「スカートめくりと変わらないですよね」だから性犯罪はなくならない…「盗撮をいたずらの延長と考える」高齢男性に見た“日本のヤバさ”
〈「100回くらい盗撮した」駅のホームで女性のリュックに体液をかけた30代教員も…《文科大臣も激怒!》“教員の性暴力”が止まらないワケ〉から続く
相次ぐ教員の性犯罪。「100回くらい盗撮した」という教員や、学年主任という立場でありながら教員グループで児童の盗撮画像をSNS共有していた事件など、学校現場での深刻な被害が表面化している。
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だが、こうした悪質な盗撮行為が横行する背景には、社会全体の「認識の甘さ」も影を落としている。2023年には撮影罪が施行され厳罰化が進む一方、いまだに「盗撮はいたずらの延長」「触られたわけではないから」と被害を矮小化する風潮は根強い。
なぜ盗撮行為は繰り返され、相談件数は急増し続けているのか。そして、オンライン上で歪んだ欲求を満たす加害者たちの心理とは――。依存症治療に向き合ってきた斉藤章佳氏の新刊『校内盗撮』(集英社インターナショナル)より社会に潜む危うさを浮き彫りにする。(全2回の2回目/最初から読む)

写真はイメージ ©getty
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オンラインコミュニティが「盗撮の引き金」に
先の名古屋市で発覚した教員グループによる盗撮事件を注視しながら、私の頭によぎったのが、大手中学受験塾で起こった盗撮事件でした。
事件の構造が酷似していたからです。
この事件の加害者は、元講師たちでした。
彼らは秘匿性の高いSNSを利用し、教え子である生徒の盗撮画像をグループ内で共有していました。
そこでは、「こんな画像を撮れるなんて、さすがですね」などと称賛し合い、歪んだ承認欲求を満たしていたのです。
さらには画像を投稿するだけでなく、塾内部のデータベースに不正アクセスし、生徒の住所や実名をSNSに投稿。
性加害する空想を書き込むなど、その内容は正視に堪えないほど悪質でした。
第一報はウェブメディアのスクープ記事でしたが、警察も総力を挙げて捜査に当たり、加害者の元講師たちは逮捕されました。
主犯格の男性については、私は加害者臨床の専門家として、保釈期間中に「司法サポートプログラム」に携わり、裁判では情状証人として出廷しました。
今も耳に残る「元講師の言葉」
この元講師の男が吐露した言葉は、今も私の耳に深く残っています。
「自分は成人女性どころか中学生に対しても欲望を抑制できない『純粋型』の小児性愛者で、合法的に性欲を発散させる方法がほとんどありません。法を遵守すること自体が生きづらさにつながる。だからこそ、同じ生きづらさを抱える人たちとオンラインでつながるようになったが、それがまさに犯行の引き金(トリガー)になりました」
彼は自らの苦悩を、このように語りました。
なお、裁判では保護観察付き執行猶予判決が下されています。
増え続ける盗撮被害
いうまでもなく盗撮は、れっきとした性犯罪です。
2023年7月には、相次ぐ盗撮被害を食い止めるべく「性的姿態撮影等処罰法(撮影罪)」が施行されました。
違反した場合には3年以下の懲役、または300万円以下の罰金が科せられます。
それまで盗撮は、各都道府県の迷惑防止条例で規制されてきましたが、自治体によって罰則や規制対象場所がバラバラで、特に罰則が軽いなどの理由から、より厳しい基準が求められてきました。
この撮影罪の誕生により、盗撮は全国一律の基準で厳格に禁じられることになったのです。
警察庁が発表した「令和7年の犯罪情勢」を見ると、新法の施行以降、盗撮の認知件数は増加傾向にあります。
2025年は9962件に達し、過去最多を更新。施行年の2023年は2538件、翌2024年は8436件でしたから、前年比で18%の増加です。そして、その8割超をスマートフォンによる撮影が占めています。
撮影罪では、典型的な盗撮だけでなく、アルコールで酩酊状態にさせ、拒否できない状態を利用して性的な姿を撮影する行為も摘発の対象となりました。
また、「誰にも見せないから」など噓をついて相手を信用させ、性的な姿を撮影した場合も撮影罪は成立します。
罪に問われるのは、撮影をする行為だけではありません。
盗撮画像を保存するだけで罪
撮影した画像を他人に送る「提供罪(3年以下の懲役、または300万円以下の罰金)」、自分のパソコンなどに保管する「保管罪(2年以下の懲役、または200万円以下の罰金)」、他人が性的な姿を盗撮した動画や画像を、そうと知りながら自分のパソコンにダウンロードする「記録罪(3年以下の懲役、または300万円以下の罰金)」、性的姿態等の画像や動画をライブストリーミングで不特定多数の者に送信する「送信罪(5年以下の懲役、または500万円以下の罰金)」など、さまざまな行為が規制対象となりました。
このような新しい法律の枠組みにより、これまで潜在化していた加害行為が可視化され、結果として盗撮全体の認知件数を押し上げているのだと考えられます。
私は日々、加害者側への対応を行っていますが、量刑が重くなっていることに加えて、公的なデータには現れない示談金の相場も、以前に比べて高額になっているように感じます。
なお、私が勤める榎本クリニックのデータからも、盗撮に関する相談件数の急増は明らかです。2006年5月から2020年3月までの間、窃視障害(盗撮、のぞき)と診断されたのは521人でしたが、スマホの普及とともに受診者数は激増。2020年4月から2025年9月までの5年半で500人あまり増え、これまで盗撮で当クリニックを受診した人は計1031人に及んでいます。
