Aピラーから生えた左側だけのミラーが「初期モノ」の証! フェラーリ・テスタロッサのなかでもファンが熱視線を向ける「モノスペッキオ」とは

この記事をまとめると
■1984年に登場したテスタロッサは美しいデザインでBBシリーズを刷新した
■初期型「モノスペッキオ」は特徴的な片側ミラーなど独自仕様で人気を集める
■希少性の高さから現在はクラシック・フェラーリとして価値が高まっている
美しいスタイリングで度肝を抜いた
それは1984年のパリ・サロンが開幕する前夜のことだった。パリのシャンゼリゼ通りにあるクラブ・ド・リドを舞台に、フェラーリはそれまで「365GTB4BB」、「512BB」、「512BBi」と進化を続けてきた一連の12気筒ミッドシップ、BBシリーズに代わるニューモデルを初披露。
それに与えられた車名は、1950年代から1960年代にかけてワールド・スポーツカー・チャンピオンシップ参戦のために製作されたレーシングカーのそれに由来する「テスタロッサ」だった。ちなみにテスタロッサとはイタリア語で「赤い頭」を意味する言葉で、これはテスタロッサ(TR)の名を掲げた最初のモデル、「500TR」に搭載された直列4気筒エンジンのカムカバーが赤く塗装されていたことがそもそものはじまり。

その後「250TR」などフェラーリはさまざまなテスタロッサを送り出すが、じつはこのなかには赤いカムカバーをもたないモデルも存在する。テスタロッサはその進化の過程で、フェラーリ製レーシングスポーツのサブネームとしてそれが用いられるようになったのだ。
話を1984年に誕生したテスタロッサに戻すことにしよう。その名のとおり確かに赤いカムカバーをもつエンジンは、正確には排気量4942ccの180度V型12気筒で、これはそれまでの512BBiと変わることころはない。最大の特徴は新たにDOHC 4バルブヘッドが与えられたことで、最高出力と最大トルクはいずれもヨーロッパ仕様で390馬力、490Nmと発表されていた。これに5速MTを組み合わせ、0-100km/h加速では5.8秒、そして最高速では290km/hを可能にするというのが、発表時にフェラーリから公表された主要なスペックだった。

だがこのテスタロッサのデビューに立ち会った者を驚かせたのは、その数字よりもむしろBBシリーズから劇的に変化した、エレガントの極みともいえるスタイリングだったに違いない。ピニンファリーナの手によって描かれたテスタロッサのボディは流麗でかつ華やかな印象を抱かせるもの。ドアからリヤフェンダーにかけて設けられたフィンはその印象をさらに強める効果を生み出している。もちろんテスタロッサのボディは美しさのみならず、優秀なエアロダイナミクスをもち合わせていた。
ディテールが異なる「モノスペッキオ」
そのテスタロッサのなかでもとくに人気が高いのは、もっとも初期に生産された、すなわちピニンファリーナのオリジナルデザインにもっとも近い仕様だ。一目でそれを見わけることができるポイントは、モノスペッキオ(Monospecchio)」と呼ばれるドライバーサイドのAピラー中央部にマウントされるサイドミラー。ミラー本体のデザインがエアロダイナミクスを意識したものであるのはもちろんで、それを支持するのは2本の細いアーム。のちに多くのメーカーがそれを採用したことからもフェラーリの先進性が伺える。

そのほかには、ヨーロッパ仕様ではタイヤがミシュラン製のTRX規格とされたこと。そして組み合わされるホイールがセンターロック式となることなども見逃せない(このホイールは中期型でも継続して採用されているが)。さらにリヤバンパー内のグリルが5条であることも初期型の特徴。
インテリアに目を向ければ、リヤビュー・ミラーが室内灯のケーシングにマウントされていること、サイドミラーのコントロールスイッチの位置や形状が、以後のモデルとは異なるものであることにも気づくかもしれない。

このようなさまざまな特徴をもつ初期型テスタロッサ=モノスペッキオは、当然のことながらフェラーリのエンスージアストからは非常に高く評価されるモデルだ。テスタロッサそのものの価値が、現在ではクラシック・フェラーリとして高まりを見せるなかで、ますます貴重な存在となっているモノスペッキオ。先日開催されたRMサザビーズのモナコ・オークションでは、1986年式のモデルが34万2500ユーロ(約6400万円)というプライスで落札されている。その人気は今後もさらに高まりそうだ。
