「不必要に相手を怒らせることは勝負の上で悪手」王国ブラジルの逆鱗に触れた“塩貝発言”の是非「謝るようなことではないだろうが…」【識者コラム】
「(ブラジルは)昔は強かったけど、今はどうなんですかね」
「(日本に対してたくさんゴールを決めているが)それは昔のネイマールじゃないですか。今は大丈夫だと思います」
試合前に発した発言は、「思い上がり」「不遜」と王国ブラジルの逆鱗に触れることになった。そのインパクトは思った以上で、ブラジルの選手たちが「目にもの見せてやる」と高ぶっていた。日本がブラジルに1−2と逆転負けし、「思い知ったか!」というブラジル人の反発は増幅。塩貝のインスタグラムにも非難のメッセージが送られているようだ。
塩貝は奔放でやんちゃな性格で、思ったことをそのまま口にしたと言われる。正直な意見に過ぎず、「何ら問題ない」という声も少なくない。「勝気な若者は貴重で、むしろ擁護するべき」という意見だ。
たしかに、野心的な姿勢は悪ではない。ストライカーとして、その意気やよし、と言ったところか。物怖じしない性格を反映するように、ピッチでの彼はコンタクトに負けず、しつこく貪欲にゴールを狙いに行ける。21歳という若さもあるし、弱気の方が悪なのも間違いない。
ただ、対戦相手に礼を欠くような発言を選手は慎むできだろう。彼は記者でも、解説者でもない。たとえ事実を口にしただけでも、「昔は強かったけど、今はたいしたことない」という声が、もし対戦相手の立場で伝わってきたら、不快で、気分が悪く、波紋が広がるのは必定。少なくとも「どんどん言え」と奨励するものではない。
なぜなら、不必要に相手を怒らせることは勝負の上で悪手だからだ。
かつてFCバルセロナの主将であるカルレス・プジョールは、ブラジル人選手が敵地で大量得点を決めた後、相手を揶揄するゴールパフォーマンスをした時、ぴしゃりと叱りつけていた。相手を怒らせることは危険が伴う。戦場のようにピリピリした状況で、想定外の暴力も生まれかねず、長期離脱につながるようなケガになるファウルを受ける可能性もあるのだ。
単純に、怒りで相手の集中力が増すこともあるだろう。その場合、挑発行為(しようと思ったかどうかは関係ない)は味方を窮地に陥れる。敵を侮るような言動は、チームに何の利益ももたらさない。
「やんちゃでかっこいい!」
そんな浅はかな意見もあるようだが、不用心な発言がブラジルの闘争心の火にガソリンをくべていたとしたら―――。それは重大事と言える。
別に謝るようなことではないだろう。しかし次は控えるべきだし、教訓にできないならプロとして報いを受ける。敵への敬意には用心深くあるべきで、無邪気さ、無垢さ、そして無知は時に罪だ。
文●小宮良之
【著者プロフィール】こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
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