あくまで単純計算ですが、2006年から2020年までの受診者は年間平均で約37人。これが2020年からの5年半では約93人ですから、約2.5倍のペースで受診者が増加しているのです。
社会の意識が変わる痴漢
警察庁のデータによれば、痴漢の検挙件数は、2019年には2789件でしたが、コロナ禍で約1900件に激減。
その後、2022年には2233件と、痴漢には盗撮のような劇的な増加傾向はみられません。
私が、拙著『男が痴漢になる理由』(イースト・プレス)を上梓したのが2017年。これまで「性欲がコントロールできないモンスター」がやるものと思われていた痴漢行為は、実は「四大卒・既婚者・会社員」というどこにでもいる普通の男性が加害者の多くを占めていたこと、ストレスコーピング(対処法)の脆弱性と依存症の側面があること、そして何より重大な性犯罪であることを論じた本書は、メディアからの反響が大きく、私のもとに取材依頼が多数舞い込みました。
これと前後して、依存症治療や性暴力の専門家による類書が続々と出版され、「痴漢は性暴力である」という正しい認識が、少しずつ広がっているように思えます。
痴漢被害が深刻な東京都でも、小池百合子都知事の主導のもと、2023年に庁内横断の「痴漢撲滅プロジェクト」が発足しました。
被害実態の調査には毎年5000万円の予算が投じられ、私も有識者のひとりとして毎年データに目を通し意見を述べています。
受験期の痴漢撲滅キャンペーンも、その一例です。
「1月は女子高生を痴漢し放題」と書き込む輩
毎年1月に実施される大学入試共通テストの時期になると、インターネット上には「入試は遅刻厳禁だから、女子高生を痴漢し放題」「センター試験に遅刻できないから、痴漢しても我慢するので狙い目」など、試験に絶対に遅刻できない受験生の心理につけ込むような痴漢予告が拡散されます。
2020年には悪辣な書き込みが1000件を超えたという報道もあるほどです。なかには試験日に痴漢被害に遭い、動揺のあまり試験で実力を十分に発揮できなかった受験生もいるようです。
こうした卑劣な犯行を防ぐため、都は毎年1月に大規模な啓発活動を行っています。JR山手線に痴漢撲滅を訴える「ラッピングトレイン」を走行させるのも、その一例です。
実は、痴漢は1月に急増するわけではありません。
データ上、痴漢がもっとも増えるのは4月から5月、満員電車や街に不慣れな新入生や新社会人が増える時期だといわれています。
それでも毎年1月の入試時期のタイミングに合わせて、「学生を守る」「痴漢は許さない」という姿勢を都が明確に打ち出す姿勢は、社会的に大きな意義があると思います。
かつては、痴漢などの性犯罪防止といえば、「夜道をひとりで歩かない」「露出の多い服装をしない」など被害者側に自衛を強いる論調が目立ちました。
しかし、最近では「アクティブバイスタンダー(行動する傍観者)」の役割が重視されています。
これは痴漢被害を目撃した際、見て見ぬふりをせず、安全に配慮しながら介入し、被害を防ぐ第三者のことです。
最新の調査では、電車内で痴漢被害を目撃した際に77.3%の人が何らかの行動を起こしており、第三者介入の重要性が広く知られるようになり、世の中の大きな変化を感じます。
「スカートめくりと変わらないですよね」
社会全体で痴漢への厳罰意識は高まっていますが、盗撮についてはどうでしょうか。結論からいえば、盗撮への認識は依然として甘いのが現状です。
性犯罪には「接触型」と「非接触型」があります。接触型とは、相手の身体に同意なく触れる性犯罪です。痴漢、不同意性交(いわゆるレイプ)、小児性暴力、監禁などが、これに分類されます。
「性犯罪」と聞いて一般的に多くの人が真っ先にイメージする加害行為が、この接触型の性犯罪でしょう。
対して非接触型は、相手の身体に触れることなく完結する性犯罪です。盗撮はその代表格で、その他にものぞき、露出、下着窃盗などが非接触型に含まれます。
非接触型の性犯罪は、たとえ被害に遭っても被害者はその事実に気づきにくいので、いざ被害を訴えても「触られたわけでもあるまいし」「大げさだ。自意識過剰なのでは」などと被害が軽視・矮小化されやすい傾向があります。そのため、盗撮の被害者はどうしても泣き寝入りせざるをえません。
当然ながら、「非接触型だから」といって被害が軽いわけではありません。これは以前、とある自治体で講演をしたときの出来事です。
その自治体の要職にある年配の男性が、「盗撮の問題が増えているのはわかりました。でも盗撮って、スカートめくりと大して変わらないですよね」と発言したのです。
スカートめくりも「性暴力」
「同意なき性的行為は、すべて性暴力」という原理に照らせば、スカートめくりも盗撮も、明白な性暴力です。
しかし盗撮は彼にとって、昭和の時代の漫画に描かれていた、「いたずらとしてのスカートめくり」の延長線上にあったのでしょう。
だからこそ、被害を矮小化する言葉がふいに出たのだと思います。
令和となった今では、社会の意識は少しずつ変わってきていますし、ご家庭でもスカートめくりやカンチョーなどを「子どものいたずら」ではなく、れっきとした性暴力だと伝えている保護者が増えています。
しかし、行政の上層部にいる人間の意識が変わらないままで、はたして子どもを校内盗撮などの性暴力から守りきれるのか――そう疑問を抱かざるをえませんでした。
(斉藤 章佳/Webオリジナル(外部転載))
