「パクリっぽいラーメン」で閉店ラッシュ…天下一品の“愛弟子”が仕掛けたチェーン「伍福軒」がたった1年で消滅してしまったワケ
誰もが知るラーメンチェーン店「天下一品」が一斉に閉店。跡地があっという間に早変わり、新しい看板と新メニューを掲げて10軒いっせいにオープン――昨年7月にこうして華々しくデビューしたチェーン「伍福軒」が、1年と持たずに全店消滅するとは、誰も想像しなかっただろう。現在、残された店舗は大宮店のみ。こちらはもとも6月15日に閉店を予定していたが、それが未定となるなど、混迷を極めている。
【写真】「パクリっぽい」? まさかの一斉閉店となった伍福軒のラーメンや京都発祥の各チェーンの商品などをたっぷり見る

伍福軒 新宿西口店。2026年5月28日をもって閉店(筆者撮影)
ちなみに天下一品と伍福軒はそれぞれまったく無関係ではない。伍福軒の運営元「エムピーキッチン(以下、MPキッチン)」は、直前まで同じ物件で「天下一品」のフランチャイズ店を運営していた張本人であり、いわば「天下一品の愛弟子」。にもかかわらず天下一品の看板を降ろし、そのままの体制で自社ブランド(伍福軒)の店に改装したことは大きな話題を呼んだ。
それにしても伍福軒もオープン当初はそれなりに賑わっていたはず。さらに10店とも新宿西口・渋谷・池袋など、文句なしの好立地だったにもかかわらず、なぜ短期間で閉店に追い込まれるような事態に陥ったのか。
要因は味なのか、サービスなのか、立地なのか? 伍福軒ご自慢の「東京背脂黒醤油ラーメン」を啜りながら、問題を探ってみよう。
一斉閉店について「不振が原因ではない」というが……
伍福軒が全店閉店する直接のきっかけとなったのは「経営体制の変更」だ。MPキッチンは、伍福軒の創業からちょうど半年後の2026年1月に「京都北白川ラ−メン魁力屋」を運営する魁力屋の買収を受け、子会社となった。
魁力屋によると、伍福軒の一斉閉店は「不振が原因ではない」「お客様に更なる美味しさと体験価値を提供するためにグループシナジーを活かして業態変換を図っていく」という。閉店はあくまで子会社化後に決定したとも。ただ、伍福軒は昨年末ごろから、各店ともあまり客入りが良くなく、経営不振ではないかという心配の声が聞かれるようになっていた。
実際問題、近年MPキッチンの経営状況が思わしくなかったのは確かだ。1月の子会社化に際して公表された株式会社エムピーキッチンの経営状況は、以下のように推移している。
2022年度 売上 38億円 利益 マイナス9.2億円
2023年度 売上 48億円 利益 マイナス4.8億円
2024年度 売上 57億円 利益 マイナス4.4億円
2023年・2024年は三田製麺所の出店効果もあって売上は伸びたが、赤字解消にはほど遠い。さらに、この期間の純資産は5.2億円から9900万円に激減しているのも気がかりだ。魁力屋による買収額も「50億円」と相場よりかなり抑えられており、傍目から見ると、不振のMPキッチンを救済合併したようにも見える。
こういった経営状況では、立ち上げたばかりの伍福軒の存続もおぼつかない。やはり一斉閉店の真因は「不振・伸び悩み」と推察される。
有名店の「パクり疑惑」も
伍福軒の不振をひもとくと「オリジナリティのなさ」も挙げられる。
定番メニューであった「黒ヤキメシ定食」(ラーメン+黒ヤキメシで税込1050円)を見ても分かるように、兵庫県・龍野の黒醤油を使った伍福軒のメニューは、とにかく黒くてガツンとしょっぱい。それが魅力ではあるのだが、そのビジュアルから、京都の名店・新福菜館の定番である「ラーメン+ヤキメシセット」(Aセット)がちらつく。実際、ネットでは「ジェネリック新福菜館」「パクりでは」という声もあがっていたほどだ。
さらに差別化のためか背脂をラーメンに散らしているが、カウンターに置いてある角切りたくあんも含めて、こちらはおなじ京都の「第一旭」や「魁力屋」を思い起こさせてしまう。
