ただ値段が高いだけのニセモノが蔓延中…現役農家が教える「自称オーガニック野菜」を一発で見抜く方法

■オーガニックには偽物がある
年々、オーガニック(有機)野菜の人気は高まっていて、スーパーに有機コーナーが設けられたり、オンラインショップで直販されたり、給食に取り入れる自治体が増えたりしています。
そんな中、じつは有機やオーガニックではない野菜まで、そうした宣伝文句で販売されていることがあるのをご存じでしょうか。
じつは、日本において農産物をはじめとした食品に「オーガニック」や「有機栽培」と表記できるのは「有機JASマーク」を取得したものだけです。このマークを取得するには、有機JAS法に基づいて、①化学的に合成された肥料及び農薬を使用しない、②遺伝子組換え技術を利用しない、③農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減する、などの生産方法を遵守する必要があります。
そのうえで、有機JASの認証登録をしている専門機関に申請し、厳しい審査をパスしてマークを取得しなくてはいけません。

■「無農薬」野菜は存在しない
ですから、有機JASマークを取得していないのに「無農薬栽培」「減農薬栽培」「有機的栽培」だからと、勝手にオーガニックや有機を標榜すると法律違反になります。
そもそも、「有機栽培」と「無農薬栽培」が混同されているケースも多いのですが、有機栽培では天然由来の農薬の使用が可能です。また、「無農薬」「減農薬」という表記は、農水省の「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」によって原則的に使用が禁止されています。なぜなら種子や苗の段階で農薬が使われていたり、微量の農薬が残留・飛散することがあるにもかかわらず、消費者に「残留する農薬成分が一切ない」という誤解を与える恐れがあるためです。
ところが、こうした事実はあまり知られておらず、有機やオーガニックといった言葉は不適切な使われ方をしていることが多々あります。例えば、新聞で有機農家と紹介されていたり、会社(農園)名やSNSのアカウント名などに「有機」「ゆうき」などと入っていても、実際は有機JASマークを取得していないというケースは少なくありません。
■農産物表示のグレーゾーン
しかも有機JAS法には、じつはグレーゾーンがあります。有機JASマークを取得していない農産物、畜産物および加工食品に対して「有機」「オーガニック」などの文言をつけるのが禁止されているのは前述の通り。しかし、厳密に言うと禁止されている範囲は「名称の表示」にとどまります。
つまり、有機JASマークを取得していないほうれん草を「有機ほうれん草」「オーガニックほうれん草」といった表記名にした場合には明らかに違法です。ところが、商品説明文などに「有機」「オーガニック」などと書かれている場合は、有機JAS法の運用上ではグレーゾーンだといえます。
とはいえ、消費者に誤解を与えかねない「優良誤認(景品表示法)」に該当する可能性が高いので、本来は消費者庁が不当表示として対応すべき案件です。しかし、対応が追いついておらず、特にオンラインショップを見ると、JASマークの表示なく「有機」「オーガニック」といった文言を使用する不適切な事例がたくさん確認できる状況です。
有機農産物は、いまだにスーパーや青果店などでの取り扱いがあまり多くありません。オンラインショップで購入することが多いでしょうから、注意が必要です。
■見た目や味で見分けられるのか
さて、ときどき「有機栽培の野菜は、慣行栽培の野菜よりも見た目や食味に優れている」という話を耳にします。それは本当でしょうか。
まず、見た目ですが、基本的にオーガニックかどうかを判断することは不可能です。パッと見でわかれば、詐欺的な商品があふれることにもならなかったはず。農産物の外見は、農法だけで決まるものではなく、その年の天候や地質など、さまざまな影響を受けるものですから、生産者であっても判別は不可能でしょう。

