AIバブル崩壊の真実…!一夜で数千億円をかっさらった「世界最強ファンド」が、若き天才を飲み込んだ「ヤバすぎる手法」

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暴落の裏で「若き天才」と「最強ファンド」が取引

生成AIブームを背景に急騰してきた半導体株やメモリ株が、6月後半から一転して歴史的な暴落に見舞われました。

前編では、その経緯を見てきました。

前編はこちら。『AIバブルに巣くう魔物が「大暴落」でついに現れた…!世界最強ファンドが一夜にしてかっさらった「えげつない金額」』

キオクシア株は、わずか1ヵ月で70%近く下落し、韓国市場でもサーキットブレーカーが相次ぐなど、AIバブルを支えてきた相場には激震が走りました。

しかし、その暴落の裏側では、窮地に陥った若き天才投資家と、世界最強のヘッジファンドによる異例の取引が進んでいました。

いったい、なにが起きていたのでしょうか。

詳しく見ていきましょう。

「兆円単位」のリターンを上げた若き英雄

この歴史的な取引の主役は二者いました。

一方は生成AIブームで巨額の利益を上げた若きファンド創業者、レオポルド・アッシェンブレンナー氏、もう一方は世界最大級のヘッジファンド、シタデルです。

前者のアッシェンブレンナー氏は、元オープンAIのリサーチャーです。

2024年、生成AIの普及によって恩恵を受ける産業を分析した160ページを超えるレポート『Situational Awareness(状況認識)』を発表し、一躍注目を集めました。

彼はこのレポートをもとに大物起業家らから資金を集め、同名のヘッジファンドを設立します。

投資戦略は明快でした。

AIブームの恩恵を受ける半導体やデータセンター関連銘柄を買い持ちする一方、AIによって市場を奪われるソフトウェア企業を空売りするというもので、この戦略は大当たりしました。

設立からわずか2年で運用資産は450億ドル(約7.2兆円)に膨らみ、初期の投資家は10倍を超えるリターンを得たとみられています。

2026年に入ってからも、6月末までに約440%という驚異的な運用成績を上げていました。

ところが、7月に入るとAI関連株は急反落します。

Situational Awarenessは約4倍という高いレバレッジをかけていたため、相場の下落とともに損失が一気に膨らみました。銀行から求められた追加証拠金にも応じられず、保有資産が差し押さえられる寸前まで追い込まれたのです。

アッシェンブレンナー氏は、まず既存の投資家に追加出資を求めました。しかし、それでは間に合わないと判断し、マーケットメーカー最大手のジェーン・ストリートや、大手ヘッジファンドに支援を求めます。

ここで、もう一方の主役が登場します。

一夜にして1兆円を荒稼ぎか?

この窮地で、最も素早く好条件を提示したのがシタデルでした。

シタデルは、Situational Awarenessが保有する上場株式のほぼすべてを、大幅なディスカウント価格で買い取りました。

『ウォール・ストリート・ジャーナル』によれば、市場価格を10%以上下回る水準で、市場関係者の間では20〜50%の値引きだったとの見方も出ています。

取引が公表されたのは7月30日ですが、翌31日には、急落していたキオクシア株がストップ高になるなど、世界のAI関連株は大きく反発しました。

シタデルは、安値で取得した直後から巨額の含み益を得たことになります。

いつでも売却できる上場株式を、市場価格より10〜50%も安く取得できる機会は、極めてまれです。しかも、相手が破綻寸前という限られた時間のなかで、巨額の資金を用意し、即座に取引を成立させられるプレーヤーは世界でも数社しかありません。

今回、その圧倒的な資金力を生かして勝者となったのがシタデルでした。

一夜にして数千億円、最大では1兆円を超える利益を得た可能性も指摘されています。

世界最強ファンドのえげつない戦略

この最強ファンドであるシタデルを創業したケン・グリフィン氏も、若いころから天才投資家として知られてきた人物です。

彼はハーバード大学の在学中から本格的な資産運用に乗り出し、なんと40年近く前に大学の寮の屋上に自費で衛星アンテナを取り付けて、日本の転換社債にも投資していたとして知られています。

彼が得意としていたのはコンバーチブル・アービトラージと呼ばれる転換社債と現物株の理論値からの乖離からリターンを得る手法で、相場全体の上げ下げにはよらずコンスタントにリターンをあげることを目指していました。

実際に、機関投資家を含めて多くの市場参加者が大きな損失を出した87年のブラックマンデーの際もリターンをあげたことで注目されます。

大学卒業後の89年に100万ドルを投資家から得て運用を開始したグリフィン氏は、90年に今のシタデルの元となるファンドを立ち上げ、40年近くにわたってリターンを上げ続けています。そして、今回のようにほかの業者の破綻や苦境をうまく利用して、ファンドの戦略を拡大することに過去何度も成功してきました。

その最大の成功例は01年の巨大エネルギー取引業者のエンロンの破綻です。

リーマンショックでは巨額の損失

エンロンは破綻しましたが、シタデルは同社のコモディティ取引チームの大半を吸収しました。さらに金融やエネルギーの実務家、気象学者など多様な専門家を集め、コモディティ取引を大きな収益を生む基幹戦略の一つに育て上げました。

その後、2008年のリーマンショックでは、シタデルも50%を超える巨額の損失を出しました。それでも何とか持ちこたえ、金融危機後に多くのファンドが失速するなか、着実にリターンを積み上げていきます。

さらに、この10年ほどで、取引仲介を担うシタデル・セキュリティーズも業界大手へと成長しました。いまやシタデルは、ヘッジファンド業界にとどまらず、米国の金融業界全体でも最強プレーヤーの一角とみられています。

シタデルの最大の強みは、市場に関する膨大なデータを集め、それを定量的に分析する力です。今回の取引でも、その力は発揮されたとみられています。

取引の数日前には、シタデル・セキュリティーズが「FRBがサプライズ利上げに踏み切る可能性がある」とするレポートを公表しました。これがAI関連株の一段安を招き、結果として取引成立を後押ししたとの見方も出ています。

さらに、アッシェンブレンナー氏は取引直後の週末に結婚式を控えていたとも報じられています。人生の大きな節目を前に、少しでも資産を確定しておきたいという心理をシタデルが見抜き、より有利な条件を引き出したのではないかとも噂されています。

多士済々のアメリカ市場

圧倒的な資金力とデータ分析力に加え、相手の心理まで巧みに読み取ったグリフィン氏。彼を前にして、若き天才として持てはやされたアッシェンブレンナー氏は敗れ、大きな教訓を得ることになりました。

ただし、これで終わりではありません。

アッシェンブレンナー氏は取引後もファンドを存続させ、守り抜いたアンソロピックなどの未上場株に加え、上場株の取引も続けると発表しています。

失敗しても何度でも再挑戦できるのが、米国社会の強さです。アッシェンブレンナー氏が今回の経験を糧に、金融業界でさらに飛躍する可能性も十分にあるでしょう。

AIバブルが今後も拡大するにせよ、このまま崩壊へ向かうにせよ、米国の金融市場には多彩な才能が集まっています。相場がどちらへ動いても、したたかに巨額の利益を上げるプレーヤーが、これからも現れることでしょう。

さらに連載記事『大谷翔平を見に「ドジャースタジアム」へ行って驚いた…!ビール×ホットドック=5000円で実感した日米スポーツ格差のヤバすぎる実態』でも、世界の経済事情をルポしているので、ぜひ参考になさってください。

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