[6.29 W杯決勝T1回戦 日本 1-2 ブラジル ヒューストン]

 日本代表は29日、北中米ワールドカップの決勝トーナメント初戦(ラウンド32)でブラジル代表と対戦し、1-2で敗れた。前半29分にMF佐野海舟が先制ゴールを決めるが、後半11分に同点に追いつかれ、後半アディショナルタイム5分に逆転を許した。

以下、試合後の森保一監督会見要旨

●森保一監督

―ブラジルとの差はどう感じたか。両ウイングバックを交代した狙いは。

「ブラジルとの力関係だが、間違いなく縮めてこれていると思う。それはブラジルがどうこうでなく、世界のトップ基準に日本も間違いなく近づいてきているという感覚でいる。ただ、結果として押し切られる部分があるところは差があることも事実なので、そこを積み上げていかないといけない。カタールW杯と北中米W杯で、グループリーグを戦って決勝トーナメントの1回戦ということで今回も同じ敗戦となったが、感覚としては日本がコントロールできる時間も長くなり、かついっぱいっぱいの守備だったところが、しっかりと受けられるようになったという部分では上がっているかなと思う。ただし、勝っていくためには、攻撃も守備も力を付けないといけないのが今日の結果に出たかなと思う。

 交代の意図としては、ブラジルはシンプルにサイドからファーサイドへクロスということで戦術的にもより明確なことをしてきていた。実際、1失点目はクロスからだった。そういう部分も含めて、ブラジルがやろうとする意図を止めて、かつ自分たちの流れに持っていくということで交代のカードを切った」

―特にレベルアップしないといけないところは。

「守備から攻撃に移る最初の相手のプレスを回避する、そこのパスのクオリティーだったり、パスを通すためにどのように動くか。トランジションをもっと早くして相手のプレスをかいくぐっていけるようにしないといけない。いったんプレス回避できれば、選手たちの技術が生きて、プレーモデルとしてやっている組織的に崩すこともできれば、選手のアイデアで崩すこともできる。ボールを保持したときには相手もなかなか奪いに来れない時間帯はあった。そういう状態に持っていけるように、守備から攻撃というところの最初のパスの1本、2本をどうやってプレス回避していくかというところは上げていかないといけない。世界の強豪と戦うときにはこれまでも課題だったし、これからも我々がより世界トップレベルのチームと対等に戦うときには上げないといけない。ただ、カタールW杯からの課題で、チームとして取り組んできて、間違いなくレベルは上がってきていると思う。グループリーグや今日の試合でも、外せる回数は増やせていると思うが、もっと確率高く守備から攻撃という形をスムーズにしないといけない」

―攻撃陣では南野、三笘がケガで招集できず、大会に入ってから久保もケガをした。

「そこに関して言えば、選手たちが想定外のことやアクシデントが起こったときに冷静に対処してくれて、すべてのことを乗り越えて、よく頑張ってきてくれたと思っている。もちろん、今言われたような選手たちがいなくなったことは、チームの戦いとしては影響されたところはあるかなと思う。そこは事実かなと思うが、決してネガティブに考えることなく、ケガやアクシデントは起こりえることだということで、だれが替わったということではなく、そこでチームに選ばれた選手たちがしっかりと機能するところ、新たに入ってきた選手がその選手の良さを生かしてチーム力を維持してくれる、上げてくれることができるのが日本の良さかなと思っている。今回もアクシデントがある中、チームとして戦うというところでは間違いなくチームコンセプトをより多くの選手たちがプレーで示してくれて、組織で戦う日本の良さを出せたと思う。選手たちが個性を発揮しながら、チームの戦い方を表現しようということで頑張ってくれて、日本の良さは出ていたかなと思う。いろんな選手が(W杯を)経験するということは、今の日本のフェースでは非常にいいことかなと思う。ケガ人が出るのはいいことではないが、より多くの経験を幅広く多くの選手たちがすることによって、日本サッカー全体のレベルアップにつながっていくかなと思っている」

―ブラジルは優勝できると思うか。

「できると思います。なぜならチームにいい選手がたくさんいますし、監督の力が非常に大きいかなと。チームに自信をもたらしてくれる監督かなと思う」

―来年1月にはアジア杯があるが、そこで優勝することが大事になるか。

「日本代表として、日本サッカーとして次の大きな大会はアジア杯だと思っているし、そこで優勝できるようにフォーカスしていくかなと思う。今回のW杯での敗戦の痛みは、たとえアジア杯で優勝したとしても癒えることはないと思う。アジアで頂点に立つことも大切だが、今回のW杯でもアジア勢が苦しい結果に終わっている中、さらに上を目指して戦うという部分では、常に高い目標を持ってアジア杯にも挑まなければいけないと思う。アジアのチームとの戦いを通して、アジアで一番という誇りはもちろんだが、その先を目指していく雰囲気の中でアジア杯を戦えたらと思います」

