北中米W杯で日本代表はまたしても決勝トーナメント初戦の壁に阻まれたが、FW前田大然(セルティック)は4年前のカタール大会以上の存在感を示した。代名詞の猛烈なハイプレスに磨きがかかり、それに加えて2大会連続ゴールを記録するなど攻撃面でも進化を証明した。

 今大会3試合目の先発出場となったブラジル戦から一夜明け、前田は「今回はやり切ったという気持ちがある」と穏やかな口調で振り返った。「積み上げてきたものをしっかり出せた部分もあるし、まだまだという部分も突きつけられた。あとはやるしかないという前向きな気持ちです」。敗戦の悔しさはもちろんある。それでも、PK戦で涙したカタール大会とは違い、本気のブラジルと最後まで渡り合ったことで、自分たちの現在地を受け止められる充実感があった。

 今大会でも最大の武器だったのは、だれにも真似できない「鬼プレス」だ。ブラジル戦でも世界最高峰のGKアリソンやDF陣に襲いかかり、インターセプトからカウンターを発動する場面もつくった。しかし、前田が手応えとして感じていたのは自分自身のことだけではない。

「他の選手も無意識にできるようになっている。そういう選手が増えたからこそ、強いチームになった。僕ももっと磨いていきたい」。自らの武器を極め続けながら、日本全体の守備基準も引き上げてきた。そして、その歩みを支え続けたのが森保一監督だった。

 4強入りした東京五輪では3試合の途中出場にとどまり、第1次森保ジャパンでもW杯アジア最終予選では思うように出場機会を得られなかった。それでもカタールW杯本大会ではメンバーに抜擢され、3試合に先発出場。グループリーグではドイツ、スペイン撃破の立役者となり、決勝トーナメント1回戦のクロアチア戦ではゴールも決めた。

「なんで試合に出ていない自分を選んでくれるんだろう」と感じたこともあった。それでも指揮官は前田を信頼し続けた。「ワールドカップ予選では出番が少なかったですけど、森保さんは『こういう大舞台では絶対に大事な存在になる』とずっと言ってくれていた。僕はそれを信じて、森保さんのためにという思いでやってきた」。

 結果が出ない時期も見放されなかった。その積み重ねが今大会での活躍につながった。「これまで積み上げてきたものは無駄じゃない。それは僕の財産です」と感謝した。

 2度目のW杯が終わったばかりの今、4年後をまっすぐに見据えることはまだできない。「まずは今いる場所で結果を残す」。今夏の移籍も視野に入れる28歳は、プレミアリーグ挑戦への思いも隠さないが、「どこへ行っても自分は自分」と言い切る。

 森保監督の信頼に応え続けた4年間に積み重ねてきた経験を武器に、まずは自身の成長を止めずに突き進むつもりだ。

(取材・文 矢内由美子)