「パワハラ騒動でスタッフは疲弊」「ウチの俳優の見せ場を増やして」…『VIVANT』の制作現場で起きていたこと
2023年に放送された、堺雅人主演の日曜劇場『VIVANT』(TBS系)。
堺以外にも阿部寛、二階堂ふみ、役所広司、松坂桃李、二宮和也、濱田岳といった大物キャストがズラリと集結した同作は、堺演じる商社マン・乃木が誤送金された巨額資金を追って海外へ向かうところから始まり、最終的には警視庁公安部の諜報戦に発展する、過去に類を見ない壮大なアドベンチャードラマだ。
複雑に張り巡らされた伏線や謎が話を追うごとに注目され、最終回では19.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区、世帯視聴率)というハイレベルな視聴率をマークし、見逃し配信でも反響を呼んだ。
そんな『VIVANT』の続編がこの夏、2クール連続放送で帰ってきた。
TBSも社運を賭けて莫大な製作費を費やし、1話(表記上では11話)は驚異的な18.8%という高視聴率を記録。2日にオンエアされた第2話(12話)も16.4%と数字的にはやや落ち込んだものの、Xのトレンドワードで2週連続世界1位を獲得するなど、その存在感を見せつけている。
ところが、業界関係者の見方は違う。
前編記事「『VIVANT』は「見どころがない」とバッサリ…高視聴率も、業界人のホンネは」では、世間の高評価とは異なる業界関係者によるVIVANT評をお届けした。
後編記事では、豪華キャストが揃う同作ならではのキャスト事情や、演出家のパワハラ騒動で疲弊する制作陣の裏側を、引き続き業界関係者に語ってもらう。
日本ロケはスケジュール調整に苦労
制作会社でドラマのキャスティング担当を務める女性プロデューサー・C氏はこんな懸念点を挙げた。
「これだけの豪華キャストが並んでいることは同作最大の強みでありつつ、一人ひとりの出演シーンが前作以上に短くなってきており、キャラクターの掘り下げがどんどん浅くなっている。結果として、どの登場人物にも感情移入できない作品になってしまうリスクがあると感じています。
ハラハラするストーリー展開が魅力的な作品とはいえ、やっぱりドラマの肝はキャラクターの魅力。前作は勢いのままに見続けられましたが、2クール体制ということを考慮すると、キャラクターの心情をしっかり描かないと一気に数字を落とすのでは……」
また、C氏からはキャスティング担当ならではの意見も飛び出した。
「ドラマの制作現場では、出演者のスケジュール調整が最大の難関。これだけの大物俳優たちを抱えていると、日程を確保するだけで調整コストと労力がかかる。
海外ロケは同作のために日程を空けていましたが、日本でのロケは各々の仕事の影響もあったので、パッチワーク的なシーンを作らざるを得なかったようです」
俳優陣のプライドや事務所の意向を配慮
また、C氏は関係者からこんな話も聞いたそうだ。
「俳優陣のモチベーション維持も大変だったようです。これだけのスター俳優が集まれば、当然『自分の見せ場をもっと増やしてほしい』という要望も出てくる。脚本家や演出家は、そうした俳優陣のプライドや事務所の意向にも配慮しながら、登場シーンやセリフの量を調整しなければならなかったとか。
前作の場合、1話時点ではそこまで高視聴率(11.5%)ではなかったので事務所の要望も少なかったようですが、人気作として帰ってきた続編はアレコレと注文が多かったそうです」
俳優や事務所のわがままによる演出変更がストーリーを面白くするとは思えないが……。
さらに、前編記事に登場したドラマライター・B氏は『VIVANT』が他の夏ドラマに食われてしまう可能性も示唆する。
「今クールは視聴率以上に評判の良い作品がそろっている。同じTBSで放送されている蒼井優さん主演の『Tシャツが乾くまで』は見逃し配信が絶好調ですし、他局でも山田涼介さん主演の『一次元の挿し木』(日本テレビ系)や玉森裕太さん主演の『マイ・フィクション』(テレビ朝日系)もジワジワと評価を上げています。どれも脚本が丁寧に練られていて視聴者の満足度が高い。
そして、いずれの作品にも共通するのが“考察要素”という点です。不倫ドラマでありながら謎がふんだんに織り交ぜられている『Tシャツが乾くまで』は女性からの熱狂的な支持がありますし、『一次元の挿し木』や『マイ・フィクション』は考察要素が比較的分かりやすく、若者の視聴者が多い。つまり、考察ドラマ好きの女性や若者は『VIVANT』よりもこの3作を求めている。
中高年層のリーチは十分取れている『VIVANT』が20〜30%超えを狙うには、女性や20代の視聴者が必要ですが、夏クールの間は厳しいかもしれませんね」
パワハラ騒動とスタッフの疲弊
最後に、フリーディレクターとしてプライム帯ドラマにも携わったことのあるD氏が『VIVANT』最大の不安要素を語ってくれた。
「同作の演出・原作・プロデュースを務める福澤克雄さんによるパワハラ騒動は大きな問題にこそなりませんでしたが、やはり現場の雰囲気は良いものではなかったようです。
多くのスタッフが福澤さんに萎縮してしまい、演出や照明、カメラワークがかなり独善的なモノになってしまったみたいです。『日曜劇場』をヒットさせてきた手腕は本物だと思いますが、若いスタッフの意見を取り入れない限りは新しいドラマを作れない。
また、長期撮影でスタッフは肉体的にも精神的にも消耗しきっているようです。秋から放送される2クール目の編集作業がおろそかにならないかが非常に心配です」
せっかくの大規模な海外ロケも、雑な編集で映像のクオリティを下げてしまっては本末転倒だろう。
『VIVANT』は歴史を塗り替えるドラマになるか
ここまで、高視聴率を続ける『VIVANT』が失敗する可能性や不安材料について、業界人たちによるさまざまな厳しい意見をまとめてきた。
しかし、彼らの多くは心底では同作のヒットを信じている――。
なぜなら、『VIVANT』のように世界的ヒットを期待できるドラマが生まれない限り、日本のドラマの進化や成長はないからだ。
令和になって以降の視聴率トップは『半沢直樹』(2020年)最終話の44.1%。
『VIVANT』は、これを超えることができるのか。はたまた、業界人の予想通り沈んでしまうのか。ぜひ本編を視聴して、その結果を“考察”してみてほしい。
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