「日本には圧倒的な”個”が足りない」元日本代表・松井大輔が2026年W杯を徹底分析!映画『ブルーロック』に見るストライカー育成の鍵

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大ヒット公開中の映画『ブルーロック』。サッカー監修を務めた松井大輔と、高橋文哉をはじめとする出演者たちとの対談本「BLUE LOCK CROSS TALK KICKOFF EDITION」が発売された。クランクインまで1年以上をかけて、主演者たちにサッカーの基礎や各キャラクターの特徴的な動きを指導した松井。初めての練習から撮影までの舞台裏を出演者たちと語り、盛り上がった。

ここでは、今年開催されたFIFAワールドカップ2026を振り返り、日本がより強くなるための課題、FW(フォワード)強化への期待など、『ブルーロック』の描く“エゴ”や“育成論”の必要性を重ね合わせながら語ってもらった。

2026年W杯、日本代表の戦いを振り返って

グループリーグはとても順調だったと思います。初戦の対オランダ戦は引き分け、第2戦の対チュニジア戦は4−0、第3戦の対スウェーデン戦も引き分けでグループリーグ2位通過という結果で、日本がグループリーグを突破するのは“当たり前”の時代になってきました。一方でそこから先、今回からベスト32の勝ち抜き戦となった決勝トーナメントで、どういう戦いをしなければならないか。それが今後の大きな課題だと感じました。決勝トーナメントで当たった今年のブラジルは、圧倒的に強いというわけではなかった。勝てる可能性は低くない試合だったと僕は思っています。

日本チームのレベルは全体的にとても上がっています。今回の代表は5大リーグをはじめ海外リーグでプレーしている選手がほとんどという顔ぶれ。それでも決勝リーグを勝ち上がっていくという道のりはまだまだ険しいんだなと感じました。このW杯での戦いを経て、前田大然はプレミアへの移籍が決まったり、鈴木彩艶の活躍に国内外からの注目が集まったりというような収穫があったのはよかったなと思っています。

日本チームに足りなかったもの

僕が感じたのは、圧倒的な個の力。ハーランド、メッシ、エムバペのような選手が日本から出てきたらいいなと強く思いました。やっぱり絶対的なFWは、チームの勝利に欠かせませんから。日本に勝ったブラジルが次の試合でハーランドの「個」の2発に敗れたのは象徴的でしたよね。

今回のW杯、日本は怪我で替えのきかない選手たちを欠いたのが痛かったですし、またグループリーグを決めるくじ運もツキがなく、いろいろと不運が重なった大会だったなと思います。

森保(一)さんが監督としてやってきたこの8年間の内容は間違っていないと僕は思っていて、本来であればカウンターを打てる選手が不在で、後半に勝負をかけられたときにイングランドやブラジルとの親善試合でやったような日本の形を作れなかったというのは本当に不運でした。森保さんも選手たちも悔しい想いだったでしょう。ただ森保さんが掲げていた「誰が試合に出ても変わらない(戦術や強度を維持できる)チーム」というコンセプトは実践できていたのではないでしょうか。

日本のFW強化に思うこと

アルゼンチンは、サポーターのサッカーに賭けるハングリーさがケタ違いです。代表選手たちは、4年に一度のW杯に家や車を売って応援に来るという熱狂的なサポーターたちの前で戦わないといけない。“国のために”“メッシのために”というサポーターの熱い想いが選手たちに乗り移り、球際の強さや突破力のある攻撃に繋がっているのだと思います。僕もマイアミでアルゼンチン対カーボベルデ戦を観戦しましたが、アルゼンチンのサポーターがスタジアムをほとんど埋め尽くし、スタジアムの外からもたくさんの人々が熱く応援しているのを目の当たりにして、「この熱量があるからこそ、アルゼンチンチームは最後までドラマチックなサッカーを繰り広げたのだ」と実感しました。

日本のFWがより進化する(強くなる)には、それこそ、『ブルーロック』のようなプロジェクトをやるのもアリじゃないかと思います。実際、JFAはFWの選手だけを集めてストライカー合宿を行ったり、FWを早い段階で海外に連れて行き、現地チームの練習を受けさせたりというような取り組みをやっていましたしね。それから、FWにかぎらずサイドアタッカーなど攻撃を担う選手には、専属でコーチをつけるのも面白いんじゃないかなと思います。

ポジションごとに個別指導をして、個人のレベルを上げていく時代になってきたんじゃないかなと僕は感じていて。僕の現役時代、海外でプレーしている代表選手は多くありませんでしたが、今はナナさん(名波浩)や俊さん(中村俊輔)、高原(直泰)さんなど名の通ったアタッカーが日本代表のコーチを務めていたりしますから、今後はコーチ陣の指導の仕方も今までとは変わってくるかもしれません。

