『ほの暮しの庭』レビュー:「先に知りたかった」後悔も含めて傑作! 因習村で始まる“ほのぼのと仄暗い”スローライフ

日本一ソフトウェアから2026年7月30日に発売された『ほの暮しの庭』は、発売からわずか数日で国内累計販売本数10万本を突破した。パッケージ版が一部店舗で品切れを起こすほどの勢いとなっている。
「夜廻」シリーズを手がけたスタッフによる生活シミュレーションとして発表された本作は、「ほのぼの田舎暮らし」と「不穏な因習村ホラー」を融合させた稀有な作品だ。
筆者も発売直後からプレイを開始しているが、一度始めると時間の溶け方が尋常ではなく、やめどきがわからなくなる危険な一本である。

▲最初に出会う少女、コマコ。手前の子供が主人公で、髪型や色などは自由に変更できる
因習村での厳しいスローライフの始まり
物語は、山中を彷徨っていた幼い主人公が、彼ヶ津村の人々に保護されるところから始まる。行くあてのない主人公に、村長・リンは「村のために働くなら住んでもよい」と提案する。与えられたのは、村はずれの古びた小屋と、草ぼうぼうの荒れた庭だ。借金まで背負わされる羽目になり、いきなり厳しい現実が突きつけられる。

▲右側の金髪少女が村長(!?)のリン。その後ろにいる秘書のコンノが、主人公が負う借金の額を告げる

▲翌日から、リンに従う村人・キスケの命令を聞くはめに……

▲それにしても荒れ放題の畑だ
家はボロボロ、畑は荒れ放題。村人たちに挨拶をしても「キミとは話しちゃいけない」と塩対応を受ける。正式な村人と認められるまで、誰も本格的に口を聞いてくれない。ただこれは、村に伝わる「八つの掟」を守る必要があるからだ。

▲最初はみんなこんな調子

▲村人と認められるまでは数日を要する。ようやくコミュニケーションが取れるようになってホッとした
八つの掟のうち、「村のために協力せよ」だけなら、まだわかる。「午後十一時以降外出禁止」「村を出てはならぬ」「山からの声に応えるな」「見知らぬ者に近づくな」「他人の秘密を暴くな」「失った物を探すな」「願いには相応の代償が必要」――と、他の七つは聞くだけで不穏になる。実際のプレイでも、11時を過ぎると強制的に家に帰され、村の外に出ようとしても戻されてしまう。この村、何かがおかしい。

▲11時を過ぎると家まで強制送還。一瞬で帰れるのは便利かも?

▲村を出ようとしても戻されてしまう。フシギな力が働いている……?

▲「山からの声」ってそもそも何だよ!?
それでも昼間の暮らしは、確かに「ほのぼの」だ。畑を耕し、種を蒔き、水をやり、作物を育てる。鶏や牛の世話をし、卵やミルクを得る。釣りや狩り、山菜採り、鉱物の採集。庭や家のDIY。四季が移り変わり、風景が鮮やかに変わる。

▲ゲームで畑を耕すのはワクワクだ

▲カワイイ動物たちとの触れ合いも

▲白いウナギが釣れた!めっちゃ高値で売れる

▲野生の動物を狩る!出血など露骨な表現はないので安心だ

▲まるでダンジョンのような鉱物の採集。ウッカリ一日中やってそう
日本の原風景を思わせるグラフィックと、環境音の質の高さが相まって、没入感は極めて強い。農業システムは本格的で、80種類以上の作物が存在し、クオリティやレア度が上がっていく仕組みもある。加工や畜産も細かく、ただの「農場ゲーム」としても十分に成立する完成度だ。

▲筆者がお世話になっているのは漬物樽。どんな野菜も漬物にできるうえ、魚を漬ければ魚醤もできる
しかし、夜になると空気が変わる。昼間の穏やかさが、一気に薄れる。
夜に出歩け。掟を破ると……
ストーリーが進むと、あえて掟を破らねばならないイベントが発生する。深夜の彼ヶ津村は、昼間とはまったく別の顔を見せる。人ならざるものが徘徊し、奇妙な気配が漂う。懐中電灯を手に、息を潜めて歩く時間は、生活シミュレーションというよりアクションアドベンチャーに近い。

