探してしまうんです。

特に麻婆豆腐は日本にいる頃から好きで、街の定食屋なんかでは麻婆定食、ラーメン屋でも麻婆ラーメンとかを食べてましたからね。現地からXでその地の麻婆豆腐の情報をあげたりしているうちに、周りから、“世界中、どこに行っても麻婆豆腐を食べるヤツ”と認識されて、イジられるように。今では、YouTubeやイベントで、そんな話をすると、やけにウケも良くて(笑)。

自分では気が付かないのですが、海外のチャイニーズや麻婆豆腐について、あまりにアツく語っているらしくて、面白いらしいんです。でも、俺だけではなく、実は他の旅行作家も、海外に行っても、現地の料理だけではなく、チャイニーズを食べていると思いますよ。みんなはそれを表に出さないだけで(笑)」

「最高の麻婆豆腐」を食べた意外な国

嵐さんによれば、「中国人は世界のいたるところに移住し、逆境の中で地元の人間よりも働きました。おカネを貯めると、手っ取り早く始められるレストランを開いて、その土地に根付く。そして、周りに同様の店が増えてくると、また離れたところに店を出してと伝播していく……。そのバイタリティーがスゴい」そうで、世界中チャイニーズの店はどこにでもあるという。

例えば、ペルーのリマでは、チャイニーズとチーファ(ペルー現地の町中華的料理屋)の看板ばかりの一画があったという。それを見てテンションが上がる嵐氏に、一緒に行っていた人間は「地元のものを食いましょうよ……」と、ドン引きだったという本末転倒なエピソードが『麻婆放浪記』の中で紹介されている。

さらに、ルーマニアのブカレストで食べた日本人駐在員が皆通うという店での最高の一品。マダガスカルのタナでは「タクシーブルース」といわれる、定員の倍以上の客を乗せたバンで未舗装の道を12時間以上走った日に安らぎを与えられた一品。ホンジュラスのサンペドロスーラでは最悪の治安の中、ボディチェックを受けて店に入って食べた一品など、本書では、世界のさまざまな麻婆豆腐とチャイニーズとの出会いのストーリーが収録されている。

詳しくは、本書を手に取って確認してもらいたいが、そんな麻婆豆腐が、時には嵐さんのストレスフルな旅の癒やしとなったり、またある時には、逆に口にも合わない“地雷”になったりもする。そこには、純粋な“味”だけではない要素も介在するようだ。

「その土地で感じた味を、日本で食べても同じように感じるかは分かりません。食べた時の環境や状況、自分の体調などがスパイスとなって、味の記憶になっているでしょうからね」

その場所、その時の麻婆豆腐との出会いを綴った本書は立派な旅行記なのだ。また、長年各国のチャイニーズ店を訪れ、麻婆豆腐を食べ続けていると、その変化についても感じるところがあるという。

“進化”して日本人の口に合わなくなった店も

「以前、チャイニーズは、どこにでもあり、“外さない”ものでした。でも、ここ10~15年くらいは随分変わりましたね。なぜかというと、経営者が代替わりしたり、インバウンド目当てなどのビジネスとしてチャイニーズの店を営業しているケースも増えた。そういった店は観光客向けや、現地の人間向きに突飛な進化をしていたりして、日本人の口に合わないような店が増えてきました」

しかし、以前と違って、スマホで検索してレビューなどの情報を集めれば、ハズレの店には当たらないような気もする。

「しっかりと検索はするんですよ。でも、失敗するんです。現地のお客や白人観光客の口コミは当てにならないですね。ある程度“外さない”店を見分けるコツは、オーナーや従業員に中国人がいるかどうか。客に中国人やアジア系の人間がいるかどうかですね」

嵐氏は、海外だけではなく、「日本国内にいても、店に入って麻婆豆腐があれば、一応調査はしてみる」そうだ。それだけでなく、「海外に行き始めて、ロンドンに住んでいた頃、中国人から教えてもらった」そうで、自身でも麻婆豆腐を作るという。ちなみに「麻婆の素は、やっぱり丸美屋が最強!」らしい。

その麻婆豆腐愛が高じて、町中華の一品をアテに酒を飲む人気番組『町中華で飲ろうぜ』(BS-TBS)に“黒帯”として出演する玉袋筋太郎氏のラジオ番組にもゲストとして出演し、その愛を語っていた。それでも嵐氏の“麻婆愛”は止まらないようだ。

「これからも世界各国の麻婆豆腐を食べ続けますよ。それはもう俺の使命ですから!」

やはりそう“熱く”語る嵐氏の麻婆豆腐を追いかける旅は、これからも続いていくのだ。