「うわぁ、やってもうた」飼い犬殺害→5日後にまた別の犬を…現在も複数ペット飼育…裁判官が異例の苦言
自宅で飼っていた犬2匹を殺したとして、動物愛護法違反に問われた40代男性に対し、大阪地裁は8月6日、拘禁刑1年(求刑同じ)、保護観察付き執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。
殺された2匹は、いずれも保護団体から引き取った犬だった。
しかも男性は、それ以前にも飼っていたウサギを殺していた。1匹目の犬を殺した直後に2匹目を家に迎えて殺害した。1匹目の犯行から2匹目の犯行までの間はわずか5日だった。
なぜ、短期間に残虐な犯行が繰り返されたのか。
法廷では、酒を飲むと「ブレーキが利かずキレてしまう」という男性の問題が明らかになる一方、家族からはウサギを殺した後も新たな犬を迎えることに「不安はなかった」との証言も飛び出した。
現在も自宅では複数のペットを飼っているという。裁判官は「飼うのは望ましくない」と苦言を呈した。(裁判ライター・普通)
●酒を飲むと気性が荒くなりやすい
被告人は40代の男性。細身で、目の下にはクマのようなものが見えた。法廷で見るかぎり、一見して暴力的な振る舞いをするような人物には見えなかった。
起訴状によると、被告人は今年5月、大阪府内の自宅で、飼い犬の「イブ」を殴るなどして殺した。そして、そのわずか5日後、同じく自宅で飼っていた「マックス」を殴るなどして殺したとされる。
起訴内容に対して「間違いありません」と答えた被告人の声は、今にも消え入りそうなほど小さかった。
検察官の冒頭陳述などによると、被告人は塗装業などに従事していたが、体調を崩してからは無職となり、妻や子どもらと暮らしていた。
捜査機関に対する妻の供述によると、被告人は酒を飲むと気性が荒くなりやすく、事件当時も酒に酔っていたという。
●酒に酔い「ブチ切れた」部屋は血だらけに
さらに、今回起訴された2匹の犬だけではない。それ以前にも、飼っていたウサギを殺したことがあった。
被告人自身も捜査段階で、酒を飲むと「ブレーキが利かずにキレてしまう」と供述している。
犬2匹を殺した際も、酒に酔っていた。犬が家の中を糞まみれにしたことに腹を立て、犬を叩いたり、掃除をしたりする中で噛まれ「ブチ切れた」のだという。
2匹はいずれも保護団体から引き取った犬だった。犯行後、部屋は血だらけになっていたという。
●ウサギを殺した後も「不安はなかった」
弁護側の証人尋問として、被告人の妻が出廷した。
不安げな表情を見せる被告人とは対照的に、妻は淡々と質問に答えていった。
妻は、被告人に飲酒によるトラブルが多いことを把握していた。過去には夫婦間のトラブルもあり、前歴として記録が残っているという。
また、被告人には精神疾患があり、処方された薬を適切に服用できていなかった。
こうした状況について、妻は「こちらから注意はしてるんで」と答えた。検察官はさらに質問を重ねる。
検察官:ウサギを殺したあとにイブを引き取ることに不安はなかったんですか?
妻:なかったですね。
検察官:イブを殺してすぐ、マックスを引き取ることに不安はなかったんですか?
妻:約束してたんで。
検察官:殴り殺さないよう防止策とかは。
妻:注意はしてたんで。
「約束していた」というのが、犬を引き取る約束を指すのか、被告人が犬に手を出さないという約束を指すのかは、法廷でのやり取りから判然としなかった。
●現在も複数のペット、裁判官も思わず苦言
妻の証言から繰り返し出てきた再発防止策は、とにかく被告人に酒を飲ませない、というものだった。
しかし、現在も自宅では複数のペットを飼っているという。
これ以上増やすつもりがあるのか問われると、妻は否定した。事件を繰り返さないためかと思いきや、その理由については「多いんで」とだけ答えた。
こうした証言を聞いていた裁判官は、被告人がしたことを「虐待」と表現。飲酒をコントロールするだけでなくそもそも動物を「飼うのは望ましくないのでは」と苦言を呈した。
妻は最後、不満げな言葉を口にしながら証言台を後にした。
●「ペットの命を軽く見てた」
被告人質問では、弁護人が事件についての思いを尋ねた。
被告人は「二度とないよう、本当に酒をやめて…動物も命なので、ないように」と答えた。
その後の質問では、自ら「ペットの命を軽く見てた」と振り返った。以前にウサギを殺したことについても「他人事感」があったと表現した。
少なくとも一連の事件当時、自分がしたことの重大性を十分に受け止められていなかったことは本人も認めているようだった。
被告人には精神疾患のほかに、生活習慣病もあった。
処方薬について、被告人は適切に服用していたと主張したが、弁護人からは過剰に飲んだり、アルコールと一緒に服用したりするのは正しい飲み方ではないと厳しく指摘された。
今後について被告人は、処方薬を適切に服用すること、アルコール依存の治療を受けること、悩みを一人で抱え込まず家族に相談することなどを誓った。
●「うわぁ、やってもうた」法廷に残った他人事感
検察官は、被告人が動物を殺した後、どのように受け止めていたかを尋ねた。
検察官:ペットを殺害した点は、酔いが覚めたらどういうふうに思ってたんですか。
被告人:うわぁ、やってもうたんかな、と。
検察官:それは「やっぱり」って感情なのか、「驚き」なのか、どっちですか。
被告人:ペットの命を軽く見てたのは事実なんで、うわぁ、やってもうた、と。
被告人はマックスのことを「かわいいと思ってた」とも話した。
一方、被告人質問を通して印象に残ったのは、命を奪ったことへの反省や後悔を示す言葉が、聞かれなかったことだ。
酒が原因の一つだと本人も認識していた。それでも対策がとられないまま、ウサギ、そして2匹の犬への被害が繰り返された。
その経緯を聞くほど、なぜ途中で止められなかったのかという疑問が残った。
●わずか5日で繰り返した犯行、保護観察付きに
検察官は論告で、愛護動物の命を軽んじる態度は明らかであり、犯行は残忍かつ悪質だと指摘した。
室内でペットを飼えば、排泄物などで部屋が汚れることはあるもので、それに逆上し命を奪ったことは身勝手だと非難し、拘禁刑1年を求刑した。
一方、弁護人は、計画的に虐待を続けていたのでなく、いずれも突発的な犯行だったと主張した。事件後は犯行を素直に認めており、今後は完全に酒を断つため家族と協力していくとして、寛大な判決を求めた。
裁判官は、わずか5日という短期間で2度の犯行を繰り返していることなどを踏まえ、被告人の更生には公的な支援が公的な支援が必要だとして、保護観察を付した理由を説明した。
法廷で裁判官が口にした「飼うのは望ましくないのでは」という言葉が重く残った。

