高額バイトで誘い出し監禁、売上不振なら拷問…トクリュウへの潜入取材で暴かれた詐欺組織の恐怖支配

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裏切り者に対する無慈悲な制裁の画像の数々をメンバーで共有

服を脱がされ、床に横倒しにされた一人の男性。両手足に枷(かせ)がかけられ、立ち上がることすらできない。次の瞬間、画面外から現れたスタンガンが男性の体に触れ、衝撃音とともに光った。

部屋には男性の叫び声が響き渡り、休む間もなく複数の人間が頭や身体を蹴り上げる。男性が意識を失った後も、暴行が終わる気配はない。FRIDAY記者が目にしたのは、「トクリュウ」メンバーによるおぞましい拷問の映像だった。

「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」による特殊詐欺の被害が後を絶たない。昨年の認知件数は前年比3割増の約2万8000件にのぼり、被害総額は過去最悪となる約1400億円を記録した。なかでも、刑事を装って電話をかけ、逮捕をほのめかして金銭を詐取する「ニセ警察官詐欺」の被害額は約990億円に膨らむなど、社会問題となっている。

「事態を重く見た警視庁は、昨年10月に『トクリュウ対策本部』を新設。200名の捜査員を集め、トクリュウの壊滅を目指しています」(全国紙社会部記者)

トクリュウが異様なのは、まるで一般の会社のように組織化されており、当の本人たちはビジネス感覚で罪の意識が欠けているケースが少なくないことだ。かつてカンボジアの組織で「かけ子」をしていた人物はこう語る。

「私のいた″箱″(詐欺を行うチームの呼称)は主にニセ警官詐欺を扱っていました。″始業″が朝の8時。自室から同じ建物内にある事務所に集まり、ヘッドセットをつけて″仕事″を始めます。デスクに設置されたタブレットを操作して、ターゲットに電話をかける。

電話のかけ先は幹部によって事前に選定され、名前と住所が画面に表示される仕組みになっていました。昼休憩とトイレ以外は、常に通話しているような状態です。夕方6時頃に電話を終え、1時間ほど反省会を行って″業務″は終了となります」

民間企業との最大の違いは、暴力による恐怖支配。冒頭の映像は、その実態の一部を捉えたものである。詐欺組織の現役の日本人メンバーはこう解説した。

「警察の目が届かない空間なので、″箱″の中は無法地帯。メンバーの募集にしても、SNS上や人づてで『割りのいい高額バイトがある』と誘い出し、現地で誘拐するパターンが常態化している。その後、監禁状態で″仕事″を行わせ、″売り上げ″が悪ければ殴る蹴るの拷問を加える。

荒っぽい組織だと、働かせるだけ働かせておいて報酬は渡さず、応募者の家族に身代金まで要求する。詐欺組織のメンバーによるテレグラムのグループチャットでは、拷問を行う動画や写真が日常的に共有されており、見せしめとして使う組織も少なくない」

東南アジアに潜む犯罪グループは日本で拡大する特殊詐欺の温床に

FRIDAY記者は、東南アジアを拠点にする詐欺組織のグループチャットに潜入。このメンバーが指摘した通り、そこは裏切り者への制裁動画や写真で溢れていた。

組織で裏切り行為を働いたとされる男性の鼻や口元には血がべったりとついており、目が開けられないほど顔がパンパンに腫れ上がっていた。組織の物品を盗んだとして、背中の皮がめくれるほど暴行を受けた後に正座をさせられた男性の写真もあった。

「元々、このチャットは当局の摘発情報の共有などが目的でした。しかし、徐々に拷問動画が流れてくるようになった。最近では、自分たちが受けた拷問の様子を投稿して被害を訴えるケースもある」(同前)

冒頭の映像がまさにそうなのだという。件(くだん)のチャット内に投稿されていた動画のひとつで、組織のボスと思しき人間の顔写真とともに、「悪行を暴露する」という一文が添えられていた。

日常的な暴行でメンバーが殺害されていることなどについての告発文が並び、最後には「悪霊となって、あなたを許さない」という呪詛の言葉が綴られていた。行き過ぎた暴力支配の実態を内部告発しようとしたのだろうか……。

これら東南アジアで蠢(うごめ)く数々の犯罪グループは、日本で被害が拡大する特殊詐欺の温床となっている。なかでも、カンボジアは特殊詐欺組織が乱立する一大拠点として知られる。

「カンボジアの詐欺組織は、中国や台湾マフィアが仕切っているケースが多い。現地のリゾートホテルやマンションを買い上げてアジトにしている場合もあれば、『園区(えんく)』と呼ばれる中国系企業が運営する経済特区に拠点を置くケースもある。

地元の有力者が所有する土地を借り、″箱″を運営している組織もある。この場合、高額な賄賂やショバ代が発生するが、警察に摘発されづらいというメリットがある。扱う″商品″(手口)はニセ警官詐欺、ロマンス詐欺、SNSを使った投資詐欺、還付金詐欺など様々。″箱″の規模は小さいところで10人程度、多いところでは数百人が働いている」(同前)

近年、カンボジア当局の浄化作戦によって詐欺拠点の摘発が相次ぎ、国外へ逃亡する組織が急増。現在は新天地探しに躍起になっているという。

「すでに中国マフィアはラオス、マレーシア、インドネシア、スリランカ、アフリカ各地へ移動し始めている。台湾マフィアはヨーロッパへと足を延ばしている。詐欺はネット環境さえあればどこでもできる。いくらアジトを摘発してもなくなることはない」(同前)

メンバーを恐怖で支配しながら、トクリュウは特殊詐欺の手を延ばし続けている――。

『FRIDAY』2026年8月21・28日合併号より