―1点リードで折り返したハーフタイムの指示は。

「ある程度、相手にボールを持たれる、押し込まれるのは試合全体の予想として、あり得るかなと思っていた。それは前半にも起こっていたと思うし、試合全体でも起こっていたと思う。その中で守るところは粘り強く守りながら、我々も攻撃のチャンスは作れるので、チームのコンセプトでもある、いい守備からいい攻撃ということで選手たちは割り切って戦ってくれていたと思う。前半にいい形でカウンターで点を奪うことができて、そこで選手たちに言ったことは、もう一回0-0の状態の気持ちで戦うということと、1点リードしている状況で守りだけの守りにならないように、守りが攻撃につながっていくんだということを忘れないようにと話した。実際に失点の部分は、押し込まれた状態でクロスから失点したが、ボールを奪いに行くことを忘れずに、ボール保持者へのプレッシャーは押し込まれながらもしっかりやろうと話していた。後半ブラジルがギアを上げてくる、あるいは戦術的に変更してくることも予想して、集中していこうと話した」

―失点後のプランは。

「試合の終盤の考え方としては、延長を見据えて交代カードを1枚残しながら、延長に入ったら交代枠のプラス1もうまく使いながら戦っていくことは準備していた。しかしながら終盤で失点してしまった。そこも自分たちが1点を取りに行く交代で最後の交代を使うのか、もし失点した場合にどういうカードを切るのかというのは準備していたうえで、延長のほうが濃厚かなと思って試合は見ていた」

―アジア杯の話が出たが、今後の去就についてはどう考えているか。試合後の円陣ではどういう声をかけたか。

「個人的には何もまだ決まってない。先ほどの答えの中でも『代表チームとして』ということを言ったが、これは自然なことかなと思う。だれが監督になるかは分からないにしても、大きな大会はアジア杯なので、そこでアジアの頂点を目指して戦うというところは自然な言葉かなと思って、話をさせていただいた。私の去就に関してはまだ何も決まっていない。

 最後、円陣で話したのは、みんな悔しい思いをまたこの場でしたと思うけど、この悔しさを胸に刻んで次の成長につなげていこうということを話した。この大会で終わるという選手はほとんどいないし、スタッフも含めて、成功体験が一番いいが、こういう悔しさや、うまくいかなかったことを生かして次の成長につなげてほしい、成長して日本のために戦ってほしいということを話した。今回、最高の景色を見ようということでいろんなイベントだったりをしていたたいだが、この大会の中で優勝するという我々の夢や目標として最高の景色を見ることはできなかったが、監督としてみんなのことを導いてあげられなくて申し訳ないという思いを伝えた。でも、違った意味での最高の景色はチームの選手、スタッフに見させてもらっているので監督としてはありがたいと思っているということを言った。何かというと、毎回の活動で選手もスタッフもいい準備をしてくれて、一回一回の練習、試合に全力を尽くしてくれるのは、毎回の活動、日々の活動の中で充実した時間を過ごさせてもらって、監督としての最高の景色はみんなに見させてもらったのでありがとうございましたということを話した」

―優勝を目指して32強という結果については。

「優勝ということは叶わず、そこに関しては監督として申し訳ない思いでいる。素晴らしい選手がいて、チーム一丸となって、タフに粘り強く最後まで戦い抜くことをやってくれている中で、今日も勝つチャンスがあると思って戦って、実際チャンスがあって、それをつかめなかったので、監督の力が一番足りなかったのかなと思う。世界一という目標を立てて、この3年半、選手やスタッフがやってくれたこと、代表チームのレベルアップのために選手たちが日々、所属チームでレベルアップするためのチャレンジをしてくれて、間違いなく代表チームの力が上がったと思うとチームには伝えた。親善試合とはいえ、これまで勝ったことのない相手に勝ってきたり、試合の中でも自分たちがより意図していることを実践できるようになってきたり、間違いなく選手の頑張りが代表チームのレベルアップにつながり、日本代表の世界におけるフェーズが変わったというのは選手たちに伝えた。

 世界一という目標はこれまでも話してきたが、本命で世界一かというとそうではない。今はダークホースで世界一になるチャンスがあると。今日ももし勝っていればという試合はできたと思う。サッカーを取り巻く環境、サッカーファミリー、サッカーを知らないような、あまり認知、認識してくださっていない方々も含めて、日本が世界一を目指して戦っている、チャレンジしているんだということをいろんな人に公言して、チームがチャレンジしたことで、世界一になるために何をしないといけないかをより考えてくれたと思う。今回は叶わなかったが、世界一を目指して我々日本代表チームに共感、共鳴、共闘していただいて、世界一を目指していこうというところは、サッカーファミリーだけでなく、日本のライト層の方々も含めて、その輪は大きくなったのかなと思う。今回は叶わなかったが、最短では次。目標を立ててしっかり積み上げていけるのが日本人だと。それを我々がしっかりやっていこうと選手たちには話した」

