年収は1000万円弱、地方転勤もあり…「和久田アナ」がNHKを去った裏事情 退職にダンマリだったワケ
退職の事前発表なし
和久田麻由子アナウンサー(37)が3月いっぱいでNHKを退職した。日本テレビでは24年ぶりの新報道番組(土曜午後10時)のMCを務める予定だ。NHKや日テレ系列各局、広告代理店にしてみれば既定路線だが、事前説明や退職発表はなし。どうしてなのか。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】
***
【写真】ヌーディーなドレスを身にまとった和久田アナ 披露宴での“魅惑”姿
和久田アナの退職についてNHKからは事前説明や発表がなかった。その理由は第一に退職は個人情報だから。昨年3月末、「サンデースポーツ」のキャスターなどを務めた中川安奈アナ(32)が辞めたときも事前説明などはなかった。

朝の情報番組「あさイチ」のMCを2018年から21年まで務め、将来のエースアナ候補と呼ばれていた近江友里恵氏(37)が21年3月末で退職した際も事前説明はなし。近江氏は退職直後、三井不動産に総合職で中途入社した。現在は都市開発の仕事に携わっている。
もっとも、和久田アナのケースは中川アナ、近江氏とは異なる面がある。和久田アナの場合、退職後まで辞めることすらはっきりさせなかった。和久田アナがMCとナレーターを担当していた「NHKスペシャル 未解決事件」が放送中だったからにほかならない。
和久田アナ退職の一報は昨年12月だったものの、「未解決事件」の最終回は3月28日。放送が終わる前に「日テレへ行く」とは言えない。
同局と本人が沈黙しているのに日テレが「新報道番組のMCは和久田アナ」と発表するわけにもいかなかった。退職は周知の事実だったが、誰も表立って認めるわけにはいかないという異例の状態が約3か月続いた。
和久田アナの流出は同局にとって大打撃に違いない。和久田アナは東京大学経済学部卒業後の2011年に入局すると、4年後には看板番組の1つである「おはよう日本」(2015〜20年)のMCに起用された。
その後も「NHKニュース7」(2023〜24年)など硬派番組のMCを務める一方、19年の「紅白歌合戦」では総合司会、21年には司会を担当した。硬軟自在な文字通りのエースだった。
それでもNHKは引き留め工作は行わなかったようだ。時代の移り変わりを感じさせる。かつて同局はアナの民放流出を極端なまでに嫌がった。
1997年、「サタデースポーツ」などのMCを務めていた草野満代アナ(59)が局側に退職の意思を伝えると、「認められない」などと強く反発された。草野アナはTBS「news23」のMCに誘われていた。
当時の同局の現場トップだった放送総局長は「引き抜きはルール違反。容認できない」と不快感を隠さなかった。同局のアナは受信料で育成しているのだからと訴えた。
だが、結局はアナ個人の意思を優先せざるを得ないという結論に至る。世間から「アナの『職業選択の自由』はどうなる」との声が上がったことも影響した。草野アナは「news23」のMCになった。以来、同局はアナの相次ぐ流出に耐え忍んでいる。
退職の理由は異動?
