トイ・ストーリー5 が示すコラボグッズの威力。500億円の露出効果を期待

記事のポイント
『トイ・ストーリー5』の大ヒットを背景に、映画IPとのコラボはブランドにとって新規顧客獲得を担う標準的なマーケティング手法になっている。
ドクター・スクワッチはIPコラボを「トロイの木馬」と位置付け、多世代に響く商品設計で親世代と子どもへのアプローチを狙っている。
スマーティパンツは初のライセンス提携として『トイ・ストーリー5』を選び、ブランドパーパスと作品を結び付けた360度キャンペーンを展開している。
米国とカナダでは、ディズニー(Disney)の新作の興行収入が1億6000万ドル(約258億円)を超え、シリーズ21年の歴史のなかで過去最高のデビューを記録した。
エンタメ系メディアのデッドライン(Deadline)によると、同作は3日間で全世界で3億1200万ドル(約503億円)の興行収入を上げ、中国での公開を除くと、『インサイド・ヘッド2』に次いでピクサー(Pixar)映画として歴代2位の記録となった。
ブランド各社は公開に先んじて動き、長年続く『トイ・ストーリー』シリーズの多世代にわたる訴求力に乗り出してきた。石鹸やシャツ、玩具といった商品は、夏のあいだ小売各社の棚や広告キャンペーンを賑わせることになる。
ドクター・スクワッチの「トロイの木馬」
男性向けパーソナルケアブランドのドクター・スクワッチでブランドマーケティングディレクターを務めるアーヴ・スロボツカヤ氏は、5月に発売した『トイ・ストーリー5』の限定商品をめぐって前向きな勢いが出ていると語った。
同ブランドは、シリーズにインスパイアされた3種の石鹸と2種のデオドラントを発売した。そのなかには、ウッディ(Woody)にインスパイアされた「ハウディ・ヒーロー(Howdy Hero)」の香りも含まれ、スネークルート(ヘビ根)のエキスにデザートセージ、温かみのあるバニラ、そしてレザーをブレンドしている。
狙いは、かつて『トイ・ストーリー』のファンだった大人たちと、まだ同ブランドを知らない可能性のある彼らの子どもたちの双方に、これらの香りが響くことである。
「これまでのパートナーシップのほとんどで、新規顧客の獲得において目に見える成果が出ている。私はよく、IPパートナーシップを新たなオーディエンスへの一種の『トロイの木馬』と呼んでいる」とスロボドスカヤ氏は言う。
映画コラボは「標準」の局面へ
『トイ・ストーリー5』とのコラボレーションのラッシュは、ブランドとIPの適切な組み合わせを見つけることが、あればうれしい程度のものではなく、標準的なマーケティングの機会になっていることを示している。
消費者はおそらく、2023年の夏以降、店頭でのコラボレーションが増えたことに気づいているだろう。グレタ・ガーウィグ監督の映画『バービー』(Barbie)が、ギャップ(Gap)、パックサン(PacSun)、フォーエバー21(Forever 21)といったアパレル企業から、OPI、NYX、キッチュ(Kitsch)といったビューティー・パーソナルケア企業まで、100件を超えるブランドコラボを生み出した時期だ。
その後、2024年秋に『ウィキッド』(Wicked)が公開されると、店にはピンクとグリーンの商品があふれた。続編の『ウィキッド 永遠の約束』は、400件を超えるブランドパートナーシップにつながった。
『ウィキッド 永遠の約束』のタイアップの一部には、レゴ(Lego)、ファンコ(Funko)、マテル(Mattel)といった企業による、予想どおりの玩具やグッズが含まれていた。だが同作は日用消費財(CPG)の領域にも踏み込み、P&Gなどの企業と組んで、洗濯用洗剤の「ゲイン(Gain)」や「ダウン パワーウォッシュ(Dawn PowerWash)」といったライセンス限定の家庭用品を展開した。
その結果、メディア露出やプロモーションの価値は3億3000万ドル(約532億円)を超え、最初の数カ月で約280億インプレッションを記録した。
『トイ・ストーリー5』も同じくらいのインパクトをもたらすかもしれない。ブランド各社が、子どもたちと、このシリーズとともに育った親世代の両方の注目を集めようとしているからだ。IPを主要な成長戦略に据えてきたシンプルモダン(Simple Modern)は、ランチボックスや水筒といった商品を販売しながら、『トイ・ストーリー』をテーマにしたグッズを新学期シーズンに結びつけている。
スーツケースブランドのアウェイ(Away)は、個々のキャラクターをテーマにしたキャリーケースやバックパック、そのほかのアクセサリーのラインを発売した。またシューパレス(Shoe Palace)は、ウッディとジェシーにインスパイアされたカウボーイテーマのグッズを含む、アパレルとアクセサリーのコレクションを発売した。
玩具や子ども向けグッズの分野では、家電ブランドのベルキン(Belkin)が、新作に登場するタブレットのキャラクター「リリーパッド」にインスパイアされたiPadケースを発売。子ども向けオーディオプレーヤーのトーニーズ(Tonies)は、物語や音楽で遊べる『トイ・ストーリー』キャラクターの新ラインを展開している。
スマーティパンツ、初のライセンス提携