―スタートからシャドーもウイングバックも攻撃的な選手を起用したが、切り札として使う手もあったのでは。

「右は堂安、左は中村敬斗と攻撃的な選手を使ってスタートしたが、攻撃だけとは思っていなくて、いい守備からいい攻撃、ハードに守備もできるということで彼らを起用した。前半に関しては間違いなく両サイドから何かやられたことはなかったと思う。守備もできる攻撃的な選手を使うという考え方としては、守備で粘り強く頑張ったあとに攻撃に移らないといけない。そこで起点となったり、攻撃のアイデアを生かしてカウンターを仕掛ける、ボールを保持するところがなければ、試合は押し込まれたままでより難しくなるということで、今日もこれまでも起用している。守備だけの守備にならないように。最後抑えるだけなら守備的な選手でいいかもしれないが、試合全体を考えたときに守備だけの選手であれば、世界の強豪と戦うとき、攻撃がなければより難しい状況になると考えている。おっしゃるとおり、もちろんやってみないと分からないが、逆の考え方で使うということも選択肢としてはあるかなと思う」

―これまでプロセスが大事だと話していたが、プロセスの中でこうしておけばよかったということや、今後もっとこうできるぞというアイデアはあるか。

「プロセスでいうと、自分のアイデアがどれだけのものか分からないが、何か足りないというということはなかったかなと思いたい。皆さんが外から見て、日本代表の活動や戦いを通して足りないと思うことがあれば教えていただきたい。前回のカタールW杯を踏まえて、チームでどういう積み上げをしていくかを常に考えているし、自分の中では確実に積み上げてこれたかなと思っている。未来で言えば、もっとハイプレッシャーをかけていけるようにしていくとか、攻撃の部分ではもっとボールの保持率を上げて、ポゼッションからチャンスをうかがうということもやっていけるようにならないといけないと思う。カタールW杯でドイツやスペインに勝ったが、保持率は80%対20%だった。それを5%でも10%でも上げていこうということでやってきた。そういった意味では、まだデータはすべて見ていないが、これまでのデータで言うと、確実に上げてきていると思う。一気に何かを変えたいというところはあるが、歴史はそう簡単に動いてくれない。地道に積み上げていけば、今日うまく乗り切ったらひょっとしたら歴史が大きく動いていたと思うので、過去を見つめて成果と課題を抽出しながら力をつけていって、どこかで歴史の扉が開くことを夢見て、目標としてやっていかないといけない。一気にこれまでできなかったところに届くこともあると思うが、現場にいる人間としては地道にやっていくことが必要かなと思う。日本の組織力は間違いなく世界に誇れるもので、組織力プラス、やはり個の力が上がったからこそ、組織力が生きて、戦い方のフェーズが変わってきたと思うので、個の力をもっともっと上げていくことはしていかないといけないと思っている」

―ロシアW杯のベルギー戦も後半アディショナルタイムの失点で敗れた。

「チームとして疲弊して、ずっと押し込まれ続けて、最後押し切られたという形ではなかったかなと思う。押し込まれる展開ではあったが、それも含めて選手たちは耐え切れるところはあったと思う。最後の時間帯で失点してしまったところは悔しいが、守備から攻撃という部分のクオリティーを上げて、押し込まれた中で最後自分たちが攻撃に移って、いい流れにするという部分のクオリティーを上げていかないと、今日のような失点は起こってしまうのかなと思う。パスの成功率においても、プレッシャーがかかったときにもっとうまく攻撃のチャンスにつなげられるパスのクオリティーを上げていかないといけない」

―選手としてドーハの悲劇を経験してアメリカにたどり着けなかったが、監督としてアメリカで4試合戦ったが。

「皆さんいろんな想像をされていて、アメリカW杯ということでドーハ世代の選手たちにとって特別な思いがある地だということを考えておられると思う。現地にラモスさんが来て、応援イベントをしてくださったり、私もドーハ世代の仲間と連絡は取り合っているので、我々がW杯を戦えなかった地で、今の日本代表の選手たちが今日は負けてしまったが、世界で戦えるんだというところを示してくれて、日本人の誇りを持って戦っている選手たちを見て、日本人の誇りを感じてほしいとは思っていたし、やり取りはしていた。ただ、私自身は自分の現役時代のことが頭の中に出てくることはなくて、今は監督として現日本代表の最大限の力をどうやって引き出すことができるか、1勝2分け1敗となったが、一戦一戦勝利を目指して戦うことを考えている中で、あまり自分のことを考える余裕はなかったかなと思っている」

(取材・文 西山紘平)