まとめると伍福軒のラーメンは「新福菜館の醤油スープに、第一旭・魁力屋のような背脂をトッピングした」ようなものだった。にもかかわらず京都と名乗らず「東京背脂黒醤油ラーメン」と銘打っている。
最初から「京都系の複数の醤油ラーメンにインスパイアを受けて、東京で開発したので東京背脂黒醤油と名乗りました」などの発信があれば、まだ納得感があっただろう。しかし、ラーメン好きからするとこうした“元ネタ”が分かりやすかったがゆえに、厳しい見方をされた感は否めない。
目と鼻の先に天下一品が出店、火花を散らした結果「完全敗北」
最後にして最大の要因は、単刀直入に「天下一品を超えられなかった」ことだろう。
事実が残酷なまでに可視化されたのは、昨年10月27日。かつて天下一品新宿西口店だった「伍福軒・新宿西口店」の目と鼻の先に、あらたに「天下一品新宿西口店」がオープンしたのだ。
至近距離で天下一品と伍福軒が相まみえた結果、どうなったのか。
新しい天下一品は何日たっても客足が途切れなかったのに対して、伍福軒はほとんどの時間帯で数人しか客がいない状態が続いた。天下一品は割引セールなどがまったくない通常営業で、伍福軒が餃子半額セールを実施していたにもかかわらず、だ。
初日から行列に並ぶような方々は天下一品の“強火ファン”も多く、現地で並んでいる人々の間では、伍福軒のネガティブな感想も目立っていた。こういった人々は伍福軒にことさら厳しい評価を下し、GoogleMap・食べログやネットでの口コミに低評価をつけがちなのも伍福軒にとっては痛手だったろう。
なお、MPキッチンは2024年にも天下一品の6店舗(歌舞伎町店・池袋東口店・恵比寿店・五反田店・八幡山店・多摩ニュータウン店)を閉店させ、自身が展開するブランド三田製麺所・八宝亭に転換している。これらの結果、合計16店舗あったMPキッチンの旧天下一品店舗に対し、新たな天下一品が直接対決を仕掛けたケースが、新宿西口・川崎・五反田の3か所で生じた。それがトリガーとなったのかはともかく、伍福軒は全店閉店することになったわけで、天下一品が完全勝利したことになる。
なお新・天下一品はいずれもフランチャイズ運営で、天下一品では「上野アメ横店」「東川口店」、そのほか「エニタイムフィットネス」などを手がけるディックス・エイチシーズが出店した。本部の直営店舗が恩讐の相手に手を下す前に、新たな愛弟子があっさり伍福軒を撃破してしまったような状況と言えるだろう。
伍福軒→魁力屋の転換は、果たしてうまくいくのか?
伸びない客足、オリジナリティのない味、ライバルとの競争の敗北――一挙に10店オープンという華々しいデビューを飾ったはずの伍福軒は、1年も持たないままに間もなく消えゆく。身内である三田製麺所とバッティングしないように新ブランドを立ち上げたという事情があったとはいえ、ここまで触れた内容をまとめると「力量不足」に尽きる。
さて、伍福軒撤退後の物件は、今後どうなるのだろうか? 魁力屋に問い合わせたところ「魁力屋に変わる店舗もあれば、三田製麺所に変わる店舗もある」という。実際、先駆けて3月に閉店した伍福軒の川崎店は魁力屋に転換しており、かなりの店舗が魁力屋に転換すると見た方が良いだろう。が、伍福軒をそのまま魁力屋に転換するには、相当な課題がありそうだ。
魁力屋は2025年12月末時点で175店舗を出店しており、目標は「国内300店」。伍福軒からの転換によって、1割近く店舗数が増加することになるものの、この先三田製麺所・伍福軒の元・MPキッチン組を、どう成長戦略に取り込んでいくのだろうか。
続く記事では、魁力屋による買収の狙いや、郊外でしのぎを削る京都発祥のラーメン店たちの勢力図への影響などを見ていく。
〈なぜ「魁力屋」は、天下一品の“子分”を買収したのか…激化する「京都ラーメン戦争」のゆくえ〉へ続く
(宮武 和多哉)