和久田アナはなぜ辞めたのだろう。収入が目的ではないのではないか。NHKの資料から推算すると、和久田アナの現在の年収は1000万円弱。上を見たらキリがないが、十分高給だ。
そのうえ2019年に結婚した夫の勤務先は高収入で知られる三菱商事。同社の2025年の平均年収は2033万円である(平均年齢約42歳)。
和久田アナは地方への転勤を避けたかったのだと見る。家族は夫と3歳と1歳になる子供。夫は商社マンだから海外赴任の可能性もある。そのうえ自分も転勤になったら、家族単位での生活が難しくなってしまうと考えたのだろう。
全国組織であるNHKの職員にとって、地方への転勤は宿命。和久田アナは入社時の2011年から13年までは岡山放送局で過ごし、14年からは東京アナウンス室で過ごしてきたが、そろそろ次の異動があっても不思議ではなかった。
「あさイチ」のMC・鈴木奈穂子アナ(44)は2004年に入局し、初任地は香川県の高松放送局。06年に愛媛県の松山放送局に移り、東京・アナウンス室に配属されたのは08年だった。これまでに3地域で勤務した。ちなみに既婚で1児がいる。
「ニュースウオッチ9」のMC・星麻琴アナ(34)は2014年入局で初任地は岡山放送局。17年に札幌放送局に転勤となり、東京は19年から。和久田アナの後輩ながら既に3地域で勤務した。女性アナは定年までに5地域以上で勤務するのが一般的だ。
転勤は女性アナたちにあまり歓迎されていないようだが、これが同局のアナたちに磨きをかけるという見方が強いから皮肉だ。地方局ではローカル番組にほぼ出ずっぱりだから、アナウンス技術などが上達する。リサーチなど本来はディレクターが行う仕事も当たり前のように行うようになる。なにより、地方から国全体を見る目が養われる。
和久田アナが家族を第一に考え、退職するのであるなら、それは珍しいことではない。「プロジェクトX〜挑戦者たち〜」の司会などを務めた1994年入社組の久保純子氏(54)の場合、産休中だった02年に退職した。正規職員よりも勤務時間の短い同局の契約職員になった。仕事と育児を両立させるためだ。
フジ連続退社の謎
久保氏は2004年に同局と契約が終了すると、フリーアナに転身したものの、11年には夫の都合により、家族で渡米。現在はニューヨークに住み、幼稚園の先生などをしている。
一方、和久田アナの日テレの新報道番組でのギャラはいくらぐらいになるのかというと、1本当たり100〜150万円程度というのが現実的だろう。
現在はどの局も制作費が抑制されている。そのうえ報道・情報系の番組はもともと制作費がそう多くはない。新報道番組の1本当たりの制作費は2000万円程度と見込まれるから、和久田アナのギャラも目を剥くような金額にはならない。
和久田アナの年間のギャラは5000万〜7500万円ということになる。キャスター事務所「セント・フォース」に所属するか業務提携を結ぶ見通しなので、そこからマネージメント料を引かれる。マネージメント料の相場はギャラの3割程度だ。
NHKでの収入より高いが、先々の保証はない。民放に声を掛けられて同局を辞めたものの、視聴率が取れず、番組が打ち切りとなり、テレビ界を去った人は一人や二人ではない。
1991年入局組で、18年に退職した有働由美子アナ(57)は一見恵まれている。テレビ朝日に冠ニュース番組「有働Times」(日曜午後8時56分)がある。しかし和久田アナによる新報道番組は有働アナがMCの音楽番組「with MUSIC」が打ち切られることによって始まるのだ。フリーアナの一寸先は闇である。
女性アナの退職と言うと、このところフジテレビで目立つ。2025年3月から現在までに永島優美アナ(34)、椿原慶子アナ(40)、岸本理沙アナ(26)、藤本万梨乃アナ(30)が辞め、小澤陽子アナ(34)と竹内友佳アナ(37)の退職が決まっている。それぞれ事情があったのだろうが、かなり多い。
フジの女性アナの待遇にはいくつか特徴がある。まず異動となる際の行き先の大半が広報局であること。記者会見の司会はうまいだろうが、数千倍の競争率を勝ち抜き、優秀であるはずなのだから、制作部門や報道局などへの異動があってもいいはず。日テレの元アナ・延友陽子氏(51)も今は報道局にいる。フジで広報局に異動になった元女性アナの多くは辞めてしまう。
さらにフジには女性アナ出身の役員がいない。テレ朝には女性アナ出身の役員がいた。「ワイド!スクランブル」の大下容子アナ(55)も役員待遇だ。NHKの元アナ・黒崎めぐみ氏(57)は民間企業の役員に当たる理事を務めている。
日テレの元女性アナ・豊田順子氏(59)は同局の有力子会社である日テレベイツの役員だった。ひょっとしたらフジは女性アナを過小評価し、それが不満を招いているのではないだろうか。
そう思ってしまうのはフジには負の歴史があるから。1975年に入社し、8年間在職した田丸美寿々氏(73)は女性テレビジャーナリストのパイオニアだが、当初は正社員ではなかった。難関を突破しながら、契約社員でリポーターと呼ばれた。当時のフジの女性アナはみんなそう。69年までの入社組は25歳の若さで定年だった。他局と比べ、かなり遅れていた。
企業風土を一新するのは簡単ではない。フジは昨年7月、アナウンス室が関係した人権侵害問題を受け、アナウンス局に格上げしたが、考え方など精神面も変えられているのだろうか。
高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。
デイリー新潮編集部