商品の枠を超えてパートナーシップを広げようとするブランドもある。スマーティパンツ(SmartyPants)は、主力商品「キッズマルチ(Kids Multi)」と「オメガ(Omegas)」向けに『トイ・ストーリー』ブランドの限定パッケージを発売し、同社初のライセンスタイアップとなった。
それに合わせて、ソーシャルメディア、小売店頭、オンライン動画、podcast、ストリーミング動画にまたがる「Fuel Their Imagination(想像力に燃料を)」と題した360度キャンペーンを開始した。
ブランドコミュニケーション担当シニアディレクターのエイミー・アヴェラー氏は、このパートナーシップはライセンス商品のSKUやメディア出稿にとどまらないものをめざしていると語った。ブランドをより大きな文化的な瞬間に結びつけることも意図しているという。
スマーティパンツはインフルエンサーを集めたトリップを開催し、今後開かれるロラパルーザ(Lollapalooza)の「キッザパルーザ(Kidzapalooza)」イベントにもこのパートナーシップを持ち込む予定だ。
「これをユニークにしているのは、コンテンツからコマースにいたるまで、一元的にコーディネートされたブランドとしての瞬間を作り出している点だ」と、彼女はModern Retailに語った。
アヴェラー氏によれば、スマーティパンツ初のブランドタイアップとして『トイ・ストーリー5』を選んだのは理にかなっていた。『トイ・ストーリー5』が健全な子どもの成長という強いテーマを持っているからだ。
物語では、昔ながらの玩具とタブレットのあいだの緊張関係を軸に展開する。2011年に立ち上げられたユニリーバ(Unilever)傘下の同ブランドは、自社のメッセージでも科学的根拠にもとづく栄養と認知発達に焦点を当てることが多い。
このキャンペーンは、注目度の高いタイミングで、ブランド認知の上乗せ、文化的な関連性、そして最終的には購入検討をもたらすように設計されている、とアヴェラー氏は語った。
ただし、このパートナーシップとさまざまなタッチポイントを練り上げるにはおよそ1年を要したという。そこには、法務、ブランド、商品、小売、メディアの各チーム、そしてもちろんディズニーのチームとの調整も含まれ、パートナーシップが最終的にブランドにふさわしいと感じられるものにするためだった。
「最大の学びは、パートナーシップが単にマーケティング上の価値を付加するだけでなく、自社のブランドパーパスに対して本物でなければならないということだ」と彼女は語った。
「初めてIPパートナーシップに参入するブランドにとって、この機会は相手の資産を借りてくることではなく、自社のブランドの真実と、消費者がすでに愛しているものとのあいだに、意味のある架け橋を築くことにある」。
「飽きさせない」ためのIP活用
ドクター・スクワッチのスロボツカヤ氏は、チームは『トイ・ストーリー5』の多世代への訴求力に焦点を当てたかったと語った。
それは、キャラクターを想起させつつも、幅広い層にアピールできる香りを考案することを意味していた。なぜなら、男性や男の子の製品を実際に購入するのは、彼らの生活圏にいる母親、妻、あるいはガールフレンドであることが多いからだ。
「『トイ・ストーリー』は、我々が多世代的だと捉えている数少ないシリーズのひとつだ。1作目が公開されたのは私が5歳のときで、いまでは同世代の仲間たちが自分の子どもと一緒に映画館で観ている」と彼は語った。
また、今回のコラボレーションは、ドクター・スクワッチと、同社が新しく展開している女性向けパーソナルケアライン「ジュークボックス(Jukebox)」の双方をまたぐ初のIPコラボとなった。
オンラインまたは店頭でこのコレクションに10ドル(約1500円)以上を使った人は、レシートを送ると、ファンダンゴ(Fandango)で使える『トイ・ストーリー5』の映画チケット5ドル(約750円)分のプロモーションコードを受け取ることができる。
スロボドスカヤ氏は、IPコラボを成功させるための重要な要素のひとつとして「消費者の飽き(疲弊)」を回避することを挙げる。旬のキャラクターをあしらった製品が世の中に溢れかえるなかで、際立つことは容易ではないからだ。
同氏によると、同社のチームは、単に既存の製品に「ロゴを貼り付ける」だけではなく、そのIPを深く理解し、香りを通じてそれを形にする方法を模索することに注力している。
そのうえで、初期の販売データと、時間の経過とともに商品を集めたりソーシャル投稿で取り上げたりするファンダムの広がりを見て、成功を測る。たとえば、同社の「ファイトクラブ(Fight Club)」コレクションの商品は、イーベイ(ebay)などの再販サイトで小売価格の2倍以上で売られている。
スロボツカヤ氏によると、2026年のワールドカップの公式スポンサーでもある同社は、ほかにもいくつかのIPコラボを用意しているという。
「過去5年間の学びに基づき、我々は何が自社の顧客層を動かすのかを正確に絞り込むことができるようになった。2021年に正しかったことは、おそらく2026年の現在には通用しないのだ」。
[原文:Brands aim for multi-generational appeal with 'Toy Story 5' collabs]
Melissa Daniels(翻訳、編集:藏西隆介)
