「好きだった」16の少年を連れ去った37歳の女…「千葉→広島」1ヵ月近くの逃避行の“果て”

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両親を交えて4人で話したが…

「相手のことが好きだったし、付き合っていたので、何とかしてあげたいって気持ちがありました」

16歳の少年を親の許可なく連れ去った37歳の女は、裁判で動機をこのように述べた。

「’26年3月31日、千葉県警は未成年者誘拐の疑いで広島市の無職・白根江莉(えり)被告(37)を逮捕したと発表しました。白根被告は昨年11月にSNSで知り合った千葉県内在住のA君(当時16歳)が未成年と知りながら広島市内にある自宅に連れ去り、寝泊まりさせるなどして誘拐した疑いです。

同月にA君の保護者から行方不明届が出され、捜査した結果、被告人宅でA君を見つけたということです。今年の2月に再び連れ去ったことからA君の両親が告訴状を出し、逮捕されることとなりました。白根被告は容疑を認めていましたがA君は『白根さんとは付き合っている。彼女と1mmでも離れるのなら何も話さない』と供述したそうです」(全国紙社会部記者)

’26年7月2日、千葉地裁で白根被告の初公判が開かれ、即日結審した。

検察官が読み上げた起訴状や冒頭陳述などから明らかになった白根被告の犯行。それはA君の両親から反対され、何度も注意されたにもかかわらず、二回りほど年下の少年に執着した結果だった。

上は水色のシャツ、下は黒のスウェットで入廷した白根被告は身長150cmほどと小柄。色白で髪を後ろでひとつにまとめた姿は、一見、年齢よりずいぶん若く見えた。

’25年7月ごろ、白根被告はTikTokを通じてA君と知り合った。そして11月にA君の両親に無断で広島市内の自宅にA君を寝泊まりさせたという。A君の母親が行方不明届を出したことから事件が発覚。2人の関係をA君の両親も知ることとなった。

A君の母親が、「Aが18歳になるまで(交際は)待ってほしい」と伝えたにもかかわらず、再三にわたって連れ去りを繰り返したため、今年の2月中旬には千葉県内の警察署で白根被告とA君、A君の両親の4人で警察官を交えての話し合いが持たれている。この時点ではまだ、A君の母親は11月の誘拐に対しての告訴状を留保していた。

家出をしたA君とふたたび合流

この話し合いの様子を、検察官は冒頭陳述のなかでこう読み上げている。

「Aの母および父は被告人に対し、Aとの交際を認めない旨を伝え、同席した警察官から被告人が再びAの両親に無断でAを連れ去れば、犯罪に当たり、逮捕されうる旨を教えられ、被告人はこれらを認識しました」

話し合いの席で、白根被告は「健全な交際をしたかったけど(両親)2人に言われたから、一緒にいるのは無理です」などと言って、A君に別れを告げていた。そしてその日のうちに「広島に帰る」と約束したという。

しかし、A君は話し合い直後に母親を突き飛ばして家出。白根被告と連絡を取り、A君の知人宅で合流した。翌日、警察官が白根被告に電話すると、「栃木の知り合いのところにいます」と嘘をつき、A君と一緒にいることを隠した。

その後、2人は広島に向かって移動を開始する。

まず白根被告はTikTokで知り合ったという愛知県内の男性と連絡を取った。彼に千葉まで車で迎えに来てもらい、その後A君とともにその男性宅で2週間ほど過ごしている。そして、やはりTikTokで知り合ったという広島市内の女性に愛知まで車で迎えに来てもらい、その女性宅でA君とともに過ごした後、白根被告の自宅に帰った。その間、A君の両親は行方不明届を出している。

そして3月25日、2人が喧嘩しているところを110番通報される。駆け付けた警察官がその場でA君を保護。白根被告は逮捕されることとなった。

白根被告によると、A君は両親との折り合いが悪く家を出たがっていたのだという。A君に「まずは、ご両親にちゃんとお話ししたほうがいい」と話したところ、A君からこう言われたそうだ。

「話したところで、白根さんと別れさせられる。白根さんともう二度と会えなくなってしまうというのが怖い」

「A君には近づかない」と言ったにもかかわらず、彼と合流し、広島に向かったときの気持ちについて白根被告は「怖かったです。これは誘拐になることはわかっていました」と述べている。

「今後は子供としっかり向き合いたい」

広島にはA君とTikTokでつながりのあった知人もいたため、「A君は毎日、楽しそうに遊んでいた」(白根被告)という。そのうえで、白根被告は次のように謝罪の言葉を口にした。

「自分は成人していて、相手は未成年者であるにもかかわらず、そこで引き返せなかったこと、帰らせられなかったことに対しては申し訳なかったと思っております」

白根被告には別居中の夫がおり、その間に小学生の男の子がいる。今後はA君との関係を絶ち、現在施設に預けている子供のために母親としての自覚を持って生きていくとして、このように述べていた。

「今回、逮捕されてこういう事態になって、冷静に考えることができました。いまの住居を引き払って、子供のいる施設の近くに引っ越し、今後はしっかり子供と向き合っていきたいっていうのが一番になります。母親としてしっかりやっていきたいっていうのが、いまの私にはあります」

論告弁論で検察官は、「本件誘拐期間は1ヵ月弱と長期間にわたっており、監護権侵害の程度は大きい」「警察官から厳重に注意を受けながらも、何度も同種の行為に及んでおり、被害者に対する執着は強いため同種犯行に及ぶ恐れが大きい」などとして、「拘禁刑1年6ヵ月」を求刑。

一方、弁護人は「被害者が非常に強い意思で被告人との同行、同居を求めていた事案である」と述べ、「今後被害者に連絡を取らないこと、SNS等を利用しないこと、住居や電話番号の変更も含めて生活基盤の見直しをすることを約束している」などとして、「執行猶予判決を望む次第であります」と主張した。

「もし、今後A君が連絡を取ってきたらどうするか」という裁判官の質問に「もう一切、対応しません。近くに現れたら警察を呼びます」と述べた白根被告。「これまでA君からお金を受け取ったことや、性交渉はありましたか」という弁護人の質問には「ないです」と答えている。

冒頭のように、A君のことが好きだという感情だけではなく、「家にいたくないというA君の気持ちをなんとかしてあげたかった」とも述べていたが、今回の逮捕を機に再出発することができるだろうか。

判決は7月15日に言い渡される予定だ。

取材・文・写真:中平良