もちろん今大会の日本代表のFW陣も、前からのプレス含めて今持ちうる全ての能力を発揮して頑張ってくれたと思います。それだけにブラジル戦では勝利の女神に微笑んで欲しかったなという思いが強いです。

映画『ブルーロック』の公開にあたって

もともと映画は “観る”側でしたが、今回はサッカー監修ということで映画の製作現場に入り、俳優さんたちにサッカーの指導を行ったので、こういった立場から映画を観るのは初めてです。完成映像を見ると、俳優の皆さんのプレーシーンはサッカー選手として違和感なく、撮影までしっかり練習してプレー感覚を養ってくれていたのが伝わってきて感動しました。それぞれのキャラクターに紆余曲折があって物語が非常に面白いですし、俳優さんたちもみんな各キャラクターにすごく似ていて、カッコいい! とても見応えのある作品になっているなと思いました。

僕が『ブルーロック』で魅力を感じたのは、やはり世界的ストライカーを創り出すというテーマ。サッカー選手や監督、それぞれの考え方がありますが、僕は登場人物のひとりが言うとおり「サッカーは点を取ったヤツが一番偉い」と思っています。チームが勝つには突き抜けたFWの力が絶対に必要で、世界の強豪チームと比べて日本人選手にはやはりエゴ、強い個が足りないように感じます。

でも、とにかくエゴを貫ければいいのかというとそういうことでもありません。エゴが強くて性格が多少変わっていてもいいし、自分の考えに徹底的にこだわり、己のスタイルを貫くのもいいけれど、エゴばかり強くて結果を出さなければ、みんなから相手にされなくなり淘汰されていく。それはサッカーにかぎらず、どの世界でも同じだと思います。サッカーは団体競技。エゴとチームワーク、いい塩梅でいてくれるのがベストではあります。

『ブルーロック』には多様なFWが登場し、それぞれのアプローチで自分の武器を磨いていきます。日本のFWも今後、選手同士がエゴをぶつけ合い、どんどん育ってほしいと思いますね。

W杯で感じた「エゴの覚醒」

『ブルーロック』ではFW選手たちの“エゴの覚醒”がひとつのテーマになっていますが、W杯で僕が特に注目したのは、中村敬斗選手のプレー。自分の形にしっかりともっていっているなと感じました。一番後ろからサイドを駆け上がってペナルティエリアの中に入るというのは、彼にしかできなかった気がします。あそこからシュートまで持っていく、「自分が打つんだ」という姿勢にはサイドの選手としてのエゴを感じました。ああいったプレーができる選手がもっと出てくることで、日本は強くなるんじゃないかなと思います。

2030年のW杯に向けて僕が注目している選手は、今回代表に選ばれた後藤(啓介)、塩貝(健人)、鈴木(唯人)。サッカー日本代表の未来のためには、この選手たちにレベルアップしてほしいですね。

今回、改めて思ったことは、W杯前から期間中にかけて調子がいい選手は、W杯で活躍できるということです。当たり前のことだと思われるかもしれませんが、いろいろな巡り合わせがあり、W杯にピークをもってくるというのは決して簡単なことではありません。4年後の5〜7月にかけてしっかり調子を上げてくる、そして成長できる選手こそ、W杯で実力を発揮できるのだと思いました。

また、今の日本サッカーは「チーム全体で」という意識が強いですが、海外では「自分が試合で活躍しないと、お金を稼げない」と思っている選手が多いのは確かです。そういうハングリーな選手がいるチームと競るとなると、日本が世界で勝ち残るのは厳しいのかなと思います。チームの指針は監督によっても変わりますから、新しく代表監督に就任する大岩剛さんが今後、どんなチーム作りをしていくのか楽しみです。

『ブルーロック』は、日本から世界に通用するようなストライカーが生まれる、そんな夢を見せてくれる作品です。先ほどお話ししたように、JFAもFWを育てる取り組みをしっかりやっていますし、これからの日本サッカーの進化を楽しみに待ちたいと思います。

松井大輔

1981年5月11日生まれ。京都府出身。鹿児島実業高校卒業後、京都パープルサンガ(現・京都サンガF.C.)でプロデビュー。フランスやロシアなど海外5カ国でプレー。2010年W杯南アフリカ大会に日本代表として出場。2021年にはフットサルチームにも加入、二刀流で話題に。2024年に現役を引退。現在は日本フットサルトップリーグの理事長を務める。

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