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時代とともに進化を続けるニュージーランドの住宅建築。伝統的な木造住宅と最新式の住宅の違い、居住者の嗜好から大きく変化する住宅スタイル、そしてそこに付加する価値など、最新事情を見ていきましょう。※本記事では、オークランド在住で長年不動産ビジネスに携わる著者が、現地でしか掴めない不動産事情をレポートします。

築古から最新設備まで…厳冬の中で体感した、NZの住宅事情

日本では猛暑、酷暑が続く8月、南半球に位置するニュージーランドは真冬を迎えています。先日のオークランドは1℃、南島では雪が降り、気温もマイナスに。約30年、ニュージーランドに住んでいる身としても、オークランドの街でこんな寒い冬があっただろうかと考えてしまいます。

こんな冷え込む気温も、住宅の質を選ぶヒントなのだと思う出来事がありました。

ある日の午後「今日は寒いですね」とメッセージをもらい、久しぶりにご近所のお宅を訪問しました。

そこは木造で築50年になる家。暖炉はあるものの使っておらず、普段は電気ヒーター1つで暖を取っているといいます。訪ねたときにはヒーターはついておらず、室内は寒く、コートを着たままの滞在となりました。湿気も感じる典型的なニュージーランドの住宅です。

一方、別の日に仕事仲間の家へ行きました。同じく寒い日でしたが、昨年新築で購入した家の中は、ヒーターはついていないのに寒いと感じません。コンクリート造で、床は重厚感があり、窓ガラスは複層ガラスを使用。防音効果が得られるほどの高気密で、断熱効果もあるため暖かいのでしょう。

ちなみに我が家は築26年。日当たりの関係なのか冬は暖かく、夏は適度に涼しく、暖房といえば、フロアーヒーティング(床暖房)と、どうしても寒い日は小さなファンヒーターを付けるだけで1年を過ごせていましたが、今年は、それでは耐えきれないほど寒いのです。

●古い木造の昔ながらの家

●近代的で設備が充実した家

●古くもなく新しくもない木造で、設備は整っている家

と、3パターンの建築物で、この冬の現状を体感してきました。

賃借人の健康と居住環境の改善が目的!?「ヘルシーホーム基準」とは

ニュージーランドの昔ながらの家は、寒さ、湿気、カビ、換気不足などが問題となってきました。近代的な設備が整っている家は快適ですし、暖かいほうが健康にもよいでしょう。

しかし、大半の人が昔ながらの木造建築で住んでいます。

特に賃貸物件は持ち家に比べて住宅の質が低い傾向があることから、賃借人の健康と居住環境を改善する目的で、政府が「ヘルシーホーム基準」という基準を設けました。

基準の内容としては、断熱材と十分な暖房機能のある暖房機の設置、キッチン、バスルームの換気扇の設置、といったもので、高い設備基準が求められるようになりました。

ニュージーランドには医療無料制度があるため、これらは医療費削減の効果を見込んでのことだといわれています。

年々夏の暑さが厳しくなり、また、ホームオフィスとして日中に自宅にいる時間も長くなったため、昨年はわが家もエアコンを設置しました。

昨年はあまり使用せず過ごせましたが、この冬の寒さにはがまんできず、朝からガンガンエアコンで暖房をかけています。これも地球の異常気象の現れなのでしょうか。

家選びは「室内のスペック=質」が大切!

以上のことから、家を購入する際には、ロケーションや家のデザイン、立地、間取りなど、様々な希望のポイントはありつつも、室内のスペック=質も大事であることがお分かりいただけるかと思います。

たとえ外観が素敵でも、窓枠のサッシや、冷暖房設備の条件は気になります。特に築50年規模の家を選択する場合、冷暖房設備にどこまで投資するか、という問題が浮上します。既存の暖炉を使うのは情緒的ですが、エコな家電を使うのか、自分たちがどの方法で暑さや寒さに対応するのか、考える必要があるでしょう。

キッチンやシャワールームで立つときは、やはり、床暖房だと体全体が温まります。

しかし、マスターベッドルームのバスルームのみの設置で、ほかのバスルームに設置がなければ「建設会社が節約したのだな」とわかります。ゲストルームなら毎日使うわけではないのでかまいませんが、子ども部屋には設置したほうがいいのに…と、残念に思うのです。

また、最近の新築タウンハウスは、各部屋にシャワールームがついています。子ども1人に1部屋が割り当てられたら、小さいころから自分専用のバスルームを使う生活があたりまえになりますから、将来、シェアルームの下宿暮らしをすることがあれば大変です。

とはいえ、ゲスト滞在には重宝しますし、シェアハウス用としても運営できるデザインにもなっているのはメリットです。日本の多くの家は、お風呂は1つ。新築物件では、2つ設置の家も増えているようですが、やはりシャワールームが複数あると暮らしやすいのです。

コンパクトな都会の家か、田舎暮らしか…二極化する住宅の好み

従来のニュージーランドの家は、木造3ベッドルームに1つのバスルームが基本でした。そして敷地は1,000m2ぐらいでとても広いのです。それが二分割されるようになり、現在は4〜6分割した細長いタウンハウスとなり、3階建ても誕生し、どんどんコンパクト化しています。

土地価格の高騰、人口の増加、アジア人の増加で、庭の手入れが不要なシンプルな家を好む人が増えているのです。

海外からの移住者には、手ごろで近代的な設備の家が選ばれ、地元のニュージーランド人の若いカップルは、土地がなるべく広く、自分たちで改装して個性のある家を構築していく…というように、住宅の好みは二極化しているように感じます。

時代とともに人々の考え方や好みが変化し、経済の流れとともに都会に住む人々の住まいは変化してきています。

市内中心地は高額で手が届かない、あるいは、せわしない環境だから住みたくない、といった人たちは、田舎の方へ移動し「ライフスタイル・ブロック」と呼ばれる、牧草地にぽつんと家があるような場所での自然に囲まれた暮らしへと移行していきます。とくに自宅で仕事が可能な方、芸術家の方などが実践されています。

筆者は約30年の間、ニュージーランドの人々の暮らしを見てきましたが、人々がどのようにして個性ある暮らし、利便性のある暮らしを実現するのか、これからの10年で街がどう変わるのか、引き続き見守っていきたいと思います。

先日オープンホームを実施した家では、購入した家族がすでに入居していました。庭の手入れをするお父さんのそばで、お子さんたちがはしゃぎまわっています。ご家族のあたたかな日常の光景です。

筆者が案内に立つ、すぐ隣のオープンホームには、若いカップル、中年のカップル、親子連れなど、続々と内覧希望者の姿が続きます。

マイホームを購入した幸せな家族のお隣は、どんな方になるのでしょう。そんなことを思いながら、オープンホームの応対をしています。

投資物件を購入する方、マイホームとして購入される方、それぞれ観点は異なりますが、誰が見ても住みたいと思う家を購入されれば、投資用なら入居者を探しやすく、マイホーム用なら自らの満足感が高まります。

そして、いずれの場合も、将来売却される際の「人気の高さ」「売りやすさ」にもつながるのです。

一色 良子

ライセンスセールスコンサルタント
Harcourts Golden Links Real Estate LTD.