DAZN(matteo_it/Shutterstock.com)

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 月額「980円」と表示されていたため契約したところ、実際は中途解約できない年間契約だった――。DAZNの料金表示をめぐる騒動は、消費者を誤解させる「ダークパターン」に当たるのか。消費者保護に関する法に詳しい龍谷大学教授で一般社団法人ダークパターン対策協会理事のカライスコスアントニオス氏に話を聞いた。

(2026年7月13日に「新潮QUE」で配信した記事をもとに再構成しました)

DAZNの表示は「ダークパターン」に該当する

 ダークパターンとは、消費者にあえて誤解を生じさせたり、困らせたりして、本来は望んでいないような行為や契約をさせるために使われるデザインや技術のことを言います。

 たとえば、「カウントダウンタイマー」という表示方法があります。あと何分でこのセールは終わりだということを表示するものですが、その残り時間を見て焦り、必要のない商品を購入してしまうといった失敗をしたことのある消費者もいると思います。そこで、本当にセールが終わっているのであれば基本的にダークパターンには該当しないのですが、偽のカウントダウンタイマーで誤解を生じさせてプレッシャーをかけたものの、翌日も同じカウントダウンタイマーが表示されている。そういうものが「ダークパターン」ということになります。

DAZN(matteo_it/Shutterstock.com)

 今回の「DAZN サッカー」の料金プランの問題については、以下の3つの理由で、ダークパターンに該当する要素が見られると思っています。

 1つ目は、DAZNサッカープランとして月額「980円」が大きな文字で書いてあり、その3桁の数字が目立つように表示されているという点です。しかし、これは実質的には年間契約でした。支払いは月々の支払いなのですが、中途解約ができない年間契約のため、月額980円ということを強調すると消費者に誤解を招きます。

 次に、中途解約が不可能な年間契約であることが、料金プラン表示の枠の下部に小さな白い文字で表示されており、視認しづらいということです。本来であれば、そこを赤い文字で表示したり、下線を引いて分かりやすくするべきであるところを、注目されないように表示しています。

 3つ目が、サッカープランの「月額980円」の表示の隣に、スタンダードプランの月額「1980円」も表示されており、比較させるようなユーザーインターフェースを使っているというところです。月額「980円」とだけ表示されていれば、これは年間契約だ、解約ができないんだということに気がつく可能性も少し高くなります。一方で、このように並べられて表示されてしまうと、消費者は「同じ月額プランの中で1番安い」ということで誤解をしてしまいます。

 今回のDAZNの場合は、強度の誤解が生じるという部分において「ダークパターン」であると思います。情報自体は正しく書いてありますが、その表示の仕方が適切ではないので、消費者は誤解したうえでこのプランを購入してしまっています。

消費者が紛らわしい表記に騙されないために

 消費者としてどのようにダークパターンを回避するか。特にインターネット上で商品やサービスなどの消費行動をする場合は、自分であらかじめルールを決めておくといいと思います。例えば、商品を購入する際に一息を置く。「一息置く」と言っても抽象的で実行するのは難しいと思いますので、たとえば絶対に10分間は契約期間や解約条件、色々なプランを比較したり考える時間を作ると決めましょう。そして料金だけではなく、何が書かれているのか、記載内容を一通り確認します。ダークパターンについては教材もあり、消費者庁なども注意喚起をしていますので、あらかじめ少し時間を取ってそういうものを調べておき、過去にこういう問題があると分かるだけでも、ダークパターンに気づきやすくなります。

 もちろん消費者教育は大事なのですが、法制度として、情報がすべて載っているかだけではなくて、その表示の方法やデザインなどもきちんと規制した方がいい段階にきています。実際に消費者庁では特商法や消費者契約法などの改正検討会が立ち上がっており、私も改正検討会のメンバーの一人ですが、法制度としてしっかりとダークパターンの禁止をすればよいと思っています。

 ダークパターンでの最大の問題はダークパターンを悪質な形で使う業者が市場シェアを奪ってしまうところです。今回のDAZNの事案も含めて、炎上したものや話題になるものは報道されて注目を集める一方で、ダークパターンをまったく使っていないウェブサイトは中々取り上げられていません。そういう健全な事業者が損をしてしまうような形になりますので、そこを法制度の整備などで変えていきたいと思っているところです。

 企業はダークパターン的手法を取ることで、短期的には収益を上げられるかもしれませんが、中長期的に見ると、企業イメージを毀損するレピュテーションのリスクがあり、特にSNSの時代では簡単に炎上してしまいます。一昔前であればダークパターンという現象が認識されていなかったので、消費者も何か問題があるのだろうぐらいで済みましたが、今ではダークパターンという言葉が浸透し、ユーザー側もそういうものに敏感になっています。今回のようなことが起きると、企業はより強く炎上したり、ダメージが大きくなります。短期的には収益拡大の手法としては有効ですが、持続可能な手法ではないです。

 提供されているサービスの質が良くて、企業の体制が良かったりしても、こういうことが発覚すると、レピュテーションへのダメージやコストがすごく大きなものになります。業界的な常識だけではなく、一般的な消費者の視点から、表示の方法やユーザーインターフェースを再度検討してほしい。そのほうが長期的な信頼を獲得できるので、企業にとってのビジネス上のメリットも大きいと思います。

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「新潮QUE」にて公開中の関連記事【「DAZN」の料金表示が「ダークパターン」といえる3つの要素――消費者がとるべき対策とは】では、景品表示法や特定商取引法などの法的な問題点や企業がダークパターンを繰り返す背景などについてより詳しく報じている。

カライスコス アントニオス
龍谷大学法学部教授。博士(法学)。専門は民法・消費者法。一般社団法人ダークパターン対策協会の理事。「ダークパターン」やデジタル時代の消費者保護を研究し、消費者庁の検討会委員なども務める。

デイリー新潮編集部