取り調べの録音、録画の義務化から7年が経った。そんな中、暴言や机を叩くなどの問題が未だ報じられているが、この現状をどう受け止めるべきか。なぜこのようなことが起こしてしまうのか。『ABEMA Prime』では、取り調べのあり方について考えた。

【映像】2025年に起きた警察の“不適切な取り調べ”(10秒でわかる詳細)

■基準が厳しくなる取り調べ現場のリアル

 警察庁によると、不適切な取り調べは去年だけで19件あったが、元警察官の高野敦氏は、「時が経つにつれて警察の意識は変わってきた。私が捜査をやった頃はまだ大声を出したり机を叩くことも、被疑者がぼけっとしている時はいいだろうという話だったが、今はもうそれもダメだ。大きなあくびをしたりため息をつくこともダメになっており、基準がどんどん厳しくなってきている」。

 さらに、「被害者の無念を晴らすために真実を追求しなければいけないが、冤罪も絶対に起こしてはいけない。間違いがあったら訂正するべきだが、検察がなかなかできないということを聞いて驚いた。警察は間違えて誤認逮捕したら新聞に載ってしまう世界なので、絶対に間違えたくないし、間違いがあったらすぐ幹部が訂正しろということを教育されてきた」と明かした。

■なぜ2回の取り調べが必要なのか? 「人質司法」が抱える課題

 警察が取り調べをした後に検察が再び取り調べを行う理由について、元大阪地検検事、弁護士の亀井正貴氏は、「警察の調書と検察の調書では意味合いが違う。警察の調書は2号書面と言って、かなり証拠の価値が高い。検事としてもやはり心証を取る必要がある。警察が第一次的に調べた後は、違う観点で主観的な事情を引き出してくるといったことも必要だから、当然取り調べが必要になる」と解説した。

 元裁判官、弁護士の村山浩昭氏も「法律上作成された調書の証拠能力が違うため、検察官が取り調べをしたいという気持ちはよくわかる」と同意する。その一方で、「特捜部の事件のように、供述で事件を作っていくような事件は非常に長時間の取り調べを行う。その中でいろんな方法で自白を引き出すということが試みられており、そこが不適切な行為の大きな原因、問題だと思っている」と懸念を示した。

 また、全体像として「人質司法」の問題を指摘する。「結局、身柄を拘束すること自体が被疑者、被告人に対する異常な圧迫になっている。最初の勾留期間である23日間に耐えられないということで、不本意ながら認めてしまう人もいる。そこで頑張った人ほど身柄拘束されて保釈に出られないという状況もあり、体質的な問題として変えていかなければ、取り調べの方法だけの問題にとどまらない」と語った。

■科学的知識の欠如と日本の「精密司法」

 弁護士の高橋正人氏は「そもそも供述に頼る裁判自体が間違っていると思っている。問題は、見抜けない裁判官に一番大きな責任があるはずだ。裁判官は絶対的な権力を持っている判断権者だが、彼らには科学的な知識がない。ないから供述に頼る。そこに一番の根本の原因がある」と強く主張した。

 その解決策として、「司法試験の合格者のうち3分の1を理系から取りなさいということだ。そういう人たちに、科学的な問題になった時に専門的にやらせることが、冤罪を防ぐ一つの近道ではないか」と提案した。

 自民党の井出庸生衆院議員は「客観的な証拠、物証によって昔の取り調べは変わってきているというのは、政策議論をしている時にも聞いている。裁判官にももっと知識が必要だし、それは警察もそうではないか。客観的証拠できちんと捜査していただきたいが、それでも否認していると目の前の不利益が長くなる。一生懸命、拘置所の中で証拠を読んだりして戦いきれる人しか残らない現状はなんとかしたい」と重ねた。

■勾留期間をめぐる議論と諸外国との違い

 高野氏は捜査側の視点として「2日間の中で自供が得られなくて潰れてしまい、ご遺体の場所がわからないなど、闇に葬られている事件もたくさんある。捜査側からすると、これでは短かったのかもしれないと感じることもある。冤罪だった場合と、本当に犯人が逃げようとしている場合の両方の視点から考えないといけない」と語った。

 村山氏は「問題は二つある。供述に頼る捜査、立証自体がやはり問題であるのはその通りで、供述を追いかけすぎるのは問題だ。そのために23日間の勾留が利用されているのも非常に問題であり、先進国の中で日本だけが異常に長い。さらに弁護士の立ち会いも基本的には認められておらず、録音、録画も全部ではない。起訴前の取り調べの状況は、諸外国から見ると相当批判を浴びていることは間違いない」と批判を展開した。

 これに対し、高野氏は「フランスだと予審判事が、半年や1年で裁判官の判断で拘束できる。全然ルールが違うため、諸外国のシステムといいところだけを取ってくるのはフェアではない。全体的なシステムで考えるべきだ」と反論。

 高橋氏は「日本は客観的証拠を取る方法がすごく制限されてしまっている。例えば盗聴することもすごく難しいし、通信や囮捜査も制限されている。次に客観的証拠が出た時に、裁判官は結論だけを見ようとする。DNAでも結論だけを見たのではダメで、どういうプロセスで出てきたのかを見ていないといけないが、その科学的知識がない。だからやはり裁判官に問題があると思っている」と述べた。

(『ABEMA Prime』より)