▲急に化け物が現れた!
初めて掟を破った際、村長・リンは主人公に罰を告げる。「罰は翌日から与える」――執行猶予期間があるのが、かえって恐ろしい。翌日、何が起きるのか。朝を迎えるまでの不安が、じわじわと積み重なる。

▲今すぐ罰を与えてくれた方が気がラクなんですけど……
ただその後も、夜の探索を繰り返すうち、プレイヤーも慣れてくる。怪異の訪問イベントが頻繁に発生するようになり、何も起きない日はむしろ物足りなさを感じるほど。昼間の穏やかな農作業と、夜の緊張が交互に訪れるリズムが本作の最大の魅力だ。緊張と緩和のバランスが絶妙で、どちらか一方に偏らない。

▲「だるまさんがころんだ」化け物にもいろんな種類がいる
続きが気になるストーリーと、一癖も二癖もあるキャラクターたち
ストーリーは続きが気になって仕方がない展開を見せる。村人たちは一癖も二癖もある個性豊かな面々だ。どのキャラも不穏な一面を抱えているように見える。
親友のピロちゃん(ヒヨコ)のために掟を破るヨウのような人物もいれば、他所からの移住者として好奇心のあまり掟を無視して冒険に出たがるユータのような人物も。基本的にはみんな優しいが、「それゆえの危うさ」も抱えている。

▲深夜に訪ねてくる幼女・ヨウ。村の掟はどうした?

▲案の定、怒られてしまうが……これ、実はもっと深刻な状況だったりする(※ネタバレになるため、これ以上は伏せる)

▲移住者のユータは好奇心旺盛。コイツもかなり危うい
一方で、トバリのように冷たく接してくる者もいる。村長の秘書であるコンノなんて、成金趣味でことあるごとに金銭を要求してくる。ただ彼らの過去や秘密が徐々に明らかになる過程は、ホラーというより人間ドラマに近い。筆者も「頼むから誰も死なないでくれ……」と祈りながらストーリーを進めている最中だ。

▲何やら訳アリの少女・トバリ

▲村長の秘書・コンノはともかく成金趣味。お手伝いをする側が何でお金を払わされるの……!
「夜廻」シリーズのスタッフらしい「日常の裏側に潜む異質さ」が、生活シミュレーションの枠組みの中で丁寧に描かれている。ジャンプスケア的な派手な怖さは少なく、じわじわと心に染み込む不穏さが主体だ。
ホラーが苦手な人向けに「あんしん暮しモード」も用意されており、昼間の暮らしだけを純粋に楽しむことも可能である。だが、重要なイベントが端折られてしまっているせいで、「何が起きているかわからず、かえって怖い」と感じさせる作りにもなっていると話題だ。

▲村人に認定されるための序盤の儀式。「あんしん暮しモード」では何が起きてるのかまったくわからず、逆に怖い
ホラーが苦手な方も、ぜひ本作の真価である、通常モードでこそ味わえる「ほのぼのとした日常と仄暗さの同居」を楽しんでもらえればと思う。
「はじめから知りたかった!」後悔ポイント
なお本作は、プレイを進める中で、「はじめから知っていれば……」と感じるポイントもいくつかあった。これからプレイを始める方への予習がてら、いくつか紹介しておこう。
ただ、これらはゲームの欠点というより、生活シミュレーションらしい「試行錯誤」の醍醐味でもある。以下では序盤の進行やゲームシステムに関するネタバレを含むため、事前情報なしで楽しみたい方は読み飛ばしてほしい。筆者と同じ「後悔」を味わっていただきたいので、個人的にもスルーしていただければ幸いだ。
・犬を呼んでファストトラベルしよう!
ストーリーの途中で家族として迎えることになる犬は、犬笛を使って呼ぶことで、家まで一瞬で帰ることができる。本作は1分が、現実世界でのほぼ1秒で経過してしまうので、「種を買ってすぐ植えたい」など頻繁に家と村を往復するような場合は、できるだけ活用したい。

