《イオンモール熊本爆発》避難後になぜ再入館できた?ハビタ幹部は「気をつけて行ってらっしゃいと…モール職員は引き止めなかった」と主張、イオンは「運用を徹底できなかった可能性」
熊本地震直後にイオンモール熊本(嘉島町)で起きた爆発で亡くなった、いずれもテナント従業員の7人の中には、いったん避難した後に勤務先の指示や本人の意思により建物内に戻って爆発に巻き込まれた人がいる。
【写真】ハビタ取締役営業部長の湯瀬剛二氏、悲しみに溢れていた葬儀、八代市、宇城市の地震の爪痕など
避難した人の再入館はイオンモールのルールで禁じられていたが、イオンは「再入館を認めないという社内ルールを徹底できなかった可能性もある」と認め、外部専門家による事故調査委員会で詳しく調べると表明した。
ルールが徹底されていなかった可能性も
亡くなった大竹玖瑠美さん(22)とBさん(女性)の2人が勤めていたコスメ・生活雑貨セレクトショップ「ハビタ」の取締役営業部長・湯瀬剛二氏は5日、集英社オンラインの取材に、7月28日夕の地震直後に、当日休暇を取っていたイオンモール熊本店の店長に「戻れるのであれば売上金を金庫に保管してほしい。ただ、イオンが戻っていいと言わない限りは入ったらダメ」と指示したと説明した。
この指示を店長から受けた大竹さんら2人がモール内に戻っていた同日午後5時50分ごろ、LPガス漏れが原因である可能性が指摘されている爆発が起きた。湯瀬氏は「私の指示がなければ、こういうことは起こらなかった。それはもう間違いのない事実と思っております」と述べ謝罪している。
湯瀬氏は上野景真社長から指図されたのではなく、指示は自分の判断だったと強調。自分自身がイオンモール熊本から約14キロ離れた菊陽町の店舗のそばで地震に遭遇した後、この店舗が入る商業施設の支配人から一時入館を認められたことから、イオンモール熊本店を含む他の4店舗側に、“入居している建物の管理者の許可があれば”との条件をつけて店に戻っての作業を求めたと説明した。(#8)
またハビタは独自の災害対応マニュアルをもっていないため、イオンモール熊本店では災害時はモールの対応に従うことになっていたという。
そのイオンの吉⽥昭夫社長は7月29日に「⼀旦避難をした者は館内に⼊らないというのが我々のマニュアルのルールになっております」と述べている。
だがいっぽうで、地震発生時に館内にいた計約4500人の客と従業員は約30分で全員がいったん屋外に退避したものの、「⾞のキーだとか⾃分が家に帰るための⾝⽀度みたいなものを取りに戻った」人がいたとの未確認情報があるとも話し、ルールが徹底されていなかった可能性を示唆していた。
湯瀬氏によると、ハビタのイオンモール店のスタッフがルールを把握していたかどうかは「確認はできていない」という。
モール職員から「気をつけて行ってらっしゃい」と見送られていた?
状況を整理すると、ハビタでは再入館を禁止するルールがあるイオンモールに入居する店のスタッフに、ルール上あり得ない「戻れるのであれば」との条件付きで店に戻る指示が出された。さらに、現場で再入館の統制が厳格に行なわれなかったため、大竹さんらがモール内に入ることができてしまった可能性がある。
湯瀬氏は指示をした自身の責任は認めながら、大竹さんらの再入館をなぜモール側が「許可をした」(湯浅氏の見解)のか知りたいとの姿勢だ。取材に対し、モールに入ろうとした大竹さんらをモール側職員が引き留めなかったことをうかがわせる情報があると話した。
「爆発翌日、イオンモール熊本店の店長に、顔見知りのモールの事務所職員が『私、(大竹さんとBさんの)2人を最後に見たんだけれども、大丈夫だった?』と心配して電話をかけてきてくれたんです。
そのかたが言った(最後に会った時の)会話というのが、『気をつけて行ってらっしゃい』『行ってきます』というニュアンスだったといいます。それで、(2人は)笑顔で入っていっちゃったと」(湯瀬氏)
事務所職員の話では、大竹さんらに再入館をやめるよう引き留めたことは感じられなかったという。
こうしたやり取りがあったとの情報を把握した取材班が、イオンに尋ねると、同社は6日夕、
「ハビタ様との間でご指摘のやり取りがあったかは、当社として現時点で確認できておりません。避難後は再入館を認めない運用を前提としていましたが、多数避難と施設特性も相まって、出入口での抑止や周知を含む運用が十分に徹底できなかった可能性があります。現在、避難後の状況について丁寧に聞き取りを行っています」
と回答した。
「スタッフを抑えるのは不可能だった」と説明を受けた湯瀬氏
いっぽう、湯瀬氏は爆発後に再入館の禁止措置が実質的にとられていたのかイオンに尋ねたという。
「イオンの災害対策本部に出かけて行き、中までは入れなかったんですけど対応していただきました。『なんで(再入館の)許可をしたんだ』という話はさせていただきました」(湯瀬氏)
同氏の説明ではイオン側はその際、
「当日、現場は騒然としており、出ていく人を整理するのが精一杯で、複数ある入口から(入ろうとする)スタッフを抑えるのは不可能だった。自動扉は近づけば勝手に開いてしまう。入ろうと思えば入れるので」
との趣旨の説明をしたという。
こうした湯瀬氏の主張が事実かについてイオンに確認を求めると同社は、
「ご指摘のやり取りがあったかは、当社として現時点で確認できておりません」
とした上で、
「避難後、施設の安全確認が完了し、避難解除のアナウンスがなされる前に再入館があったという事実に対し、当社として重く受け止め、その経緯および当日の運用について事故調査委員会において検証のうえ、その原因と再発防止策を明らかにしてまいります」
と表明した。
イオンは5日に外部専門家で構成された事故調査委員会を設置すると決めた
イオンモール熊本ではほかにも、出店しているオンワードホールディングス(HD)の従業員3人がいったん施設外に避難した後にモール内に戻り、爆発に巻き込まれ死亡している。
同社が8月4日に公表した経緯によれば、従業員は爆発前、福岡市内にいた営業担当者に電話で「貴重品を取るために店舗に戻ることができた」と報告し、驚いた営業担当者が「速やかに施設の外に出るよう」指示したという。しかしその後爆発が起きて3人の連絡は途絶え、後に所持品を持った状態で遺体で見つかったという。
いっぽう、ハビタの大竹さんとBさんは自分から店内に戻りたいという意思表示はしていないと湯瀬氏は認めている。
遵守されていればこうした人たちが亡くなることはなかったはずの再入館禁止ルールがなぜ徹底されなかったのか。イオンが5日に設置を決めた「事故調査委員会」は外部専門家で構成される予定で、人的被害発生の原因解明と再発防止策の提言も同委に委嘱するとしている。
悲劇を繰り返さないため、徹底した真相解明が望まれる。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
