【ライブレポート】ゆとりくん、経営者兼アーティストだから描ける表現の可能性「この制約があるからこそ、俺は面白くなっている」

ゆとりくんが7月18日、東京・代官山UNITにて<ゆとりくん本気の独演(奏)会>を開催した。2nd EP『ミラーボールを消して』と著書『自分の言葉で話せるようになりましょう。』の発売を記念したこのイベントは、チケットソールドアウト。“トークショーと音楽ライブが融合したような構成になる”と事前に聞いていたが、果たしてどんなステージになるのか。
観客と「TAO〜!」と挨拶を交わしたゆとりくんが最初に始めたのは、まさかのプレゼンテーションだった。「代官山UNITでKeynote使ってプレゼンし始める人、いる?」と本人も笑いながら口にした通り、確かにライブハウスではほとんど見ない光景だ。


約20分にわたって語られたのは、自著にも通ずる“自分の言葉で話せていますか?”という問いだった。SNSでは“それっぽい”語りが求められるが、正解も不正解も時が経てば容易にひっくり返るスナップショットに過ぎない。AIが“それらしい答え”を量産する時代だからこそ、自分の持っている物語、感覚、揺らぎがエッジになる──そう語ったゆとりくんは、会場全員に5秒間目を閉じさせるワークを通じて、自分の中に何かが芽生える感覚を体感させた。普段の会話の瞬発的なテンポの中では、“自分の言葉”はなかなか出てこない。だからこそ、自分を待ち、相手を待つこと。そうして「希望的な感覚で自分自身を信じてみてもいいんじゃないか」と観客に語りかけた。
ここで「長々と言葉を喋ったんですけど、ここからは感覚で楽しんでいただければ」と、サポートメンバーの有元キイチ(G)、大蔵倫太郎(B / 新東京)、保田優真(Dr / 新東京)が呼び込まれる。そして「常に正解と不正解がひっくり返される世の中で、みなさんはひっくり返す側であってほしい」という言葉とともに、EPの1曲目でもあるロックンロールナンバー「fashion」が鳴らされた。プレゼンテーションからライブへ、モードを切り替えるというよりも、地続きのまま移行していくような自然さが印象的だった。


2曲目の「スピってる」でエスニック×トランス的なサウンドを響かせたあとは、YOSHIKI EZAKIが登場。「turn go」「VintageTee☆」を連続で披露して、フロアの熱量を一気に引き上げた。エネルギッシュなパフォーマンスを終えると、YOSHIKIについて「若い才能です。初期衝動を思い出させてもらってるというか」と語ったゆとりくん。YOSHIKIも「(ゆとりくんは)曲作りがめちゃくちゃ早いです」と制作時のエピソードを明かし、互いを刺激し合う関係性が垣間見えた。
MCを挟み、次のブロックでは、14年来の付き合いだというKOHEIが登場。EP収録曲「feel real me」に加え、69(無垢)の楽曲「junk(ey)」「Y2N」「FRANKIE」を歌った。KOHEIの伸びやかなハイトーンとゆとりくんの中低音域のラップが心地よく絡み合うなか、9曲目の「PARADOX」ではアバンティーズのSoraも合流し、力強いラップを披露した。曲を重ねるごとにフロアの熱量は増し、ゆとりくんも「気持ちいい! ショート動画見るより脳汁出る!」と高揚感を露わにする。

「自分を信じることがなかなか難しくても、自分を信じてくれる友達を信じることは結構簡単にできると思う」と語った直後、長年の友達であるKOHEIとともに歌ったのは「pool」。続く「TAO」のイントロが鳴り、観客が一際大きな歓声を上げると、ゆとりくんも「神曲!」と頷いた。フロアでハンドワイパーが揺れるなか、肩を組んで歌う2人の表情からは、この時間を心から楽しんでいることが伝わってきた。
KOHEIを送り出したあと、ゆとりくんは、「独演(奏)会なので」と切り出して一人で語り始めた。2018年にyutoriを創業した彼は、注目が集まるきっかけになるのではと考え、「国内ファッション業界史上最年少・最短での上場」という“記号”を求めて奔走。2024年にその目標を実現し、yutoriという企業は間違いなく有名になった。一方で、ゆとりくん自身は、煌びやかなその王冠の重さに打ちひしがれてしまう日もあった。当時の痛みや苦しみから生まれたのが、『ミラーボールを消して』に収録された曲たちだった。そうした創作活動を経た今は、「この制約(≒記号)があるからこそ、俺は面白くなっている」と感じているという。