そうして、食味(味・香り・食感)の違いもハッキリしません。味見をするときに目隠しをして公正に比べる「盲検試験」を行っても、有機野菜と慣行野菜のどちらがおいしいかについて、一貫した結果が出ていないのです。
例えば、2007年の研究によると、その野菜を食べて、全体としてどれくらい好きかという「官能評価」や「風味の強さ」や「苦味」などでほとんど差がありませんでした(※1)。トマトだけ慣行栽培のほうが「甘い」「味が強い」といわれたこともありますが、それは熟れ具合の違いが原因で、農業の方法そのものの差ではありません。2020年代の研究でも、同様に、味などにはほとんど差はありませんでした(※2、3)。一部の作物で、有機栽培のほうが糖分や酸味、香り成分が少し高い傾向がありますが、品種や収穫のタイミング、保存方法のほうが大きく影響します。
消費者アンケートでは「味がいいから有機を選ぶ」と答える人が多いですが、これは有機栽培の健康や環境への良いイメージが味の感じ方を変えている部分が大きいといえるでしょう。
※1 Consumer sensory analysis of organically and conventionally grown vegetables - PubMed
※2 When organic products are tasty: Taste inferences from an Organic = Healthy Association - ScienceDirect
※3 You taste what you see: Do organic labels bias taste perceptions? - ScienceDirect
■本物の有機農産物を見つける方法
以上のように有機栽培の農作物には見た目や食味に明確な特徴がないので、それらで区別するのは困難です。そのため、イタリア、アメリカ、中国、トルコ、フランス、オーストラリアなどで、通常の農産物に有機の認証シールを貼って高値で売る「オーガニックラベル詐欺」が問題となっているほど。
では、消費者が「本物の有機農産物」を手に入れるにはどうしたらいいでしょうか。やはり、まずはJASの認証マークを目印に買い求めるのが一番でしょう。認証マークがないのにもかかわらず、以下のような文言を使うことは法律で禁止されています。
ラベルが詐欺ではないかと心配な場合は、商品に記載されている事業者や認証番号、または有機JASの認証機関名を調べることで本物かどうかの有力な判断材料になります。農水省のサイトを確認しましょう(※4)。
※4 有機JAS認証事業者一覧詳細(公表に同意された事業者)(令和8年4月1日現在):農林水産省
■必ずしも有機が安全とは限らない
ただ、そもそも農作物を選ぶときに、有機栽培を選択肢したほうがいいのでしょうか。栄養価と安全の両方から考えてみましょう。
慣行農業と有機農業の安全性において、現在もっとも大きな違いとして確認されているのは「農薬の残留量」です。実際、EUの大規模調査や複数の研究レビューでは、有機農産物のほうが残留農薬が少ない傾向が一貫して確認されています。
ただし、ここで誤解してはいけないのは、「慣行農産物=危険」という意味ではないことです。現在、日本やEUでは残留農薬に厳しい基準値が設けられており、市場に流通している食品の大半はその基準値を大きく下回っています。つまり、通常の食生活で健康被害が起きることはないでしょう。
一方、有機農業だから完全に安全というわけでもありません。有機栽培でも天然由来の農薬は使用されますし、細菌やカビなどの微生物リスクがあります。そのため、現在の科学的な評価としては、「有機農業は農薬曝露を減らすという点では有利だが、食品全体の安全性が絶対的に高いとまではいえない」というのが定説です。要するに、有機栽培の最大のメリットは、可能な限り環境に配慮した栽培法を用いて土壌環境や生物多様性などの農業生態系を守ることにつながるとされる点です。
■農法で野菜を選ぶよりも大切なこと
栄養価(ビタミン・ミネラル・抗酸化物質など)も、有機野菜のほうが絶対に優れているとはいえません。
2024年に出た最新のシステマティックレビュー(複数の論文をまとめたもの)では、調べた栄養成分の約42%で差がなく、29%で差があり、29%で研究によって結果がバラバラでした(※5)。例えばビタミンCは有機のほうが高い傾向の作物が多いですが、逆にリコピンやβ-カロテンは慣行農業のほうが高い傾向があります。ポリフェノール類は有機のほうが20~69%高いという古い研究もありますが、最近のレビューでは統計的に差が出ても、体に効くほどの差ではないと指摘されています。
大事なのは、栄養成分は「農業のやり方」よりも、品種、土の質、気候、収穫時期の影響がずっと大きいということです。健康にいいかどうかも、どの野菜を選ぶかよりも、野菜をたくさん食べることのほうが影響が大きいといえます。
農法で選ぶよりも、できるだけ新鮮な多種類の野菜を毎日たくさん食べましょう。
※5 Are organics more nutritious than conventional foods? A comprehensive systematic review - PubMed
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SITO.(シト)
農家、農業ライター
1993年、愛知県生まれ。キャベツとタマネギを栽培する露地野菜農家で、農業ライター。就農前から日本農業の諸課題に関心を持ち、生産現場の知見と幅広い農業情報を融合しながら「農業とそれに携わる人たちの持続可能な社会」を模索し続けている。また、農業分野にまつわる誤情報やデマと戦う姿勢を貫き、学術的な知見と実践的な経験の両面から、正確な情報発信に努めている。
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(農家、農業ライター SITO.)
