ナイキ のテレビ広告かアディダスのSNSか、W杯商戦の勝者は?

記事のポイント
ナイキは大会スポンサーではないものの、2022年大会の2.5倍のユニフォームを販売し、W杯の恩恵を受けている。
アディダスはチームユニフォームの販売シェアでナイキを上回り、スポンサーシップとソーシャルメディアを軸にファンとの接点を広げている。
ナイキがテレビ広告で幅広い視聴者を狙う一方、アディダスはソーシャルメディア上で試合を語る熱心なサッカーファンに重点を置いている。
ナイキが発表した第2四半期決算には、この米アパレルメーカーが、大会のスポンサーではないにもかかわらず「FIFAの恩恵」を享受していることをうかがわせる手がかりがいくつか含まれていた。
ナイキCEOのエリオット・ヒル氏によれば、同社は2022年大会の際に売れたユニフォームの2.5倍を販売したという。
「ワールドカップは、つねに自分たちの真価を証明する機会だ。スポーツのなかでもっとも過酷な戦場のひとつであり、我々は最高の状態で臨んでいる」と、ヒル氏は述べた。
通年の売上高成長が前年比で横ばいとなり、直販が減少したにもかかわらず、ナイキの直近の決算に対して市場は好意的に反応した。
特に、特に卸売事業の売り上げの伸びに好反応を示した。卸売は、ヒル氏がかねて同社の長期的な回復のカギに位置づけてきた販売チャネルである。
一方で、初期の小売データによれば、アディダスの商品販売も大会前半に急増したとみられる。
消費データ分析会社のMサイエンス(M Science)のデータによると、チームユニフォームの販売シェアでアディダスは58%を占め、ナイキの36%を上回った。
キャンペーン戦略で分かれた両社のアプローチ
両社ともワールドカップ開幕前に華やかなブランドキャンペーンを打ち出したものの、大会が本格化したいま、両者の戦略、つまりスポンサーシップとソーシャル重視か、それともアウトサイダーの立場に大型のテレビ広告出稿を組み合わせるかの違いがより明確になってきた。
メディアアドバイザリー企業のメディアセンス(Mediasense)の分析によれば、アディダスのスポンサーシップ施策とブランドキャンペーン(「Backyard legends」)は、FIFAパートナーのなかでもっとも成功しており、サッカー文化との親和性、ファンの参加、そしてキャンペーン自体の「拡張性」の点で高く評価された。
一方、ナイキの半ば型破り的な「Rip the Script」のスポット広告は、キャンペーンを数十もの個別の場面へと切り分け、クリップ化する手段を同社にもたらした。このスポットの終盤で「悪役」としてハーランドを起用した判断も賢明に映る。このノルウェー人ストライカーは、ブラジルを鮮やかに沈めたことで、より広い人々の意識に食い込んだからだ。
「アディダスのキャンペーンは、より伝統的な大きなクリエイティブアイデアだ。一方のナイキは、それをフランチャイズとして捉えた。各ブランドはコンテンツをスケールさせているが、ナイキはカルチャーをスケールさせている」と、メディアセンスのグローバルグロース担当バイスプレジデント、イシャン・チャタジー氏は語った。
とはいえ、勝負の行方はまだ大きく残されている。
勝ち残り8チームのキット供給の行方
キットのスポンサーシップは、スポーツウエアメーカーにとって、ワールドカップの象徴的な瞬間に自社の刻印を残す機会となる。
アディダスは14、ナイキは12のキットで大会をスタートしたが、勝ち残った8チームのうち、ナイキとアディダスのデザインはそれぞれ3チームずつをまとっている。11チームでスタートしたスポーツ用品ブランドのプーマ(Puma)も、モロッコとスイスの2チームがベスト8まで残った。
数のうえでの話は別として、アディダスがベルギー向けに手がけたマグリット風のアウェイシャツは、ベスト8まで勝ち残ったキットのなかで間違いなくもっともクールな一着だろう。
テレビに賭けるナイキ、ソーシャルメディアに張るアディダス
大会の開幕とともに、両社はメディア投資のギアを一段引き上げた。米国におけるナイキのより大きな資金力が見てとれる。
広告分析ツールのアドクラリティ(AdClarity)の数字によると、5月1日から6月30日までのあいだに、両ブランドは合わせて5280万ドル(約79億2000万円)の広告費を投じた。この米国ブランドは、その期間を通じてドイツの競合を上回る額を投じ続けた。
とりわけアドクラリティのデータは、ナイキが5月から6月にかけて支出の多くをテレビに集中させ、メディア支出全体に占めるテレビの割合を42.9%から50%へと高めたことを示した。これはおそらく、アディダスのようなスポンサーであれば得られていたであろうブランド認知を、埋め合わせようとする試みだ。
実際、ナイキはワールドカップ期間中、リニアテレビで広告を出稿したブランドのなかでもっとも多く目にされた1社となっている。
TV広告計測企業のアイスポット(iSpot)のデータによれば、同社はこれまでにスポット広告を80回放映しており、これを上回ったのはホームセンター大手のホームデポ(Home Depot)だけだった。対照的に、アディダスは調査対象ブランドのなかで30位にとどまり、スポット広告の放映は32回だった。
一方、アディダスは、会話が生まれている場所、すなわちソーシャルメディアに予算を投じた。5月から6月にかけて、同社はペイドソーシャルへの投資を強化した。ちょうどナイキが、メタ(Meta)傘下のサービスやTikTokへの支出を絞り込んでいたのと同じ時期だ。
これによって、大会の最終盤に向けたきれいな構図が整った。ナイキは自宅で試合を観戦する視聴者に訴えかけてブランドの脚光を奪おうとし、アディダスは残る各試合の一喜一憂をオンラインで語り合う熱心なサッカーファンを狙うかたちになった。
[原文:Nike versus Adidas: Who’s spending more in race to claim the World Cup crown?]
Sam Bradley(翻訳、編集:藏西隆介)