▲犬笛を吹けばいつでも犬が迎えにきてくれる
・できた作物は、必ず一度は加工しないで出荷しよう!
できた農作物を出荷しないと、店の商品が増えない。筆者は「加工した方が高く売れるから」とすべて漬物に変えてから出荷していたが、村人から依頼されるような作物の種が一向に店にも入荷されず、「どういうことだろう?」と疑問に思うばかりで失敗してしまった。

▲新商品が入荷されると、サザンカのお店からお知らせが届く
・季節のカカシは季節が変わる前日に設置しよう!
季節が変わると、前の季節の農作物はすべて枯れてしまう。季節のカカシを置くと別の季節の農作物も育てられるが、一定期間のみ。カカシはなるべく季節が変わる前日に設置しておくのがおすすめだ。

▲季節が春から夏に変化。「春のカカシ」の周りの5×5マスだけ枯れていない(画面左下部分)
・実用性のありそうな「装飾品」に要注意!
店には実用性のない商品も多い。ホースや蛇口、ゴミ箱などは「ただの装飾品」でガッカリした。

▲畑の近くに置けばラクに水撒きできると思ったのに……無意味
・料理を作れるアイテムの効果はどれも一緒
はんごう、かまど、七輪と、料理を作れるアイテムはどれも機能が一緒。筆者は「七輪を作れば焼き魚が作れる?」と思って頑張って素材となる「木炭」を集めたのに、そうならず残念な思いをした。

▲「弘法筆を選ばず」……ってコト!?
・料理のレシピは1年目ではあまり役に立たないかも
料理のレシピは、村人から話を聞いたり、店のメニューを3回食べることで習得することができる。ただ、最初の1年目で必死にレシピばかり増やしても、材料が揃わずに作れないことが多い。筆者は、「まるごとキュウリ」くらいならキュウリとマヨネーズだけで作れそうと思って一度に3回食べてレシピを覚えたものの、味噌や塩が足りず、結局作れなくて後悔した。

▲「まるごとキュウリ」だけど味噌も塩も必須って……マヨだけありゃいいだろ!
こうした小さな発見や失望が、日常の一部として積み重なっていく。
総括――やめどきがわからない、お手本となる一作
『ほの暮しの庭』は、本当にやめどきがわからない作品だ。昼間は農作業やDIYに没頭し、夜は懐中電灯を握って村を徘徊する。キャラクターとの交流を深め、物語の続きを気にしながら、季節を重ねる。スローライフ×ホラーという珍しいジャンルながら、どちらも中途半端にせず、高い完成度で両立させている。

▲畑だけでなく、水田もつくれる。稲作やろうぜ!
今後、類似作品が作られていく上での一つの「お手本」になりそうだ。「牧場物語」や「Stardew Valley」系の生活シムが好きな人にも、「夜廻」や因習村ホラーが好きな人にも、両方に刺さる。時間を溶かす力は折り紙付きだ。

▲縁日イベントではカラーひよこが売っている。昭和の文化すぎてヤバイ
SNSではもうすでに60時間ほどプレイし、ストーリーをクリアしたという報告も数多く見られる。お恥ずかしながら筆者の彼ヶ津村での暮らしは35時間程度で、「盛り上がるのはまだまだこれから」といった具合。
これからプレイされる方は、掟を守りながら、あるいはあえて破りながら、自分なりの「ほの暮し」を見つけてもらいたい。昼の穏やかさと夜の仄暗さが交互に訪れる日々は、忘れがたいものになるはずだ。

▲高飛車な村長リンも、しっかり頑張る村人にはこうして手紙と報酬をくれる。わりと優しい面もあるじゃん……?
(文:平原学)
(執筆者: ガジェ通ゲーム班)
