北中米W杯で日本代表は悲願の決勝トーナメント1回戦突破まであと一歩届かなかった。ブラジル戦から一夜明け、DF渡辺剛(フェイエノールト)が口にしたのは、チームの成長への手応えと、自身が抱えた悔しさだった。

「ボールを持つことに関しては間違いなくレベルアップしているし、後ろからの組み立ても昔よりできるようになっている」とチームの進化を実感。その一方で、「本当に対等に戦うなら、後ろからつなぐだけでなく、前から奪いに行くことや、背後と足元を使い分けることも必要になってくる」と、世界の頂点を目指す上での課題も明確に見据えた。

  グループリーグでは初戦のオランダ戦に先発し、第3戦のスウェーデン戦に途中出場したが、ブラジル戦では出場機会がなかった。その現実は、渡辺の胸に重く残っている。

「(24年1月の)アジアカップでも最後(準々決勝)のイラン戦に出られなかった悔しさがあったし、今回も自分が出ていたとしたら守れたのかなと思った。森保監督が僕を使う選択肢にならなかったのは、自分の実力がまだ足りなかったということ」。悔しさを他人のせいにはせず、自らの成長につなげようとする姿勢が印象的だ。

 一方で、所属チームでともに戦うFW上田綺世の奮闘には心からの敬意を示した。「フェイエノールトで成長している姿をずっと見てきたし、代表の1トップは本当に簡単じゃない。結果を出さなければいけないプレッシャーもあったと思う」。

  チュニジア戦で上田がゴールを決めたときは自分のことのように喜び、ブラジル戦も「素晴らしいパフォーマンスだった」と称えた。「点を取るのがFWと言われればそれまでですが、チームへの貢献度を考えたら、(上田)綺世がいなかった代表は考えられない。やれることはやったと思うので、『お疲れさま』と伝えた」と、ブラジル戦後のピッチで涙に暮れた盟友をねぎらった。

  自身初のW杯ではチームの躍動をベンチから見守る複雑な思いも経験した。だからこそ、代表への思いは揺るがない。世界との差を埋めるために必要なもの、自分に足りないものを冷静に見つめ、さらに成長して帰ってくる。その強い決意こそが、渡辺にとって今大会最大の収穫なのかもしれない。

(取材・文 矢内由美子)