「俺は、痛みや苦しみから作品を作るっていう新しい人生の転がし方を得て、人生というゲームを、もっと複雑にさせたいなって思いました。今日は制約のないすごくフリーダムな空間だけど、みんなも連休が明けたらまた、制約のある空間に帰っていくわけじゃないですか。自分も持っている制約が、自分を輝かせてくれるきっかけになるんじゃないかという視点で見られたら、意外と、毎日が面白くなるんじゃないかと思います」
「途方もないくらい離れた距離感で自分のことを俯瞰することもあれば、顔と顔を突き合わせるくらい情熱的な瞬間もあって。両方含めて人生だし、俺は文化的なことも、資本主義的なこともずっとやり続けて、自分だけの循環を作りたい。みんなも、どっちも大事にしてくれればいいなと思います」
「記号を掴め。記号に閉じ込められろ。記号に閉じ込められても抗えない自分の感情を見つけて、そこから何かを作り出して、記号を利用して、記号を追い越して、記号からはぐれ続けてください」
そうしてMCを結ぶと、始まったのは「ハグレモノ」だ。yutoriの企業理念と自身の人生観を落とし込んだ一曲。手のひらを掲げて揺れる観客を目掛けて、ゆとりくんが言葉で積み上げてきた思想が、音楽となって解き放たれた瞬間だった。本編ラストを飾ったのは、EPのラストナンバーでもある「バブりたい」。ミラーボールや色とりどりの照明が場内を照らすなか、それぞれが自由に揺れるフロアの光景は祝祭そのものだった。


アンコールでは、リリース前の新曲「bootleg」を初披露したほか、観客からのお悩み相談にその場で応えるコーナーも実施。最後は観客から歌ってほしい曲を募り、一番大きな声が上がった「バブりたい」で締め括った。さらに、ソニー・ミュージック内のレーベル“Echoes”への所属も電撃発表された。経営者兼アーティストだからこそ描ける表現の可能性を、この日鮮やかに示したゆとりくん。次にどんな音楽を鳴らすのか、期待は膨らむばかりだ。
取材・文◎蜂須賀ちなみ
撮影◎小林弘輔
■<ゆとりくん本気の独演(奏)会>7月18日(土) 東京・代官山UNIT セットリスト
01.fashion
02.スピってる
03.turn go feat.YOSHIKI EZAKI
04.VintageTee☆ feat.YOSHIKI EZAKI
05.feel real me feat.KOHEI
06.junk(ey) feat.KOHEI
07.Y2N feat.KOHEI
08.FRANKIE feat.KOHEI
09.PARADOX feat.KOHEI, Sora
10.pool feat.KOHEI
11.TAO feat.KOHEI
12.ハグレモノ
13.バブりたい
encore
14.bootleg
15.バブりたい

■2nd EP『ミラーボールを消して』
2026年7月3日(金)配信開始
配信リンク:https://linkco.re/HzuTBYYd
01 fashion
作詞・作曲:ゆとりくん, ゆうやけしはす 編曲:ゆうやけしはす
02 turn go (feat. YOSHIKI EZAKI)
作詞:ゆとりくん 作曲:ゆとりくん, YOSHIKI EZAKI 編曲:YOSHIKI EZAKI
03 PARADOX (feat. KOHEI, Sora)
作詞:ゆとりくん, YOSHIKI EZAKI, Sora 作曲:ゆとりくん, YOSHIKI EZAKI 編曲:YOSHIKI EZAKI
04 feel real me
作詞:ゆとりくん 作曲:ゆとりくん, James Caramel 編曲:James Caramel
05 バブりたい
作詞:ゆとりくん 作曲:ゆとりくん, チバニャン 編曲:チバニャン

■番組『ゆとりくんクンcuun!!』
放送局:interfm (東京:89.7 MHz / 横浜:76.5 MHz)
DJ:ゆとりくん
放送日時:毎週土曜日21:30〜21:55 (25分番組)
番組HP:https://www.interfm.co.jp/yutori-kun
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